通貨が安定しないときに注目される投資先が、金や暗号資産(仮想通貨)です。今こうした商品に投資することは、はたして得策なのでしょうか? 本稿では、金融業界出身の肉乃小路ニクヨ氏による著書『いま必要なお金のお作法 幸せを呼ぶ40のマネープラン』(KADOKAWA)から一部抜粋し、それぞれの特徴とリスクについて詳しく解説します。

金は円換算時の為替や、金価格をふまえて割安な時に少しだけ

金(きん)価格が上昇し続けているので、円安や通貨変動に対する不信もあって、金に注目する動きもあります。これは金の資源量が限られていて、価値が維持されているから安全資産だという考えに基づいています。

また基軸通貨である米ドルに不信を持った新興国の中央銀行が、昔の金本位制の時代のように自分たちの通貨の価値を担保するために金を買い集めているという情報もあります。

ただ、冷静に考えていただきたいのは、金は世界中どこでも取引できる商品だということです。また、円換算をする際には為替も大いに関連しています。

円安から円高になると金の価格自体はドル建てで維持されていても、円換算した場合に下がる可能性というのも大いにあります。

そもそもダイナミックな経済活動をしていくために、金本位制に限界を感じたからこそ、第二次世界大戦後の世界貿易を安定させるためにつくられたブレトンウッズ体制(各国通貨と米ドルの交換比率を固定し、ドルだけが金と交換比率を固定するという、ドルを間に挟んだ金本位制)が1973年に廃止されました。

そうするとこの先、各国の中央銀行などがやっぱり金を買い集めるのを止める可能性だってあります。

また、通貨のデジタル化が進むと、もっと変わるかもしれません。そういった意味では、ここ最近、金は上昇を続けていますが、下落リスクもある投資だと私は考えています。

ただ、資産のリスク分散をする上での分散先として、以前よりは重要な投資先になってきているのは事実です。なので、為替や金価格を考えた上で、割安だと思った時に少しだけ買って持っておくというのはアリだと思います。価格の推移などは通常のニュースなどでは追いにくいので、自分でしっかりと追跡できる人に向いた投資先です。

買いやすいのは有名な貴金属店で金貨や金地金(きんじがね)(いわゆる延べ棒)を買うことです。

実物を持たなくても金価格に連動したETF(上場投資信託)などの金融商品もあるので、そういったものを少額持つというのでも良いかもしれません。

ただし利益が出た場合の税金の支払方法が購入方法や保有年数で変わるのでご注意ください。また、実物を持った場合には盗難リスク等もあることをしっかり考慮してください。

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暗号資産には「投資のメリット」がほとんどないといえるワケ

通貨が安定しない時の投資先としてもう一つ言われているのが、暗号資産(仮想通貨)です。暗号資産はブロックチェーンと呼ばれる、ネット上にみんなで記録を保管する技術を使って、価値を担保しながら運用をするネット上の資産です。

新たな暗号資産を流通させるには、マイニング(採掘)という作業が必要で、金などの実物資産のようにマイニングには上限があり、金などと同様に価値が保全されるのではないかと言われています。

ただ、こちらに関しては正直お勧めできません。

そもそも市場が大きくないので、ボラティリティと呼ばれる価格変動の幅が大きいことと、利益が出た場合も日本では雑所得扱いで、しっかり税金を持っていかれる仕組みになっているからです。リスクが大きい割に税金を大きく引かれるとリターンも少ないです。

となると、投資のメリットをほとんど感じられません。

この先、流通量が増えて市場が安定するという可能性や税制が変わる可能性もないことはないので、様子見程度の金額であれば、やってみても良いと思います。

アメリカでは暗号資産(仮想通貨)を用いた投資信託やETF(上場投資信託)が承認され、暗号資産(仮想通貨)が値上がり傾向という話もありますが、それを日本人が買うのは難しいようです。

またこの先、日本でも投資信託やETFで承認されたら、他の金融分離課税と同様の20.315%の税率になる可能性がありますが、市場が大きくなって、安定的な推移をするようになるまでは難しいと思われます。

肉乃小路ニクヨ

※本記事は肉乃小路ニクヨ氏による著書『いま必要なお金のお作法 幸せを呼ぶ40のマネープラン』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。