関さんおすすめ多肉植物の逸品4選
関さんに取材時(2024年10月上旬)の在庫の中から、おすすめの4商品を選んで、解説してもらいました。
掲載の商品は全て1点ものなので、ご購入希望の場合は事前に店に問い合わせてください。
①パキポディウム・グラキリス(輸入株)
価格:49,500円(税込) 大きさ:高さ(鉢含まず)25cm 幹幅12cm
特徴
根や幹、茎に水分を蓄え、肥大化したフォルムが特徴的な塊根植物(コーデックス)の中でも人気のパキポディウム属。
その人気を牽引してきた最大の功労者こそ「グラキリス」です。
主な原産地はマダガスカルを中心に、南アフリカ、ナミビア、アンゴラといった、アフリカ大陸南部で、その多くが岩場やインゼルバーグと呼ばれる広大な平原に孤立した丘陵地帯など、通常の植物であれば生育できない過酷な環境で自生しています。
近年は観賞用植物としての乱獲が相次ぎ、国際間取引にはワシントン条約による厳しい規制がかけられているため入手も難しくなってきましたが、gadintzki plantsでは原産地政府が公認している正式なルートからの株しか仕入れていないため、安心して大自然が生んだ奇跡の造形美をお楽しみいただけます。
関さん推しの理由
人気のグラキリスも”輸入株(現地球)”なんて肩書きが付くと上級者向きでは? と難しく考えている方も多いのですが、意外にもグラキリスの現地球は塊根植物初心者にもおすすめなんです。
自生地の様子をそのまま楽しめる輸入塊根植物の醍醐味を存分に味わえるのがこのグラキリス。
サボテンなんかよりも全然ラクに育てられるんですよ!
大きさ、価格、共に幅広く取り揃えています。
グラキリスは低重心で扁平な球状が整っていれば整っているほど高値が付くのですが、僕がまん丸よりはちょっと変わった形のほうが好きなので、それを選んで仕入れているため価格が抑えられつつ、僕の好みが反映されているのが当店のグラキリスの特徴ですかね。
②パキポディウム・ウィンゾリー(実生)
価格:3,000〜6,000円(税込) 大きさ:高さ(鉢含まず)5〜7cm 幅全て約2cm
特徴
パキポディウム・バロニーの変種として原種のバロニーよりも人気を誇るパキポディウム・ウィンゾリー。
パキポディウム属の中で唯一赤い花を咲かせるバロニーの変種のため、ウィンゾリーも同様に美しい赤花を咲かせます。
原種のバロニーは幹高30cm以上まで成長しないと開花株にはなりませんが、ウィンゾリーは比較的小さい12cmくらいの幹高でも開花するため、花を早く見たい人にはウィンゾリーがおすすめです。
筆者所有株の開花の瞬間。もちろん、関さんの旧店から迎え入れたものだ。 Photo by JOHN CHEESEBURGER FOTOG.
徳利のような愛嬌のある形も人気で、真っ直ぐ上に成長するバロニーに対し、ウィンゾリーは分枝も多く、横方向にも旺盛に成長していくため、低重心で盆栽的な味のある株に出会うことができたらラッキーでしょう。
ただ、徳利型が綺麗でバランスよく分枝した株となると価格も急上昇し10万円など悠に超えてしまうため、ウィンゾリーは現在でも高級レアプランツの地位を不動のものとしています。
関さん推しの理由
おすすめの理由は、なんといっても僕が手塩にかけて育て上げた親株(写真下)で自家採種したタネからの実生株なので、将来的に親株のような良株に育ってくれるであろうというロマンが詰まっているからです。
一時期に比べるとレア感も減少した感のあるウィンゾリーですが、それはあくまで愛好家目線でのことであって、やはり一般的なお花屋さんではまず出会うこともない植物なので、ぜひこの機会に育ててみていただきたいなと思います。
ちなみにここでご紹介している稚苗は現在の大きさからだと開花するまでに6年以上を要しますが、年を重ねるごとに目に見えて肥え太っていくので、形ができ上がってしまっている中型以上の株とは異なり、稚苗は成長が見える楽しさ、育てる楽しさを存分に味わえるのが魅力です。
ともに時を過ごした株に赤く可愛らしい花が咲いた瞬間は、万感の思いがこみあげてきますよ。
③コミフォラ・ピュアカタフ(輸入株)
価格:55,000円(税込) 大きさ:高さ(鉢含まず)40cm 幹幅6cm
特徴
コミフォラ・ピュアカタフは、カンラン科に属する植物で、アフリカ北東部および東部の熱帯地域、そしてアラビア半島南西部に自生しています。
多肉のようで多肉でない、塊根のようで塊根でない、いわゆる「灌木系(かんぼくけい)」というジャンルで括られます。
神々しい独特な雰囲気、視線を釘付けにする観賞価値、所有感をくすぐる希少性と三拍子が揃った、とても魅力的な植物です。
白い表皮は成長とともに、まるで材木をカンナで削ったようにめくれていくので、それがまた味わい深さを増しています。
予測できない方向に伸びていく黒い枝も面白いです。
これは時間の経過により黒くなるわけではなく、幹から出た瞬間にもう黒いので、この色彩の妙は自生地アフリカらしい野生味を感じさせますね。
香木としても利用されており、その歴史は数千年前にまで遡るといわれています。
もちろん、これも枝を切ると甘く上品な香りがします。
分泌される樹脂はその高貴な香りとともに鎮静鎮痛の薬効も持つため、古代エジプト文明や西洋宗教では没薬(お清めの薬)として珍重されてきました。
関さん推しの理由
コミフォラの謎めいた姿に取り憑かれて沼落ちしてしまったマニアも決して少なくはありません。
マニアはこの盆栽チックな形が異形であればあるほど10万、20万と高値を付けるのですが、僕は暴れた感じの樹形よりも、コミフォラ独特の表情がありつつ、穏やかな表情も見せる株が好きなので、値段のほうも同品種としては抑えられていると思います。
そもそも、数年前までまったく流通していなかったので、その頃はピュアカタフが出るとネット界隈がざわつくほど幻の植物だったんです。
もしその時代にこの株が出ていたら、おそらく20万円は下らなかったはずです。
現在はある程度流通が確立されたとはいえ、グラキリスやウィンゾリーほど安定しているものではないので、今当店にあるこの株は、希少性、樹形の美しさ、価格の3点から考えてもかなりおすすめです。
④オトンナ・カカリオイデス(実生)
価格:4,400円(税込) 大きさ:高さ(鉢含まず)3cm 幹幅4.5cm
特徴
オトンナ・カカリオイデスは南アフリカの山岳地帯が原産のキク科の植物。
糸のように細い花軸の先にキク科らしい黄色く可愛らしい花を咲かせます。
塊根から不規則に出てくる薄緑色の小さな葉の可愛らしさは、店頭で実物を見ると悶絶級です。
この葉、よ〜く目を凝らして見ると、何気に多肉らしく肉厚であることが分かります。(写真下)
この株は実生株ですが、元来が極小型の塊根植物なので、現地で自生しているものでも塊根幅10〜12cmくらいまでしか大きくはなりません。
しかも岩ばかりのかなり荒い土壌のわずかな砂溜まりで塊根部が全部埋まった形で自生しているんです。
6〜8月が休眠期となり、葉を全て落としたこの時期の姿はまるで生姜のよう。
秋口から目覚めて、翌年の5月くらいまで塊根が隠れるほど葉が生い茂ります。
決して多くは出回らない、かなりのレアプランツです。
関さん推しの理由
冬型の塊根植物なので、これからの季節に葉を出し、成長していく姿を楽しめます。
うちでは割とよく販売しているのですが、大きめの専門店でもあまり置いていないかなりレアな植物です。
オトンナ属もさまざまな種類があり、僕もけっこういろいろ扱ってきたのですが、旧店新店ともにこのカカリオイデスがとても人気なんですよ。
見た目が可愛らしいからでしょうか、新店オープンしてからもう5つが売れ、5つとも女性のお客様にご購入いただきました。
しかも5人ともまったくの塊根植物未経験者で、「かわい〜」の一言でお買い上げという(笑)。
動機なんてそれでいいんですよ。
“生姜のような塊根”の形も様々なものを取り揃えているので、ぜひ見に来てください!
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おすすめ商品の育て方
ここで紹介した関さんおすすめの4つのプランツは、全て乾燥地帯で自生している植物なので、用土は乾燥気味に保つという部分は共通しています。
そして塊根系を育てるうえでの基本3原則、①太陽ガッツリ ②空気循環 ③水やり控えめ、は必須条件です。
オトンナ・カカリオイデス以外の3商品、グラキリス、ウィンゾリー、ピュアカタフは成長期が春〜秋の夏成長型植物。
このため、昨今の亜熱帯化した日本の気候を考えると、3月末〜10月中旬くらいまでは屋外でたっぷりと太陽光(直射日光OK)を浴びせながら管理し、3〜4日おきに鉢底から溢れ出るくらいたっぷりの水を与えます。
ただし梅雨時は屋内管理に切り替え、水やりも週1回程度に留めておきます。
オトンナ・カカリオイデスは成長期が日本の冬にあたる冬成長型の塊根植物のため、秋から春にかけての成長期は屋外でたっぷりと陽射しをあてて育てます。
真冬も氷点下にさえならなければ屋外でOK。
ただし風の強い日は落葉を防ぐために屋内に取り込んでください。
また、オトンナ・カカリオイデスは蒸れを極度に嫌うため、成長期といえど土が完全に乾燥するまでは水を与えないでください。
完全に乾燥したら、他の3商品同様にたっぷりと水を与えます。
土の乾燥具合は慣れれば感覚で分かるのですが、初心者の方は竹串を用いると便利ですよ。
鉢の縁に挿し、引き抜いた串が汚れていれば、まだ水のあげ時ではないことがわかる。
4商品とも、肥料は成長期に月に1回、規定量より薄めにした液肥を水やりの際にあげてください。
液体肥料『ハイポネックス』原液の場合、目安としては2Lのペットボトル満水に対し市販飲料のペットボトルキャップ内側の枠すり切り(=1cc)での希釈がベスト。
休眠期の管理
4商品とも、休眠期は室内で管理します(グラキリス、ウィンゾリー、コミフォラは冬季に14℃以下にならないよう注意)。
休眠中とはいえ、屋外と同様の環境づくりをしてあげることは植物栽培にとって重要なこと。
室内で管理すると自ずと日照と風が不足がちになるため、これを補うために植物育成LEDライトとサーキュレーターの使用をおすすめします。
【それぞれの使用方法はこちらの記事にて】
植物育成LEDライト
サーキュレーター
植物育成LEDライトを導入しない場合は、陽の当たる場所で管理してください。
ただし、オトンナ・カカリオイデスは休眠中に夏の直射日光を浴びるとストレスになるため、レースのカーテン越しなどの遮光した環境下で管理します。
また、陽当たりが悪い、あるいは屋外管理が難しい場合は、植物育成LEDライトとサーキュレーターを用いることにより、4商品とも1年を通じて室内栽培することは可能です。
休眠期の水やり
4商品とも休眠期は水やりを基本的には休止しますが、細根を生かして休眠明けの立ち上がりを良くするために、週一回程度、土表面が湿るくらいの水はあげてください。
この時、グラキリス、ウィンゾリー、ピュアカタフは昼に、オトンナ・カカリオイデスは夜に、いずれもボディーに極力水がかからないように注意しながら与えます。
また、成長期と休眠期の間は、急激に水やりを再開したり、やめたりするのではなく、間隔、水量ともに徐々に増減を行うようにしてください。