孫「自分の遺留分はいくらなのか?」
孫に遺留分がある場合、孫が自分の具体的な遺留分を計算するにはどうすればよいのでしょうか? ここでは、ある男性の相続が発生した例から、次の前提で遺留分を計算する流れを解説するとともに、計算例を紹介します。
・相続人:配偶者、先に死亡した長男の子(孫)2名、長女
・被相続人の遺産総額:4,100万円
・被相続人の負債総額:100万円
・被相続人が亡くなる3年前に、長女に対して贈与した財産:2,000万円
・被相続人は長女に全財産を相続させる旨の遺言書を遺しており、負債も全額長女が負担した
とはいえ、実際に計算しようとすると、計算に迷ってしまうことも少なくないでしょう。実際のケースで遺留分計算にお困りの際は、弁護士への相談をお勧めします。
遺留分計算の基礎となる財産を計算する
はじめに、「遺留分計算の基礎となる財産」を計算します。遺留分計算の基礎となる財産は、次の式で算定します(同1043条1項)。
「一定の贈与財産」とは、被相続人がした贈与のうち、次のいずれかに係るものです。
・相続人以外の者に対して、相続開始前の1年間にした贈与
・相続人に対して、相続開始前の10年間にした贈与
・時期を問わず、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知ってした贈与
例のケースに当てはめると、遺留分計算の基礎となる財産は次のとおりとなります。
自分の遺留分割合を確認する
次に、自分の遺留分割合を確認します。先ほど解説したように、例のケースにおける各相続人の遺留分割合は次のようになります。
・配偶者:4分の1
・長男の子(孫)1:16分の1
・長男の子(孫)2:16分の1
・長女:8分の1
遺留分割合を乗じて遺留分額を算定する
遺留分計算の基礎となる財産の額に遺留分割合を乗じて、各相続人の遺留分割合を計算します。例のケースにおいて、それぞれの遺留分額は次のとおりです。
・配偶者:6,000万円×4分の1=1,500万円
・長男の子(孫)1:16分の1=375万円
・長男の子(孫)2:16分の1=375万円
・長女:8分の1=750万円
つまり、例のケースにおいて、孫1と孫2はそれぞれ長女に対して375万円の遺留分侵害額を金銭で支払うよう請求できるということです。
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孫「遺留分侵害されている!」…気づいたときの対処法
孫が自身に遺留分があり、その遺留分が侵害されていることに気づいたらどのように対処すればよいのでしょうか? 最後に、遺留分侵害をされた場合の対処法を解説します。
できるだけ早期に弁護士へ相談する
被相続人が遺した遺言や生前贈与で遺留分が侵害されていることに気付いたら、早期に弁護士へ相談するべきでしょう。遺留分侵害額請求は自分で行うこともできますが、請求後に遺留分侵害額などについて交渉が必要となることが多いためです。自分で請求する場合、不利な内容で合意してしまうかもしれません。請求してしまってから後悔しないよう、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。
期限内に遺留分侵害額請求をする
弁護士へ相談したら、期限内に遺留分侵害額請求をします。遺留分侵害額請求の期限と請求方法は次のとおりです。
1.遺留分侵害額請求の期限
遺留分侵害額請求の期限は、被相続人の死亡と遺留分侵害の事実(遺言書の存在など)を知ってから1年間です(同1048条)。また、これらを知らないままであっても、被相続人の死亡から10年が経過するともはや遺留分侵害額請求をすることはできません。そのため、遺留分侵害額請求は、特に期限に注意して行う必要があります。
2.遺留分侵害額請求の方法
遺留分侵害額請求の方法について、法律上の制限はありません。しかし、実務上は、内容証明郵便で請求することが一般的です。なぜなら、内容証明郵便で請求することで、確かに期限内に請求したとの証拠が残るためです。口頭や普通郵便で請求した場合、相手方から「期限内には請求されていない」などと主張され、これを覆せないおそれが生じます。
なお、遺留分侵害額請求をしても、相手方が請求に応じないこともあります。また、遺留分侵害額についての意見が相違し、交渉がまとまらないこともあるでしょう。この場合は、裁判所に調停を申し立てて解決を図ります。調停とは、裁判所の調停委員が意見を調停し、合意をまとめるための手続きです。
調停でも意見がまとまらない場合は、訴訟へと移行します。訴訟では、裁判所が具体的な遺留分侵害額を認定します。裁判所が下した結論(判決)には、期限内に控訴の手続きを取らない限り、双方が従わなければなりません。