配偶者の税額軽減の要件と税務署提出時の必要資料
配偶者の税額軽減の3つの要件
相続税の配偶者の税額軽減を適用するためには、次の3つの要件を満たさなければなりません。
戸籍上の配偶者であること
相続税の申告期限までに遺産分割が完了していること
相続税の申告書を税務署に提出すること
■戸籍上の配偶者であること
戸籍上の配偶者であれば、婚姻期間の長さは問われません。婚姻期間が30年でも1年でも配偶者の税額軽減が適用できます。籍を入れていない、いわゆる内縁関係では適用できません。
■相続税の申告期限までに遺産分割が完了していること
配偶者の税額軽減の額は、配偶者が実際に受け取った遺産の額に基づいて計算します。そのため、相続税の申告期限(原則として被相続人の死後10か月以内)までに遺産分割が完了していなければなりません。ただし相続税の申告期限までに分割が間に合わない場合でも税務署にその旨を申請すれば適用が可能となります。詳しくは第四章を確認してください。
■相続税の申告書を税務署に提出すること
配偶者の税額軽減を適用した結果、相続税の税額が0になった場合でも、相続税の申告書は提出しなければなりません。申告書が提出されていなければ、配偶者の税額軽減で税額が0になったのか、単に申告が漏れているだけなのか、税務署では把握できないからです。
税務署提出時の必要資料
配偶者の税額軽減を適用するときは、相続税の申告書の第5表「配偶者の税額軽減額の計算書」に必要事項を記載します。
相続税の申告書は、遺産分割の内容が分かるように次の書類を添付して、被相続人の住所を管轄する税務署に提出します。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(被相続人が亡くなってから10日を経過した日以後のもの)
遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
遺産分割協議書の写しを添付するときは、相続人全員の印鑑証明書も添付
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相続税の申告期限までに遺産分割できていない…どうする?
相続税の配偶者の税額軽減を適用するためには、遺産分割を行ってから相続税の申告書を税務署に提出することが原則です。しかし、実際には、相続税の申告期限である10か月以内に遺産分割ができない場合もあります。ここからは相続税の申告期限までに遺産分割が間に合わなかった場合の対処法を紹介します。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して一度申告・納税する
相続税の申告期限までに遺産分割ができない場合でも、申告期限を延長することはできません。申告期限までに、法定相続分で遺産を分割したと仮定して相続税を計算し、申告・納税します。このとき、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。この時点では、配偶者の税額軽減は適用できません。
3年以内に遺産分割ができれば配偶者の税額軽減が適用できる
申告期限から3年以内に遺産分割ができれば、配偶者の税額軽減が適用できるようになります。配偶者の税額軽減を適用するためには、先に提出した申告書を訂正する手続きをとります。これを、更正の請求といいます。その結果、納めすぎた税金は返してもらえます。
3年を経過しても遺産分割協議がまとまらない場合の対処法
次のような場合は、申告期限から3年を経過しても遺産分割ができないことがあります。
遺産分割の話し合いがまとまらず、訴訟が起こされた場合。または、和解、調停、審判が申し立てられた場合。
遺言で一定期間遺産分割が禁止されている場合。
このような場合は、申告期限から3年を経過した日の翌日から2ヵ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を税務署に提出して、承認を受けなければなりません。申請書には、遺産が分割できない事由を記載し、訴状や遺言書など遺産分割できないことを証明する書類を添付します。
訴訟の判決が確定したり、遺産分割が禁止されている期間が過ぎたりなど、遺産分割できない事由が解消した場合は、その日の翌日から4ヵ月以内に遺産分割を行うことで、配偶者の税額軽減が適用できるようになります。
二次相続も含めて配偶者の税額軽減の適用を考えるときは、相続に関する知識だけでなく、あらゆる場合を想定したノウハウが必要になります。相続税の実務に詳しい税理士に相談してみるのもよいでしょう。