池尻大橋の地で約50年の歴史を持つ「大橋会館」が、昨年夏にリノベーションし、界隈の人間を驚かせた。
その1階に誕生したのが、池尻の洒脱さを体現している『Massif』だ。
昔と今が共存することで育まれる、洒落た空気感
渋谷からひと駅の立地ながら流行に染まらず、独自性を保ってきた池尻。
昔ながらの商店街が残る一方で若い店主が感性を生かして営む新店も次々と誕生。街には新旧が巧みに入り交じった、他にない洒落感が漂っている。
「大橋会館」は、そんな街の新たなシンボルとなるべく、昨夏リノベーションされ、再生した複合施設。
上階はホテルレジデンスとシェアオフィスが中心で主に地元の活動拠点として機能するが、街とビルをつなぐパブリックスペースに相当するのが1階。とりわけ重要なカフェ&レストランがこの『マッシーフ』だ。
あえて残したむき出しの壁が、かつての宴会場を洒脱に変えた
同店のディレクター、マックス・ハウゼガさんが経緯を語る。
「近所で暮らしたこともあり、隣の銭湯は僕の行きつけでした。だから、よく知るビルの1階に店舗を作ってほしいという依頼が来たときは嬉しかった。それで、僕の知る池尻に縁のあるアーティストに声をかけてプロジェクトは始まりました」
マックスさんは自身も写真家の一面があるクリエイター。広く芸術家と交流があり、この店は建築家・元木大輔さんと共作。
カフェとレストランがシームレスに連なり、通りに面した大きな窓から差し込む光の加減でいろいろな表情を見せるマッシーフ(=山塊)のような空間をディテールにまで気を配って創り出している。
集結した、そのほかのアーティストも錚々(そうそう)たる顔ぶれ。
食材本来の色彩も生かした、繊細で先鋭的な美しいひと皿
料理監修は飯田橋にあったイノベーティブレストラン『INUA』でスーシェフを務めたコールマン・グリフィンさん。
日本の優れた食材を生かす、美しく先進的な料理が用意されている。
素材の味わいを生かす料理が充実。
本来の味が凝縮されたスイカは甘くバニラ香るドレッシングと抜群。ハーブも清涼感を醸す「スイカ、きゅうりのピクルス バニラドレッシング」¥1,500。
想像力を刺激する料理に出合えるのが魅力。
こちらはインド料理の定番の一品を、ケールとバターミルク、2種のソースを添えて独自にアレンジ「新じゃがいもと新玉ねぎのサモサ」¥800。
エッジィなレストランには、気鋭のワイナリーが良く似合う
合わせるワインも自然派を中心に約1,000本をリストアップ。
マックスさんの出身地であるカリフォルニア産も充実しており、すべての銘柄をウォークインセラーに陳列。
中に入って自ら選ぶこともできる。
「古いビルの躯体を残すことで歴史ある池尻の街を再現し、そこに僕たちがいいと思う作品を融合した」とマックスさんは語る。
個々の価値観を生かしながらひとつの集合体を作って洒落感を醸す。このスタイルこそ、池尻。それゆえに、この店は街の中心となりうる。
▶このほか:味にうるさい“酒ラバー”が集う。“最高の〆”である「真鯛の旨塩ラーメン」が染み渡る……!