2,000万円問題が話題になったのはもう過去のこと。でもそれを基準に考えている人も少なくありません。独身の美保さんもその1人でした。60歳の時点で2,000万円あれば老後はなんとか生活していけるだろうと思っていたのですが、それは大きな誤算だったのです。本記事では、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、老後に必要となる資産の目安について解説します。

老後にかかる生活費は?

総務省が発表している資料によると、65歳の単身高齢者世帯の1ヵ月の平均生活費は約15万円、年間にすると180万円です。そして、平均寿命(男性:81歳、女性:87歳)まで生きると仮定すると、男性で2,880万円、女性で3,960万円が必要になります。

もちろん、年金収入もありますが、同調査によると、年金収入の平均は約12万円、年間で144万円となっており、毎年36万円の赤字が発生することがわかります。

そのため、その差分をそれまでに準備していた老後資金でまかなうことになるわけですが、男性の場合576万円、女性の場合792万円を準備しておかなければなりません。

ただし、これは平均的な数値であり、本当に必要な老後資金は人によって異なります。

(広告の後にも続きます)

現在の資産は2,000万円と持ち家(マンション)

今年60歳になった美保さん。結婚する機会もなく、とくに結婚願望もなかったことから、これまでずっと独身で過ごしています。

美保さんは大学を卒業後、誰もが知る大手企業に勤めていたものの、会社で同僚の嫌がらせに悩む日々を送っていました。嫌がらせの発端はあるプロジェクトを担当した美保さんが大きな成功を収めたことです。会社からも大きく評価され、賞金ももらえたことから嬉しく思っていた美保さんですが、先輩女性からみたら面白くありません。

実は美保さんが入った会社はそれまでは女性は事務職しか採用しておらず、大卒の総合職として採用されたのは美保さんが初めてだったのです。もちろん美保さんのあとからも大卒の女性が採用されていましたが、事務職の先輩に遠慮しながら仕事をしている状態でした。

しかし、美保さんは「いただいた給料分働くのは当然のこと」と考え、仕事に真面目に取り組んだ結果、プロジェクトで成功を収めることができたのです。

それから、先輩女性の目が冷たくなり、「いい子ぶりっこ」と言われるように。挙げ句の果てには「あんたに真面目に仕事されると、こっちが仕事していないみたいに思われて嫌なんだけど……」とまで言われる始末。

実際、先輩女性は仕事中の私語が多かったり、勤務時間中に長時間席を外したりなど、あまり仕事に熱心ではなく、「別に普通にしていればお給料がもらえるんだからいいじゃん」という考えでした。

美保さんはその考えにどうしても納得できず、自分の意思を貫いたのです。どんなに嫌がらせをされても「真面目に仕事をしていたらいつかいいことがある」と思い、毎日仕事に取り組んでいました。

上司の男性は美保さんが孤立していることに気づいたものの、「女性同士の問題事に頭を突っ込むと余計なことにならない」と、美保さんの置かれている状況を放置していたのです。