ヨーロッパでいわれている差し引きプラスの考え方とは?
住宅のエネルギー収支を0(=差し引き0)にするZEH住宅が話題になっている中、ヨーロッパ(ドイツ)で現在提唱されているのはエネルギー収支がプラス(=差し引きプラス)になる「プラスエネルギーハウス」と呼ばれる住宅。エネルギー収支をプラスにするにはどうすればよいのでしょうか。日本での考え方もあわせてお聞きしました。
差し引きプラスとは?
ーヨーロッパでは差し引きプラスの考え方が広まっているとお聞きしました。どのようにエネルギー収支をプラスにしていくのでしょうか?
住宅の壁だけでなく、あらゆる場所に太陽光パネルを設置してエネルギー収支をプラスにしています。フランクフルト郊外にあるプラスエネルギーハウスの住宅展示場へ行った際、駐車場やガレージの屋根、住宅の外壁にも太陽光パネルを設置しており、大変驚きました。エネルギー収支をプラスにするため、幅広く対策が練られていると感じました。
そのほか住宅内の壁に使用する断熱材は30センチのグラスウールと呼ばれるものを使用しています。日本は在来木造住宅のため20~30センチの断熱材を入れるのが厳しい一方、ドイツは2×4(ツーバイフォー)や石積みの家が多いため、分厚い断熱材を取り入れやすいのです。
なぜ差し引きプラスの考え方は日本に根付いていないの?
ー日本にまだ差し引きプラスの考え方が根付いていないのはなぜですか?
一つの理由として、日本はヨーロッパと比べてサッシメーカーが少ないなど建材類のコストが高いというのが大きな要因でしょう。
住宅のエネルギーがいちばん逃げていくのは窓からなので、窓の性能を上げることが断熱性能の底上げにつながります。建材のコストが下がれば、断熱性能がアップするようにガラスが4、5枚の複層サッシを入れるなどの工夫を施せるのですが、現状では難しいでしょう。
以上の理由から、差し引きプラスの考え方はまだ根付いていません。そのため、まずは差し引き0にするZEH住宅を普及させることが大切です。
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そもそも日本が断熱性能に遅れを取ったのはなぜ?
ヨーロッパよりも遅れているという日本の断熱性能。なぜ断熱技術が向上しなかったのでしょうか。
「家は寒くて当たり前」の考え方が根付いていた
ーそもそもなぜ日本は断熱性能に後れをとったのでしょうか?
「家のつくりようは夏をもって旨とすべし」「家は寒くて当たり前」と思っている方が多く、あまり必要とされていなかったのかもしれません。
断熱性能に関する研究が始まったのは、「次世代省エネルギー基準」が策定された1999年。北海道ではもっと以前から断熱性能について研究されていましたが、当時の建築学会などで発表しても「断熱性能が必要なのは寒い地域の北海道だけ」と考えている方が多かったそうです。
家は寒いものだと思っていた方が多かったため、断熱性能に対する理解が深まらず、遅れを取ったのではないでしょうか。
ーなるほど。家が寒いのは当たり前だと思っていたのですね…
家の中が寒いのは断熱性能が弱いか暖房機器が弱いかの2択なんですよね。煖房を付けていても寒い場合は、家の断熱性能が悪いと言っていいんです。
家が寒くてクレームをいう人がいない時点で、断熱性能に関する理解が進んでいない証拠。これからは新しい断熱基準がどんどん出てくるので、自分がどんな暮らしをしたいか考えながら断熱性能に関してある程度理解しておくとよいでしょう。