安定のイメージが強い公務員。定年退職したあとのセカンドライフもゆとりがあるのだろうな……多くの人はそう思いますが、意外にも生活が苦しいと訴える人が多いようです。本記事では、Aさんの事例とともに、先行き見通せぬ時代における生涯のジョブプランの必要性についてFPの川淵ゆかり氏が解説します。
退職後は緻密に計算した「遺産ゼロ」プランを実行
Aさんは2019年に60歳で定年退職をした元地方公務員の男性(65才)です。子ども達とは別居しており、専業主婦の奥さん(62才)と2人暮らしをしています。
長男は医師、次男は一級建築士で、それぞれ立派な資格を持って独立しており、教育にはお金がかかりましたが、親としてはなにも子どもの将来を心配する必要はありません。自慢の息子をもって夫婦は鼻高々でした。
Aさんは在職中から奥さんとの豊かな老後の生活を夢見ており、コツコツと資金づくりをしてきました。定年退職までに住宅ローンも完済してしまい、安心して老後を過ごすために退職金で一部リフォームも行ったため、住まいにかかる負担もありません。
Aさんは、長年総務の仕事をしており、非常に細かい性格です。たとえば、イベントや式典、来客の接待などがあると、分単位でスケジュールを組むような性格で、部下などは遅れが出るとヒヤヒヤしたものです。
自身のマネープランも同様。Aさんは、自分自身が過去に兄弟との相続トラブルを経験したことで、息子たちの生活は息子たちに任せよう、という気持ちから、亡くなったあとは死亡保険で死後整理費用だけを残す、いわゆる「遺産ゼロ」のライフプランを実行するつもりでいます。2人の老人ホームの入居資金も預貯金等のほかは自宅の売却資金で賄うつもりで、Aさんのプランによると子どもたちには頼らないですむ計画。リフォーム後の残りの預貯金残高は3,000万円ほど。
定年退職当時は「老後2,000万円問題」といった言葉が流行りだしたころで、ほかに不動産もあるAさんは、余裕で老後資金を残せることができたと思っていました。そのため、毎日の生活費は年金以内(妻も65歳になった時点で2人合わせた年金額は月32万円)で賄えるようにし、そのほかは、預貯金の残高を自作のマネープランと比べながら趣味のゴルフや妻と2人での海外旅行や外食などを自由に楽しみながら暮らしていくことにしました。
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老後2,000万円問題
老後2,000万円問題とは、2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」が公表した報告書がきっかけとなって広がった老後の資金に関する問題をいいます。報告書では、2017年の高齢夫婦無職世帯の平均収入から平均支出を引くと毎月5万5,000円不足するという結果を報告しており、30年間で約2,000万円が不足することになります。
しかし、あくまでも平均値からの算出額ですから、それぞれの家庭での収入や支出によって金額は当然変わってきます。