“フランスで最も親しまれているシャンパーニュ”と評される「ニコラ・フィアット」からトップキュヴェ『パルム・ドール2009年』と、メゾン初のヴィンテージ・コレクション『クロノテーク』が登場した。10月に最高醸造責任者のギョーム・ロフィアン氏が来日、新しいポートフォリオについて語ってくれた。

白い花や黄桃、リコリスの香り。グラスの奥からブリオッシュやハーブのアロマが顔をのぞかせる。どこか“落ち着き”を感じさせる、やさしい果実味と余韻に残る繊細な苦味が『ニコラ・フィアット パルム・ドール 2009年』の熟成を物語る。
「2009年は“穏やかで暑い年”でした。ブドウは理想的に熟し、味わいに深みと厚みをもたらしてくれました。14年の熟成を経ていますが、しっかりした酸のおかげで、フレッシュさが感じられます」と最高醸造責任者のギョーム・ロフィアン氏は語る。

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ギョーム・ロフィアン氏。「ニコラ・フィアット」最高醸造責任者兼取締役。農学と農業食品学を学んだ後、2002年に国家認定ワイン醸造士(DNO)の資格を取得、インターシップとしてニコラ・フィアットで研修を受け、のちに入社。来日は2度目。「日本料理の繊細さ、魚などの素材の生かし方に感動しました。興味深かったのが、木の芽やワサビなどのハーブや調味料を自分の好みで料理と合わせること。アサンブラージュしているような楽しみがありました」。メゾンはコート・デ・ブラン地区のシュイィ村に位置。広大な敷地には、収穫期になると果汁を運ぶ大型のタンクローリーが行き交う。ニコラ・フィアットはプロフェッショナル向けの商品から愛好家向けの家庭用商品までラインナップが豊富で、その売り上げはフランスNO.1を誇る

特徴的なのが、そのブレンドの手法だ。使用するブドウはシャルドネとピノ・ノワールがそれぞれ50パーセント。シャルドネはコート・デ・ブラン地区のグラン・クリュ(シュイィ、オジェ、メニル・シュル・オジェ、クラマン)のもの、ピノ・ノワールはアンボネーやアイを中心に使用しているが、興味深いのはシャンパーニュ地方南部に位置するモングー村のシャルドネを使用していることだろう。
「モングー村のシャルドネは力強く、まろやか。グラン・クリュのブドウは強い個性を持っているので、シャルドネとピノ・ノワールを繋ぐ役割を果たしています。独特のパイナップルのようなニュアンスも華やかさを添えてくれます。また、最終的にワインの個性を決めるドザージュにも気を使います。2009年から21年のヴィンテージのワインを使用していますが、マロラクティック発酵をしていないものを約20パーセント取り出し、フードルで分けて熟成しています。ですが、使うのはほんの少しなので“エクストラ・ブリュット”にカテゴライズされますね」

『ニコラ・フィアット パルム・ドール 2009年』
白い花や、黄桃、パイナップルなどフルーツの香り豊か。ハーブやリコリスのニュアンスも。緻密でふくよかな果実味と凛とした酸が印象的。和食や中国料理などとも好相性。750ml 価格未定(2025年以降販売予定)
※2008年は29,711円(税込)

ニコラ・フィアットのアドバンテージは、何といっても“最高級のブドウが存分に使える”ことだろう。メゾンは1976年に実業家のニコラ・フィアット氏が設立、86年にはシャンパーニュ地方最大の協同組合と手を携え、現在、フランスでも最大規模を誇る。組合員となっている栽培農家は約6000、そのうち5000の農家が定期的にブドウを供給しているという。
「組合員がブドウを栽培している地域には、550の圧搾所があり、仕込みの時期になると、収穫後すぐに各所で圧搾された果汁がタンクローリーで運ばれてきます。このほうが、ブドウを直接運ぶより、果汁のフレッシュさが保たれるのです」とロフィアン氏。

そして今年、ニコラ・フィアットはメゾン初のコレクション『クロノテーク』を誕生させた。カーヴに眠るオールドヴィンテージの熟成のポテンシャルに着目し、これにロフィアン氏独自のドザージュの手法を施した3つの特別なキュヴェだ。ヴィンテージにはそれぞれニックネームが付けられ、“Distinguished(際立った)” 1999年、“Vibrant(活気に満ちた)” 2000年、“Inviting(魅惑的な)” 2002年。どのキュヴェも個性豊かで熟成の美しさを感じさせるが、驚くのはさらなる熟成のポテンシャルを予想させることだ。「花の命は思ったより長い」と実感させられる。「コレクターズ・アイテム必至」と言っても過言ではないだろう。ロフィアン氏によれば、今後、ヴィンテージが異なるものを継続的に発表していく用意はできているという。

『クロノテーク』
『クロノテーク 1999年』『クロノテーク 2000年』『クロノテーク 2002年』をセットにした、同社初のコレクション・アイテム。それぞれが美しい熟成を物語り、個々のヴィンテージの個性を楽しませてくれる。数量限定。各750ml 参考商品

華やかな『パルム・ドール』が今後どのような進化を見せるのか。ワイン愛好家にとって“気になる存在”になりそうだ。

text by Kimiko ANZAI