3.看護師が仕事を辞めたい主な理由

日本医療労働組合連合会が2022年に発表した調査報告書によると、看護師の仕事を辞めたい主な理由は以下のとおりです。


日本医療労働組合連合会|2022年 看護職員の労働実態調査「報告書」より作成

理由1:人手不足で仕事がきつい

離職を考える看護師の半数以上が、その理由に「人手不足で仕事がきつい」を挙げています。回答者の年齢を見ると、若年層の割合が高く、年齢を重ねるにつれて下がっていくことがわかります。


日本医療労働組合連合会|2022年 看護職員の労働実態調査「報告書」より作成

また、「人手不足で仕事がきつい」と回答した看護師を勤務形態別に見ると、日勤のみの場合は44.8%なのに対し、3交替制と2交替制の場合は60%以上となっています。

理由2:賃金が安い

退職を考える看護師のうち42.6%が賃金の安さを理由に挙げています。厚生労働省が発表している年収データを見ると、看護師全体の平均年収は全産業の平均年収と比べて、約40万円低いことがわかります。

厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査より作成

 

看護師

全産業平均

全体

468万8,100円

508万1,600円

女性

467万5,000円

417万500円

男性

480万5,800円

553万7,700円

 

女性看護師の平均年収は全産業平均と比べて高いものの、夜勤や命を預かる業務の責任の重さに対し「賃金が見合わない」と感じるケースがあると考えられます。また、男性看護師は全産業平均よりも低い年収であるため、賃金面での不満が高まっている可能性があります。

理由3:休暇が取りにくい

一般的に看護師の勤務形態はシフト制です。限られた人員でシフトを組むため、欠勤時には代理を探す必要があります。また、連休を取るとほかの人に負担がかかるなど、休みを取りにくい場合があります。

また、職場によっては、年末年始やゴールデンウィークといった休暇シーズンに休みが取りにくいこともあります。とくに子育て世代の看護師にとって、保育園が休みの日や、学校行事の日に子どもと過ごせないことは、ストレスの要因となっているようです。

(広告の後にも続きます)

4.看護師の離職率を改善した成功事例

働き方や人間関係による離職問題は、業務の見直しや相談環境を設けることで改善が期待できます。ここからは、実際に離職率が改善した事例を3つ紹介していきます。

(1)マスクの色分けによって残業時間が減少

業務量を減らさずに残業時間のみを削減した事例として、日勤と夜勤でマスクの色を変えた取り組みがあります。マスクの色を変えて職員の勤務終了時刻を可視化することで、医師が指示を出す看護師が明確になり、職員が時間をより意識するようになるといった効果がみられました。

その結果、マスク2色制の導入の前後を比べると、残業時間が毎月1割以上減少しました(出典:産経新聞|マスク色分けで残業時間減少 一目で分かる看護師の働き方改革)。

(2)評価制度の見直しで離職率が低下

評価制度を見直した事例では、現場の不公平感を減らすことに成功しています。

働き方改革の恩恵を受けた職員がいる一方、ほかの職員に負担が集中するケースは少なくありません。そこで「評価項目の達成度に応じて賞与や昇給額が上がる評価制度」と「やむを得ない理由で勤務が制限された場合でも一定以上の待遇を保証する制度」を同時に設け、全職員のモチベーション向上を図りました。

その結果、制度導入前の離職率が15〜20%だったのに対し、導入後は5〜9%へ低下させることに成功しています(出典:日経メディカル|離職率が半減! 中小病院の人事考課の工夫とは)。

(3)情報の周知徹底で年休の取得率が向上

有休の取得率を向上させることで、職員の離職率が改善した事例もあります。

冊子や院内新聞を発行して病院の労働条件を周知し、基準が曖昧だった有休申請方法を見直すことで、職員の有休取得率が向上しました。これにより、離職率の改善にもつながっています(出典:ふくおか地域医療支援サイト|勤務環境改善取組事例:医療法人社団敬信会 大法山病院)。