渋谷ハロウィンは「駅からの長距離迂回歩行」が地獄だった。2024年の主役はコスプレをした“訪日外国人”

毎年恒例の「渋谷ハロウィン」。いや、「恒例」という表現は間違っているかもしれない。何しろ、渋谷区は「ハロウィンには渋谷に来ないで」と呼びかけているのだから。

しかし、どんなに呼びかけてもここには毎年多くの人が集まる。COVID-19によるパンデミックが過ぎ去ってからはインバウンド産業の拡大により、大勢の外国人観光客が渋谷に集合するようにもなった。

さて、2024年の渋ハロではどのような光景が繰り広げられたのだろうか。筆者(澤田真一)は、今年もカメラを首にかけて足を運んでみた。

◆長距離迂回ルートを通ってようやくハチ公へ


去年(2023年)の渋ハロは、まさに「人間回転寿司」状態だった。

警戒エリアは基本的に一方通行で、各々が自由に方向を定めて歩行することは一切できなかった。右側通行の歩道をぐるぐる周回するように誘導され、立ち止まると警察官かBONDS SECURITYの警備員に注意されてしまう……。そのような状況ゆえ、写真撮影のために一時歩行を停止することすら困難だった。

では、今年2024年はどうだったか?

筆者がJR渋谷駅に到着したのは19時頃。今からハチ公口から出て、忠犬ハチ公像の様子を見に行ってみよう……というのは、もちろん不可能である。ハチ公口は去年と同様閉鎖され、警備員に誘導されて反対の宮益坂口へ。しかし、これが地獄の長距離迂回歩行の始まりだった。


宮益坂口からそのまま西へつま先を向けてハチ公前広場へ……とは行かず、何と明治通りを北上することを要求されてしまった。最短距離でハチ公前広場に行くことはできないのだ。ハチ公が鎮座する場所からまるでアサッテの方向に歩き、宮下公園でようやく西へ折り返し。そこから南下してやっと渋谷スクランブル交差点にたどり着いた。


が、ここでも困難が。この日のスクランブル交差点は、反時計回りの一方通行。警察官に急き立てられながら、指定のゼブラゾーンを渡ってようやくハチ公前広場に足を踏み入れた次第である。


ただし、肝心のハチ公像周辺は去年と同様覆いがかけられ、近づくことはおろか姿を見ることすらできなかった……。

◆外国人コスプレイヤーとTikTokライバー

さて、渋ハロといえばコスプレイヤーである。

国際的には、渋ハロは(渋谷区の意向はどうあれ)「大規模コスプレイベント」として認識されている。21時を過ぎると、コスプレをした外国人が一気に多くなってきた。

去年もそうだったが、やはり2020年代の渋ハロの主役は外国人である。とはいえ、日本人コスプレイヤーが全くいないというわけでもない。ライブ配信を行いながら一方通行路を歩く日本人TikTokライバーの姿もあった。


動画配信者と言えば、これまでは「YouTuber」の存在が大きかった。しかし、今年はYouTuberよりもTikTokライバーの存在感のほうが明らかに強かった。スマホで手軽に視聴できる縦型配信は、より多くの視聴者を集めることができるからだ(ちなみに、YouTubeでも縦型ライブ配信が可能になった)。


渋ハロはこうした「プラットフォームの移り変わり」も観察することができるが、一方で配信活動とは縁のない「日本人のカジュアルコスプレイヤー」は例年よりも少なくなっているようだ。

◆今年の渋ハロは「期待外れのイベント」か


2015年頃の渋ハロの中核は、首都圏を住まいとする日本人コスプレイヤーだった。

彼らの華やかなコスプレ衣装が、渋ハロを世界唯一の祭典にしたことは間違いない。だが、渋ハロが年々持ち上がりを見せると「単に羽目を外したい者」が首都圏の外から来るようになった。それが問題として顕著化したのが、2018年である。路上で軽トラックを横転させ、逮捕者が出た年の渋ハロだ。

そこから渋ハロにはネガティブなイメージがついてしまい、また自治体や地元商店街も「渋ハロには来ないで」と呼びかけた。そうした背景を知っている日本人コスプレイヤーは、渋ハロを敬遠するようになったのだ。

代わりにやって来たのが、コスプレをした外国人である。


しかし、多くの外国人にとって2024年の渋ハロは「期待外れのイベント」だったのではないか。

世界的に有名なランドマークであるハチ公像へ行くには大幅な迂回路を歩かねばならず、そもそもハチ公像の周囲には覆いがかけられている。路上で立ち止まってはしゃぐことも、期待していた「路上呑み」もできない。現地で味わった失望感はSNS等で拡散され、来年以降の来日を思案している人たちに何かしらの影響を与えるはずだ。


そうした流れから、渋ハロはいずれ自然解消する道をたどるのではないかと筆者は推測している。代わりに盛り上がるのは、自治体と地元商店街からのお墨付きをもらった池袋ハロウィンコスプレフェスのようなイベントではないか。

<取材・文・撮影/澤田真一>

【澤田真一】

ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』