厚生労働省の発表によると、2022年に離婚した夫婦のうち、同居期間が20年以上だった「熟年離婚」の割合が過去最高に達したとのこと。夫は妻との老後を考えてせっせと資産形成にも勤しんでいたのに妻は……というケースも。本記事では、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、熟年離婚の財産分与について解説します。
妻も一緒に地元に戻るものだと思っていたのに…
夫との生活から離れたいと考え、離婚に至るケースもあれば、両親の介護が原因で離婚に至るケースもあります。敏夫さん(58歳)のケースもまさにそうでした。
敏夫さんは東北地方出身でしたが、東京の大学に進学し、そのまま東京で就職しました。そして同じ職場にいた恵子さん(55歳)と結婚したのです。
仕事柄、海外での生活が多かった敏夫さん。妻も喜んで駐在先に帯同していたと言います。2人の子どもに恵まれながらもヨーロッパやアジア、南アメリカなどさまざまな都市での生活が続き、50歳を過ぎたころから東京での勤務に落ち着くことになりました。
子ども2人も成人し、定年まであと少しとなったとき、盛岡の実家にいる父親が脳梗塞で倒れ半身不随の状態になってしまったのです。
実家から少し離れたところに妹が住んでいるものの、妹も結婚して生活があるため、妹に頼むことはできません。そもそも敏夫さんは、定年後は地元に戻ってゆっくりしようと思っていたのです。当然、妻もそれに付いてきてくれると思っていました。
悩んだ末、会社を辞めて地元に帰り、両親と一緒に住むことに決めた敏夫さん。会社を辞めた後も盛岡に拠点がある関連会社に転職が決まったこともあり、「これからは環境が変わるけど、よろしく頼むな」と恵子さんに話しかけたのです。
すると意外な言葉が返ってきました。恵子さんは「私は一緒には行かないわよ。私も両親の面倒を見るつもりだから、地元に帰るなら離婚してからにして! もちろん財産分与も忘れないでね!」と言ってきたのです。
恵子さんは1人娘だったため、親の面倒を見なければならないのは事実です。しかし、「それなら同じ理由じゃないか。財産だけよこせなんてムシがよすぎるだろ!!」と怒る敏夫さん。しかし、恵子さんの考えは頑として変わりませんでした。
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離婚後の財産分与
民法では、「離婚にあたり、どちらか一方が相手に対して財産の分与を請求できる」※2としています。つまり、婚姻期間中の財産は2人共通の財産であり、一方はそれを分けてくれと言えるのです。該当する財産には以下のものがあります。
・預貯金などの金融資産
・不動産
・保険金
・退職金
など
ただし、結婚前から持っていた預貯金や相続財産は含まれません。
そして、財産分与の割合は基本的には半分ずつです。つまり婚姻期間中の保有財産の2分の1をそれぞれが保有することになります。
ただ、話し合いで「6:4」など割合を決めることもできます。