夏が終わったこの時期は、今年植えた植物のパフォーマンスを再評価してみましょう。今年も猛暑が続いた日本の夏の暑さに負けず、元気に生育してくれた植物は、来夏のマストバイアイテムとしてチェックすべき優秀プランツです。ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、夏のガーデンで活躍した生育旺盛で育てやすいお気に入り植物4種を、栽培のコツや利用のポイントとともにご紹介します。併せて、ドイツでの生態系保護に向けた取り組みもご紹介します。

家庭菜園でお気に入りになったツルムラサキ


YuRi Photolife/Shutterstock.com

この夏、特に印象に残った植物が、ツルムラサキ。自身が家庭菜園に植えたわけではないのですが、市民農園の隣の区画の方が育てていて、私の区画近くにも2種類を植えていたので、よく観察することができました。

お隣さんのツルムラサキのつるはぐんぐん伸びて、三角錐の形に作られた竹のトレリスを伝い、10月には高さ170cmほどまで成長していました。つるは繊細でエレガント、生育旺盛で、葉は楕円形からハート形をしています。濃い緑で艶のある葉は、とても装飾的です。葉の付け根からは短い花柄を伸ばし、白やピンクの花を上向きに咲かせます。花の後には濃い紫の果実が実ります。


Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Green Solutions

ツルムラサキは日当たりのよい場所を好みます。生育は旺盛ですが、支柱を立てて定期的に収穫・剪定していれば、スペースはそれほど必要ありません。私の暮らす湘南のような温暖な地域では、夏の間ずっと、10月まで長く新鮮な葉や新芽を提供してくれる頼りになる植物。気温が下がると生育が鈍り、霜が降りる頃には枯れてしまいます。

食用や観賞用としていろいろ活用


Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Jacquet, Frédéric

ツルムラサキの葉や新芽は食用に。ホウレンソウに似ていて、ほのかにコショウや柑橘のような香りがあります。若い葉は生のままグリーンサラダに混ぜたり、蒸したり茹でてホウレンソウのように活用できます。加熱したモロヘイヤには少しぬめりがあり、オクラやモロヘイヤのような食感に。スムージーに入れても美味しいですよ。私のおすすめはシイタケと合わせること。シイタケを切ってソテーし、薄切りのニンニクを加えて数秒加熱したらツルムラサキの葉を加え、醤油を少々垂らして茎が柔らかくなるまでさっと炒めます。ごま油と煎りごまを添えて完成です。さっと茹でたツルムラサキを鰹節と醤油でいただく簡単レシピもお気に入りです。いろいろな方法で召し上がれ!

ツルムラサキには、葉やつるが緑色の緑茎種と、赤紫のつると赤みがかった葉を持つ赤茎種の2種類がよく流通しています。ケールやスイスチャードと組み合わせてもいいですね。赤茎種のツルムラサキは観賞価値が高く、こちらも生育旺盛です。キャベツや菜の花、レモングラスなど、明るい葉色の野菜と組み合わせれば、カラフルなキッチンガーデンになりますよ。


Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Mann, Dirk

ツルムラサキは、観賞用の一年草として利用するのもおすすめです。

私のプライベートガーデンでは、ポット苗をそのままウィンドウボックスに入れてほったらかしていたのですが、そんな扱いでも生き残って長いつるを伸ばしてたことから、非常に丈夫だと実感しました。来年はフェンスに絡めるか緑のカーテンに仕立てて、どのように成長するか見てみたいと考えています。いずれにせよ、来年の菜園計画のマストアイテムです。

(広告の後にも続きます)

香りがよくぐんぐん育つレモングラス


Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

レモングラスもまた、夏のお気に入り植物の一つ。とてもよく育ち、高さ180 cm 近くにまで成長しました。無数に茂った葉は、切り戻すとすぐにまた伸びてきます。レモングラスの大きな魅力はその爽やかな香りです。庭仕事を始める前にその葉を触り、新鮮なレモンの香りを吸い込んでやる気をプラスするのが夏の習慣になりました。

レモングラスはシトロネラオイルの生産に使用され、石鹸、虫よけスプレー、アロマテラピーなどに広く利用されています。オイルとしての利用に限らず、風味付けとして料理にも使われ、特にタイ料理では欠かせないハーブです。ハーブティーにもおすすめで、レモングラス単体でお茶にしたり、ペパーミントやレモンバーム、カモミールなどとブレンドしたり。茎の部分をタイカレーの具材にしているという友人もいます。

ちなみにツルムラサキは英語で「Malabar spinach」などと呼ばれ、レモングラスは別名の一つに「Malabar grass」というものがあります。この2つに共通する「Malabar」とはいったい何でしょうか? マラバールは、インド南西部の海岸近くの地域の名称。ツルムラサキとレモングラスの原産地なのです。

ガーデン素材としての活用法


Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

レモングラスのような背の高いグラスには、優しい緑色の葉がほかのエリアや隣人の庭とを区切る、パーテーションとしての役割も期待できます。また、私は定期的に切り戻しをし、刈り込んだ葉は庭の小径や野菜の間に敷くマルチング材として活用しています。地面を覆うマルチは地面の乾燥や流失を防ぎ、また堆肥を作る虫たちの棲みかにもなります。冬に立ち枯れたグラスの葉は、ガーデンの風よけになり、また虫たちが寒い冬を越すための素晴らしい避難場所になりますよ。