ゆうちょ銀行では、相続払戻金を他の金融機関に送金できない
最も気になるのは「払戻金の取り扱い」についてです。筆者がXに投稿したのも、同業者の間で不満が多く挙がったのも、この部分です。
実はゆうちょ銀行では、解約した口座に残っていたお金は、ゆうちょ銀行の口座にしか送金できません。同じ金融機関のなかでしか送金できないという仕様は、少なくとも筆者の知る限りではゆうちょ銀行だけです。筆者が司法書士として関わった他の金融機関では、解約後、その口座の残金を他の金融機関に送金することができました。
相続人がゆうちょ銀行に口座を持っていれば、そのゆうちょ口座に相続払戻金を送金することができます。とはいえ、自身のゆうちょ口座がない(新規開設する予定もない)場合や、ゆうちょ口座はあっても他の金融機関の口座で受け取りたい場合などもあるでしょう。
このような場合は、ゆうちょ銀行でもらえる払戻証書(小切手のようなもの)を窓口で現金化し、自分自身で別の金融機関の口座へ入金することになります(※)。多額の現金を持って移動するわけですから、非常に危険です(※司法書士などが手続きを代理する場合は「預り金口座」を作り、窓口で現金化した残金をいったんそこへ入金したのち、相続人が指定する口座に送金します)。
なぜゆうちょ銀行では、解約した口座の残金を、ゆうちょ銀行以外の口座に送金できないのか。筆者はその理由を知りませんが、他の金融機関では「できる手続き」であるだけに、謎ルールだと感じます。今後改善されたら嬉しいですね。
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複雑な手続きは「専門家に代行してもらう」という選択もアリ
以上、今回はゆうちょ銀行の相続手続きについて解説しました。
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【まとめ】
●最低2回は窓口へ行く必要がある
●解約後の金銭を、ゆうちょ銀行以外の口座に送金することはできない
●払戻証書を使って窓口で現金を受け取り、自分で別の口座へ入金しなければならない
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ゆうちょ銀行における相続手続きは、さまざまな金融機関のなかでも特に手間がかかります。手続き自体が面倒で気が進まない、平日は時間が取れない、預貯金以外の相続手続きも含めて相談したいなどの場合は、専門家に依頼することも検討してみてはいかがでしょうか。
佐伯 知哉
司法書士法人さえき事務所 所長