たそがれ研修への参加

「セカンドキャリア研修」通称「たそがれ研修」へ参加することとなった。以前から研修内容について先輩方から話を聞いていたが、自らいくつかのプログラムを経験して感じたことは、

・銀行から離れたあとを想像し、いまから準備をしておくこと

・給料が下がっても生活が成り立つような準備をしておくこと

の主に2点であり、銀行から離れたあとの心構えを持つことが主な内容であった。

すでに出向を経て転籍をされた先輩からは、給料は銀行のころの6割~7割と聞くことが多い。うまく就職先を見つけて外部へ移った人で、収入の現状維持ができているという話も聞く。しかし、50代からの慣れない業務で心身ともに過酷な状況にあるとの話も珍しくはない。

小林も自身に当てはめて考えを巡らせてみたが、銀行に転職した若いころとは異なり、明らかに50代に近づき気力や体力も低下してきていることから、慣れない業務や新たに人間関係を築いていくことに対し、大きな不安を感じた。

おそらく、次の人事異動においては出向先について具体的な提示があるだろう。これから子供の大学受験にかかる費用やその後の学費など、本当に払っていけるのであろうかとさらなる不安が押し寄せてきた。

なんとか収入を支える術はないのか…

小林はその後ネットや動画などで副業について調べ始めた。怪しい内容も非常に多かったが、そのなかで「不動産投資」に興味を惹かれた。動画では、

・不動産は24時間365日稼働してくれる

・フルローンで調達できれば元手を少なく賃料と経費(ローン返済も含む)の差額でプラスの収支を得られる

・ローンに付加される団体信用生命保険により、生命保険代わりにもなる

といった内容が述べられていた。もしかしたら、転籍後の収入減少を不動産収入で補えるのではないかと考え、ネットで不動産投資セミナーを行っている会社を調べて休日に参加することにした。

友人や同僚間で不動産投資の話をすることもなかったため、参加にあたって不安はあった。一方で自分はこれまで銀行員として、ローンや不動産について支店の融資課などと話をする機会もあったため、それなりに理解している。……つもりだった。

セミナーへの参加

不安を抱えながらも当日セミナーへ参加した。参加者を見渡すと30代くらいから70代くらいまで幅広い年齢層が参加していた。同年代も参加しており、同じような悩みを抱えているのだろうなと勝手に親近感を覚えた。ひととおり不動産投資におけるメリットやデメリット(空室リスク、災害リスクなど)の説明を受けたあとは、具体的な物件の紹介が始まった。

ワンルームマンションから一棟のアパートなど幅広く提案があったが、小林は最初の投資の検討とのこともあり、まずはワンルームマンションで試してようかなと考えていた。その後、いくつかのアンケートに回答し、担当者から名刺を受領。その日は帰宅した。

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担当者との面談

翌日に担当者からセミナー参加の御礼のメールと電話があった。ちょうど希望に合う物件が出てきたので面談したいとの内容であった。期末で業務も忙しいこともあり、断りを入れようとしたが、「とても人気の物件であるため、購入するにはすぐにでも書面を入れる必要がある」とのことであったため、渋々業務終了後に面談することにした。

不動産業者の担当者(北田(仮名))と喫茶店で集合し、名刺も渡して挨拶を行った。北田からは「銀行員であればローンも通りやすいし、希望どおり進められますよ」との発言があったが、嘘をつくのもよくないと思い、近いうちに出向になるかもしれない旨も伝えた。

北田からは、「いままで同様の相談を受けることがあったが、出向してから購入検討してもローンが通らないケースが多く、銀行員であるうちに急いで購入することを勧める」と告げられた。あくまでも購入の意向を示すための書類であり、白紙撤回も可能であるため、とりあえず書面だけでも出してほしいと求められ、その場でサインをして手渡した。

不動産購入

1週間後に北田から事前審査が通った旨の連絡があった。源泉徴収票などの必要資料を受領したいとの要望があり、これら資料を北田へ手交のうえ、不動産業者の提携金融機関の正式審査に進むこととなった。

その1週間後には正式審査も決裁となり、不動産売買契約締結へと進んでいた。北田から受領した物件概要書によれば、家賃からローン返済、固都税、管理費、修繕積立金を引いて月に1万円程度手残りがあるとのこと。金利については変動2.5%と少し高いように感じたが、事業性のアパートローンの金利水準としては妥当との説明もあり、応諾することにした。

ローンは、本体価格2,500万円満額35年間の融資。諸経費(仲介手数料、登録免許税、印紙、ローン手数料など)の約100万円は、手元の預金から支払いを行った。

すでに入居者がついている中古のワンルームマンションを買ったため、購入した部屋の内覧などはできず、建物の外観を見ながら引き渡しの説明を受けて一連の手続きおよび決済が完了した。