今年11月、「ヴ―ヴ・クリコ」から新ヴィンテージの『ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015』が登場。7月末にセラーマスター(最高醸造責任者)のディディエ・マリオッティ氏が来日し、お披露目会が行われた。「ガーデン・ガストロノミー」と銘打ったテーブルで魅せた素晴らしきマリアージュと『ヴ―ヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ2015』の奥深さを紹介する。
洗練されつつ、華やかな味わいで熱狂的ファンを持つシャンパーニュが1772年創業の老舗メゾン「ヴ―ヴ・クリコ」だ。2代目当主の妻マダム・クリコことバルブ=ニコル・ポンサルダンが夫亡き後、ロシア宮廷に自社のシャンパーニュを売り込み、メゾンを大きく発展させたのは有名な話で、マダム・クリコは先見の明があった人物として知られる。ロゼの色付けのために、まだエルダーベリーをベースにした調合液が使われていた時代、赤ワインをブレンドするという当時としては画期的な手法をいち早く取り入れたのもマダム・クリコだった。
『ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015』にも、マダム・クリコの精神が今も生かされている。ブレンド用の赤ワインには、マダム・クリコが最も愛したブージー村のピノ・ノワールが使われているのだ。ブージー村は‟グラン・クリュ”の村で、最高品質のピノ・ノワールを産出することで知られる。また、マダム・クリコの別荘があったのもこの村だった。
セラーマスターのディディエ・マリオッティ氏はこう語る。
「マダム・クリコは『私のロゼは、最初に目でテイスティングするのよ』といつも言っていたそうです。このグラスを見てください。淡い薔薇色がとても美しいでしょう? 使用しているのは‟クロ・コラン”
という特別な区画のブドウですが、私たちはこれをコトー・シャンプノワーズのような赤ワインとして醸造するのではありません。あくまでも、ブレンドした時にどのような魅力的な香りと味わいに仕上がるのかを考慮し、‟ロゼ・シャンパーニュのための赤ワイン”を造っているのです」
その言葉通り『ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015』はチェリーやスパイスの香りがチャーミングで、味わいには赤ワイン由来のしなやかなタンニンが感じられる。美食のための1本と言っても過言ではないだろう。
この7月に行われた「ガーデン・ガストロノミー」は、『ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015』がそれを証明した会でもあった。これは、東京・外苑前のイノベーティブレストラン「JULIA」のnaoシェフの協力のもと、和歌山で圧倒的人気を誇る「villa aida」の小林寛治シェフの料理と『ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015』とのマリアージュを楽しむという特別なもの。『ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015』にはメインの「Eggplant/Okura/Lobster」を合わせたが、ロブスターの甘味とリコッタチーズのコク、スパイスやハーブのニュアンスをロゼが包み、味わいの多層的ハーモニーが楽しめるマリアージュとなっていた。
小林シェフはこう語る。
「太陽のようなイメージの『ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015』は、夏野菜との相性が非常にいいと感じました。ですが、それだけだとシャンパーニュの味を膨らませるには足りない。そこで、ロブスターの旨味やリコッタチーズのクリーミーな味の組み合わせで、奥行きのある味わいにしました」
また、印象的だったのが、自家製パンとともに提供されたバター代わりのクリームだ。タイのトムヤムクンのような味わいが感じられ、これがロゼ・シャンパーニュとよく合うのだ。クリームにレモングラスやガランガル、コブミカンの葉と皮、魚醤やライム果汁を合わせ、エスニックな味わいに仕立てている。小林シェフは、料理に奥行きを持たせるためスパイスをよく使用するというが、その理由が素直に理解できる一品だった。
『ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム ロゼ 2015』の魅力は、スパイスを使用したエスニックや肉料理などの個性的な一皿に、華やかに寄り添ってくれるところにある。ガストロノミックなシーンにこそ、ふさわしいシャンパーニュだ。
text by Kimiko ANZAI
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