ストレスで鬱病と診断…独立を決意

美保さんへのいじめは15年以上も続き、会社にいても仕事以外では誰とも話すことのない毎日。さらに仕事の早い美保さんには他の人の2倍以上の仕事を任され、それをこなさなければなりませんでした。周りが雑談している間も集中して仕事に取り組まなければ間に合いません。

そのころの美保さんのストレス解消法は服を買うことでした。お気に入りのセレクトショップで会社に着ていく服を選ぶ時間だけは楽しく、新作がでるとつい買ってしまうことも。一時は年間に200万円もの金額を洋服の購入に使ってしまうこともあったそうです。しかし、新しい服やバッグ、靴などを身につけて出社すると、「また男に貢いでもらってる」と裏であることないこと言われてしまうのです。

美保さんはある日、会社に行く支度をし、玄関を出ようとした瞬間うずくまってしまいました。会社に行くのが嫌だと身体が訴えてきたのです。その日は休みをもらい、病院で見てもらったところ鬱だと診断された美保さんはしばらく休職することになりました。そのときも先輩女性は「絶対に仮病だ」と噂を流し、美保さんは悔しさに涙が止まらなかったそうです。

心療内科に通いながら、抗うつ剤や精神安定剤、睡眠薬など多くの薬を飲み自宅で過ごす毎日。何をしても楽しいと感じることがなく、外に出る気も起きません。昔から好きだった読書や映画鑑賞すらできなくなっていました。本を読んでも文字が目に入ってこないのです。面白くもなんともありません。テレビを見ても笑うことすらできず、美保さんの顔からは次第に表情が失われていきました。

「頑張っていればいつかいいことがある」と思って続けた結果が鬱で休職。美保さんは自分の情けなさに泣かずにはいられませんでした。

傷病手当を受け取りながら会社を休めるのは最大1年6ヵ月です。美保さんは休み始めて半年経ったころから、もう会社に復帰することは考えなくなりました。

そして元々持っていた資格を活かし、独立することを決意したのです。

鬱の症状も次第に良くなってきた1年後、美保さんは会社を辞め、フリーランスとして働き始めました。最初こそは収入が少なく、生活が苦しい事もありましたが、時間の経過とともに順調に収入が得られるようになり、最終的には会社を辞めたころの年収を上回る収入を得られるまでに。

そして、余剰資金は運用に回すなどして60歳時点で2,000万円の資金を準備することができたのです。もちろん若いころに購入したマンションの返済も終えています。

(広告の後にも続きます)

受け取れるのは年金額満額ではない

美保さんは途中まで会社に勤めていたことから、その間の収入に応じた厚生老齢年金と老齢基礎年金が受け取れます。そしてねんきんネットで確認したところ、65歳で受け取れる年金額は年間150万円であることがわかりました。月に換算して12万5,000円です。上で紹介した例と同じですので、美保さんは2,000万円あるため、平均的な老後生活を送るには十分な資金を持っているといえます。

しかし、年金から税金や社会保険料を差し引かれると手取りの年金額は約1万円減り、11万5,000円程度になってしまうのです。そのため、生活費との差は毎年48万円になり、平均寿命まで生きるとしたら1,058万円が必要です。

それでも、2,000万円あれば大丈夫と言えるでしょう。

ただし、それは毎月15万円で生活できればの話です。美保さんの今の生活費は月25万円程度です。この生活を続ければ不足額は3,432万円まで膨れ上がってしまい、2,000万円では到底足りません。

焦った美保さんはリタイア後の生活レベルをどのようにするか考える事にしました。

リタイア後の生活レベルを考える

現在の美保さんの支出のなかで大きな割合を占めているのは、衣料・美容代と車の維持費、そして保険料です。

美保さんは今でも服が好きでお気に入りのセレクトショップで服を購入することが多く、その費用がかかっているほか、毎月ネイルサロンやエステにも通っています。化粧品も好きなブランドのものを長年愛用している状況。今後はそれらの費用を削減することで、生活費を下げることができるでしょう。もちろん保険の見直しも必要です。

また、車は現在親の介護で必要なため保有していることもあり、親が亡くなったあとには車を持たない生活でもいいかと思っています。

美保さん自身、今は余裕のある生活を送っているという自覚があるため、これからの生活レベルを徐々に落としていくつもりです。