DINKs夫婦の陥りがちな家計の落とし穴とリスク

DINKsは、それぞれに収入があり自立していることから、お互いのお財布事情に無関心・無頓着で、それぞれが自由に使っているという傾向があるようです。それによって、お金を使いすぎていることも少なくありません。

もちろん、夫婦ともに将来のことが気にならない訳ではないのでしょうが、専業主婦家庭や子育て家庭に比べ、お金の相談をするきっかけが少ないため、そのままやり過ごしている傾向があるようです。相手の給与やボーナス、その使い道、毎月の貯蓄はいくらしているのか、そもそも貯蓄はあるのか、など結婚して一度も聞いたことがないという話も珍しくありません。

お互いが元気で働いている間はそれでも良いですが、老後の生活は基本的に年金だけになってしまいます。DINKsの場合、それぞれが厚生年金に加入している場合が多く、夫婦2人でもらう年金は平均より多く月30万円受給できる夫婦もいるでしょう。

一方、専業主婦家庭の年金は月23万円ほどですから、老後もDINKsの方が豊かであることが分かります。もちろん、子育て家庭で共働きというケースも、DINKsと同じ30万円が目安になるわけですが、実は、DINKsと子のある夫婦には大きな違いがあります。それは、子育て夫婦は、養育費や教育費を支払いながら現役時代を過ごしているという点です。つまり、子どものいる夫婦は、子育てが終わると養育費がかからなくなるため、夫婦だけになった際に自然と生活費がサイズダウンしていくのです。

ここに、DINKs の大きな落とし穴があります。DINKsは、基本的には生活スタイルが変わらないため、サイズダウンする機会がないまま年金生活を迎えます。つまりDINKsは年金生活者になると、急に生活が苦しくなったと感じやすいのです。

また、高齢になってくると病気のリスクや、認知症などで介護が必要になることもあるでしょう。DINKsは、いざという時に頼りにできる子どもがいないため、老々介護となる可能性も気になるところです。

先々の相続トラブルについても知っておきたいところです。相続と言えば、親亡き後に子ども同士での財産争いを想像する人が多いと思いますが、DINKsも注意が必要です。

民法では、法定相続人が定められており、子どもがいない時の法定相続人は、配偶者以外に、第1順位:親、第2順位:兄弟姉妹となります。一般に、第1順位となる親は他界していることが多いため、配偶者と財産を分けるのは、第2順位となる兄弟姉妹です。もしもの時は全て配偶者に財産を渡したいと考えていても、兄弟姉妹が相続放棄などで財産を受け取らなくて良いと言ってくれなければ、配偶者に全ての財産を残すことができません。

たとえ配偶者の兄弟姉妹と仲が良くても、お金のことを深く相談することはあまりないため、遺産分割においても本音が言えない場合や、思いがけず兄弟姉妹に財産の要求をされ揉めてしまうことも考えられるため注意が必要です。

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老後資金はどう蓄える?DINKs夫婦が考えるべきマネープランの立て方


海辺を歩く夫婦の後ろ姿
【画像出典元】「stock.adobe.com/Day Of Victory Stu.」

それでは、DINKsが、将来にわたって幸せに暮らしていくにはどうしたらよいでしょうか。まずは、夫婦でお金にまつわる情報共有をしながらマネープランを立てることが必要です。隠しているわけではなくても、自分が何にお金を使っているかは、お互い言いづらいものです。特に趣味や被服費、美容費、交際費といったものは、使いすぎと言われるかも…なんて考えてしまいがちです。

もし、すべてを共有することが難しい場合は、お小遣い以外の生活費を一緒に書き出してみるところから始めるのも良いでしょう。そして、車の買い換え、マイホーム購入といった夫婦のライフイベントや、老後に向けた貯蓄目標額を立て、お互いが、最低いくらずつ貯蓄していくのかを決めます。

特に、老後資金については目標額を決める際に頭を悩ませると思います。仮に、老後は月50万円使いたいと考えていて、年金額が30万円もらえそうなら、不足額は20万円ということになります。それを夫婦で一緒に準備していこう!と決めていくのです。

年金が支給される65歳から30年間を「老後」と考えると、単純に7200万円(20万円×12月×30年)必要です。お互いの退職金が1500万円ずつあるとするなら、残り4200万円を65歳までに貯めなければなりません。

たとえば、DINKs夫婦が40歳なら、65歳まで25年あります。60歳からは収入減となるケースが多いため、仮に20年で貯めるとすると、年間210万円(4200万円÷20年)ずつの貯蓄が必要です。給与からお互い毎月5万円貯めると年間120万円が貯められ、後は、ボーナスから45万円ずつ貯金に回せば、年間合計210万円の目標が達成できます。実際は、夫婦の収入バランスに合わせて配分を検討することになると思いますが、考え方として参考にしてください。

合わせて、iDeCoやNISAを活用した資産運用も検討することをお勧めします。たとえば、月の貯蓄5万円のうち2万円はiDeCoで、3万円はNISAで積み立てる。そして、ボーナス分は貯金に、といった感じです。iDeCoやNISAは節税をしながら資産形成ができるので、ぜひ取り入れましょう。

なお、65歳から30年間、毎月20万円不足する前提で書きましたが、実際は人生の後半になると、そんなに趣味や旅行の費用は使わないことが考えられますから、実際は年金で収まる生活なのかもしれません。

一方で、病気や介護の費用、老人ホームなどの費用も考えなければならないため、それも鑑みると、年間210万円は現実的な貯蓄目標額と考えることもできます。実際に試算する時は、自分の年金額を知る必要があります。日本年金機構のウェブサイト「ねんきんネット」でシミュレーションしてみましょう。

日本年金機構 ねんきんネット

次に、病気や介護となった時のお金以外での備えです。頼りにできる人がいない場合は、どうしたら良いでしょうか。事前の対策としていくつかありますが、一例として、お金の出し入れや支払いの管理などを依頼する「財産管理委任契約」が挙げられます。これは弁護士や司法書士が担いますが、病気や介護に限らず、お金の管理に不安を感じるようになった時に任せることができます。

また、もし自分の判断能力が無くなったときは、成年後見制度を利用することになります。これは、周りの人や自治体が家庭裁判所に申し出をして、弁護士など専門家や親族に財産の管理や身上保護を任せる契約です。成年後見人は家庭裁判所が決めるため、基本的に指定することはできません。自分がお願いしたい人がいるときは、任意後見制度で事前に任意後見人を決めておいて、いざという時に財産の管理をしてもらうことができます。

また、最近知られるようになってきた家族信託(民事信託)も選択肢です。甥や姪などの親族、または自分が信頼できる親しい人に財産管理をお願いします。長期入院や施設への入居が必要になった時には、持ち家を処分したお金で支払ってもらうといった財産の使い道について契約を結ぶというものです。

相続トラブルを回避したいなら、遺言書の作成を検討しましょう。遺言書があれば、配偶者に全てを渡すことができます。なぜなら、遺言がある場合は、それが優先される(兄弟姉妹に遺留分はない)ためです。また、家族信託の契約内容に、自分が亡くなった後の財産は、配偶者のために使ってもらうことを契約に盛り込めば、遺言の役割を持たせることもできます。

このように、いくつかの方法がありますので、自分たち夫婦に合った方法は何かを考えながら、適切な時期に必要な準備をしていきましょう。