銀行預金口座の名義変更も非常に重要な手続きです。銀行預金口座を継続して使うのなら、口座の名義変更をすることになります。使わないなら、預金口座を解約して預金を払戻してもいいでしょう。いずれにせよ、相続人が手続きをおこなわなければなりません。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。

被相続人の口座は凍結される

まず理解しておきたいのは、被相続人の銀行預金は「亡くなった日に相続財産」となるということです。

相続人が複数いる場合は、亡くなった日にすべての相続人にとっての共有の財産になります。遺産分割が確定する前の相続財産の保全を目的に、口座は凍結されます。入金や出金といった取引が一切できません。

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葬儀費用等を故人の口座から引き出せる「仮払い制度」

葬儀費用の支払いなどでお金がどうしても必要になってくる場合、仮払い制度を利用すれば、例外的に一部の金額だけ引き出すことができます。150万円が上限ですが、「預金残高×3分の1×法定相続分の金額」までは引き出すことができます。

ただし、仮払い制度を利用すると、相続放棄できなくなるので、その点は注意が必要です。

そのあとお金を引き出すには、銀行預金を解約するか、名義変更が必要になります。

相続する人が複数いる場合、相続人全員の直筆の署名と実印と印鑑証明書が必要になります。遠く離れた所に住んでいる相続人や、これまでまったく連絡をとっていない相続人がいたとしても、ひとりひとりに連絡して対応しなくてはなりません。

遺産分割協議に合意できなければ、いつまでたっても銀行預金の相続手続きが進まないわけです。亡くなったお父さんの預金口座が複数の金融機関にある場合、すべての金融機関で手続きが必要となりますので、本当に大変です。

遺産分割協議書はどの金融機関でも必要です。相続人全員で実印を押すことになりますので、印鑑証明書も用意してください。

あと、戸籍謄本と住民票です。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と住民票の除票、そしてすべての相続人の戸籍謄本です。通帳とキャッシュカードがあれば、それも提出する必要があります。

銀行預貯金口座の名義変更の必要書類 

●遺産分割協議書

●被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本

●すべての相続人の戸籍謄本

●すべての相続人の印鑑登録証

●相続手続依頼書

●被相続人の通帳、キャッシュカード

相続が発生したとき、故人の銀行口座の扱いに迷う人、存在する口座を把握できず困る人は多くいます。被相続人の銀行口座の残高は相続財産となるため、扱いには十分な注意が必要です。

通帳がすべて保管されていれば問題ないかもしれませんが、長らく記帳していない可能性や、通帳自体を紛失している可能性も考えられます。そのため、亡くなった方の全財産を漏れなく把握するには、銀行残高証明書を取得したほうがいいでしょう。

相続人が知らない口座が出てきたり、借入金など、通帳だけでは把握しきれない負の資産があったりするかもしれません。

銀行残高証明書は、取引されていた口座の各残高を書面で証明するものであり、借入金などもすべて記載されます。