やはり、転職するなら20代~30代までが年収アップが期待できるのだろうか。
人材総合サービスのパーソルキャリア運営する転職サービス「doda(デューダ)」が2024年10月23日に発表した「年代別 転職時の年収変動レポート」によると、20代は年収大幅アップ、30代は微増、40代は減少傾向という調査結果が出た。
これから転職を目指すアナタ、どうする? 調査をまとめた「doda」編集長の桜井貴史さんに転職の際の心得を聞いた。
30代の転職は、リーダーシップ発揮力が求められる
<転職後の年収変動調査「20代大幅アップ」 でも年収増だけが「良い転職」ではない(1)/「doda」編集長・桜井貴史さん>の続きです。
――30代では、決定年収は微増にとどまりましたが、年収のボリュームゾーンが「600万円以上~」と、より高額にシフトしていますね。この理由は何でしょうか。
桜井貴史さん ここ数年で転職という手段がより身近になったことで、今後の事業にとって重要なポジションを担う30代の流動性が高まった。つまり、30代の活躍人材の離職者が増えてきたことが背景にあると考えています。
離職増加に伴って、リーダーシップが求められる管理職や高い専門性が必要なポジションの求人も増加。こうしたニーズに合う優秀な人材は、転職市場で引く手あまたです。そのため、企業が採用成功に向けて年収を引き上げた結果、「600万円以上」の決定者の割合が増え、平均決定年収額が微増したと推測します。
――つまり、30代の場合はリーダーシップを発揮できる層に、企業の期待が高いわけですね。具体的にはどんなタイプの人が高額の年収を獲得しましたか。
桜井貴史さん 大幅な年収アップをかなえたCさんの例を紹介します。
システム開発会社のプロジェクトマネジメントから、商社の社内システムエンジニアとしてIT戦略部門に転職しました。年収が550万円から残業代込みで800万円程度に増加しました。
大幅な年収アップの理由として、比較的年収水準の高い商社に転職したことも一因ではありますが、システム開発会社に10年以上勤め、上流から下流まで豊富な業務経験があること。これに加え、数十名規模のマネジメント経験がある点なども評価されたことが挙げられます。
面接時は、質問に対する回答が的確で、ぶれない点もコミュニケーション力の高さを裏付けるポイントとなりました。そのほか、強い責任感や業務遂行力も評価され、高水準の決定年収になったと考えています。
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40代の転職、「管理職」から「ヒラ」になるケースが多い
――Cさん、いい転職先に恵まれてよかったですね。しかし、40代では決定年収が減少するという調査結果がショックです。やはり、転職するなら30代までということでしょうか。
桜井貴史さん 40代では平均的に、転職前の年収額に比べて決定年収額が下がる傾向にあります。この理由は、転職前の企業での勤務年数が長くプロフェッショナルとして活躍する人や役職についている人が多く、転職直後に一時的に年収が減少するケースが珍しくないためです。
具体的には、前職で管理職だった人材が、半年後に管理職に昇格することを前提に、転職直後は管理職候補としてメンバークラスで採用されるパターンなどが挙げられます。
――その場合は、前職の管理職から転職先で一時的にヒラになるので年収が下がというわけですか。
桜井貴史さん ただし、転職後の年収変化の割合を見ると、40代で年収が上がった個人・下がった個人はそれぞれ半数程度おり、必ずしも全員が転職をして年収が下がるというわけではありません。
年収が下がる場合も、代わりに働き方や勤務地などの勤務条件が改善されることを優先し、希望の転職をかなえている個人もいます。さらに昨今では人材不足の深刻化や転職価値観の変化などから「35歳転職限界説」は過去ものになっており、40代からの転職で、遅すぎるということは全くありません。
――40代で転職を考える場合、一番重要なことは何でしょうか。
桜井貴史さん もし40代で転職を考えている方で、転職条件のうち「年収アップ」の優先順位が高い場合、抑えるべきポイントの1つは「自身の専門性や強みを明確にすること」です。
即戦力としての活躍が期待できるベテラン層の多い40代ですが、転職経験がない人も多く、どういった自己PRが必要かなどの転職ノウハウを熟知していないケースが多々見られます。そのため、自身の魅力を伝えきれず、転職活動が難航することも少なくありません。
まずは、自身の専門性や強みを理解したうえで、力を発揮できそうな求人に応募し、企業へどんどんアピールすることです。「この人のスキルや経験が必要だ」という評価につなげましょう。その積極性が、結果として現年収を上回る決定年収での転職をかなえられる可能性が高まるのではないでしょうか。