キャンプに出かけた先で…雅史さんの身に降りかかった「悲劇」

ある日のこと。繰上げ受給を決断してから3年が経ち、62歳になった雅史さんは、変わらず友人とキャンプを楽しむ生活を送っていました。

その日選んだキャンプ場は、山を切り崩してつくられた渓流沿いの場所。眺めはとてもいいですが、足場が悪いのが難点です。友人と談笑しながら崖を下っていた雅史さんですが、ふとした拍子に足を踏み外し、崖から転落。すぐに病院に運ばれ、幸い命に別状はありませんでしたが、右大腿頚部を骨折し、右人工股関節を装着することになりました。

それから雅史さんは、車イス生活を余儀なくされ、日常生活に戻れるよう長いリハビリ生活が始まることに。急遽夫のリハビリをサポートすることになった妻の和代さんは、夫の状況から、「雅史さんは障害年金に該当するのでは」と思い、夫の回復を待って夫婦で年金事務所を訪ねることにしました。

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“障害年金は受け取れませんよ”…担当者に告げられた「まさかのひと言」

近くの年金事務所に着くと、早速和代さんは担当者に現在の状況を説明しました。すると、年金事務所の担当者から思いがけないことを告げられます。

「雅史さんの場合ですと、初診日の前から『年金の繰上げ受給』を選択していますので、すでに年金を受給していることから、対象から外れてしまいます。そのため、障害年金は受け取れませんよ」。

えっ、どういうこと?……和代さんと雅史さんは、あまりの衝撃に言葉を失いました。

仮に雅史さんが障害年金2級に該当した場合、繰上げ受給を選択していなくても老齢基礎年金に相当する81万6,000円を受給できていました。これは、現在雅史さんが繰上げ受給によって受け取っている老齢基礎年金よりも多い金額です。

「繰上げ受給しなくてもこうやってケガをして障害年金を受け取れていたのなら、繰上げ受給をした意味がまったくないじゃないか! 高年齢雇用継続給付金で年金はカットになるし、こんなことなら65歳まで年金の受け取りを待っておけば……。俺は年金というギャンブルに負けたってことか……」雅史さんは後悔してもしきれません。