ワコールのコンディショニングウェアブランド「CW-X」からこの秋、NEWウォーキングタイツが登場します。その開発への想いと商品の魅力をご紹介します。


語り/西郷愛美(デザイナー)、堀 理恵(パタンナー)

ワコール人間科学研究開発センターの豊富な知見と独自のテーピング原理を応用して開発された、ワコールのコンディショニングウェアブランド「CW-X」。1991年に発売した画期的なスポーツタイツで注目を浴びました。

身にまとうテーピングともいえる「CW-X」は、動きの可能性を最大化するウェアとして、ハイパフォーマンスを追求するアスリートからも絶大なる信頼を得ています。そのCW-Xにこの秋、NEWウォーキングタイツが登場します。その開発への想いと商品の魅力をご紹介します。

ひざに不安を抱えるシニア層へ
はきやすいウォーキングタイツを

――なぜ新たなウォーキングタイツを開発しようと考えられたのでしょうか。

デザイナー西郷愛美(左)とパタンナー堀 理恵(右)

堀 ワコール人間科学研究開発センター研究員のご家族がスキー中に脚をケガした際、テーピングで運動を続けられた経験から、「もっと簡単に、誰でもテーピングができれば」という発想で、テーピングの原理を組み込んでつくられたのが既存タイツのスタートでした。

西郷 テーピング原理を組み込んでいることで、既存タイツはシニア層にとってははき上げにくかったり、きつかったり、硬く感じられたり、といった着脱の困難がありました。そこで、アクティブシニア層に向けて、健康維持を目的とした軽運動や旅行といった日常にマッチするウォーキングタイツを開発しようという話が持ち上がりました。

堀 ジム通いをされている60~70代のご夫婦を対象に、からだの不調についてアンケートを実施したところ、加齢による体型変化に関する悩みが多く見られました。中でも、ひざに不安を抱えている方が多く、ポイント的にサポートできないか?と考えました。

――既存タイツとの大きな違いは何ですか?

堀 おなかまわりをゆったりとした設計にして、着脱しやすい丈にしている点です。それらを実現したことで、以前はCW-Xをはいていたけれど体型が変わって離脱してしまった人や、「タイツ=苦しい」というイメージから躊躇している方にチャレンジしてもらえる商品になったと思います。

西郷 コンセプトは「はいて、歩いて、健康に」です。スムーズな着脱はもちろん、ひざと股関節のサポートもしっかりできるようにデザインしています。はくだけでひざへの負担を減らせるような商品になっています。

堀 さらに、サポートラインを縫製ではなく接着シートにすることで、肌あたりのストレスも軽減されて、より着用しやすい商品になっています。

ひざ部分の試作品の数々。繰り返し試作と試着を重ねた変遷がうかがえる

堀 1年前から調査をスタートし、「ひざサポーターをもっと気軽につけられたらいいのに」というお客様の声をヒントに、サポーターとタイツを一体化する構想があがりました。当初は、ひざのまわりを一周ぐるっとサポーターのように巻いてみたのですが(上の写真左)、食い込んだり、肉が盛り上がるなどフィット感が思うようにいかず…隙間をあけてパワーを逃がし、ひざを囲むような形に変更していきました(上の写真中央と右)。社員のご家族にもフィッティングに協力してもらいました。

幅広い体型をサポートする
細やかなデザイン設計

――サポート力はもちろん、すっきりした見た目でも重宝しそうです。

西郷 ひざ下6~7分丈という長さでふくらはぎを隠して、脚が少し細く見える効果を狙っています。しっかりサポートしながら着脱しやすいベストな長さの設定には苦労しました。

堀 男性用と女性用で異なるウエスト仕様にしています。メンズのウエスト部分は安定感を重視して太めのゴムを配し、ウィメンズはワサ(折り返し)始末でフラットなウエストを採用しています。ここでも着脱のラクさを重視して、ウエストまわりはサポートなしに。少ない力で引っ張り上げられるのが特徴です。

写真上の男性用ウエストはゴムで、女性用ウエストは共布ですっきりしたデザインに

西郷 表からラインが見えないよう意識して、見た目のシンプルさにもこだわりました。
チュニックと合わせるなど一枚で使えるアウターいらずなデザインなので、レギンス代わりとしても使ってほしいですね。

――そのほか、デザインやパターン面で注力したことはありますか?

西郷 特にシニア層は体型差が大きいので、メンズはM~LB、ウィメンズはM~LLで展開しました。ひざの位置や大きさも個人差があるものですが、その問題はタテヨコ斜めによく伸びる最新素材で解決しています。サポートラインがシンプルになったがゆえにひざの位置がわかりにくいのでは? という懸念に対しては、わかりやすい印のようなものをつけようかと悩みました。

堀 それでワコールのOBの方々に試着をお願いして、前向きな愛あるコメントをたくさん頂いたなかから、ひざ頭がピタッとはまる感じ、という感想に手応えを感じたため、印はつけずにパッケージにしっかりとサポートラインを明記(下の写真)して補うことにしました。

堀 実際の着用テストでは「上にズボンをはいていれば大丈夫だが、一枚だとウエストがゆるくてズレてくる」といったお声があったので、ウエストとひざのバランスを見直す修正を、本番パターンのギリギリまで繰り返しました。ストレッチ素材のパワーをパターンに落とし込んでいく作業は大変ですが、面白く、パタンナーの醍醐味でもあると思います。

西郷 フィッティングをお願いした社員の親世代から正直な感想をもらえたことも、本当にありがたかったです。

接ぎ線を外側にすることが何より大変だった、と語る西郷

西郷 本商品は、股関節にもサポートラインを施していることで、ひざの安定性がより高くなっています。ですが、股関節のラインとひざがつながっていると引き上げにくくなってしまうため、あえて股関節とひざのサポートラインを分離させた仕様にし、引き上げやすくなるように工夫しています。

堀 ひざの治療に定評のある病院で知見をいただき、シニアの多くはひざの内側が腫れやすいということがわかったので、ひざの内側の腫れにステッチが触れないように、当初内股にあった接ぎ線(ステッチ)を外側に変更しました。ちょうど最終の試作サンプル完成直前のタイミングでのパターン大改造でした。

西郷 それによって、ひざに不安を抱えている方にもお使いいただける可能性が広がったアイテムになりました。ウォーキングを楽しみたい方に届けたい自信作です!





西郷愛美

商品本部 ウエルネス営業部 商品企画課
2017年入社。レシアージュのパタンナーを経て、ウイングキャンペーンのデザインを担当。2022年7月より「CW-X」のデザインを担当。


堀 理恵

商品本部 ウエルネス営業部 商品企画課
1998年入社。ワコールブランドのボトムパターン、ワコールサイズオーダーなどを経て、2018年からウエルネス商品企画課で、CW-Xタイツのパターンを担当


取材・文/椿屋
撮影/合田慎二
デザイン/WATARIGRAPHIC

関連サイト

CW-X Walk | ワコールウェブストア