2024年3月、日銀の異次元緩和が終了し17年ぶりに利上げが実施されました。そして7月の追加利上げ。そうなると、多くの不動産投資家が気になるのがアパートローンへの影響です。今後の不動産投資にはどのような影響がおよぶのでしょうか? また、もし今後も金利が上昇し続けた場合、リスクを回避するにはどのような策があるのでしょうか? 長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。
今後、金利が上昇し続けたら…不動産投資家の不安
日銀は、2024年7月に開かれた金融政策決定会合において、政策金利を0.25%程度に引き上げる追加利上げを決定しました。無担保コール翌日物の誘導目標を0.15%上げ、0.25%にするという内容です。これによって影響を受けるのは、変動金利型の住宅ローン。
政策金利の利上げによって各金融機関の短期プライムレートが引き上げられ、住宅ローンの適用金利も上昇していくのが通常です。すでに変動金利を引き上げた金融機関もあります。さらに利上げが繰り返されれば、毎月の返済額が増えることで返済に行き詰まり、デフォルトに陥る家庭も増えるかもしれません。
日銀の利上げによって影響を受けるのは、住宅ローンだけではありません。不動産投資家が利用する「アパートローン」の変動金利にも影響がおよびます。今後のアパート経営を不安に感じている不動産投資家は多いでしょう。もし今後、金利が上昇し続けたら、アパート経営にはどのようなリスクが待ち受けているでしょうか。
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近年の不動産投資を支えてきた低金利政策
不動産投資で安定して利益を上げるための条件に、「イールドギャップ」と「レバレッジ」があります。イールドギャップとは、投資利回りとローン金利との差のことです。たとえば年間の家賃収入が800万円、物件価格が1億円だったとします。この場合、年間の投資利回りは8%です。この物件を金融機期間から融資を受けて購入、その金利が2%だった場合、投資利回り8%との差は6%という計算になります。
この6%がイールドギャップです。購入した物件価格が大きくなるほど(あるいは増えるほど)、6%に相当する利益の額も大きくなります。ところが自己資金には限りがあるため、高額な物件を購入することができません。そのため、金融機関からの融資を受けて、自己資金よりも大きな金額を投資することになります。
この「融資を受けて自己資金よりも大きな金額を投資すること」がレバレッジです。融資を受けてレバレッジを効かせ、イールドギャップによって利益を得る。これが不動産投資の基本的な考え方です。
近年、日本では低金利政策を継続してきたため、このイールドギャップを確保しやすい状況が生まれていました。このことが不動産投資ブームの一因となったのはご存じの方も多いでしょう。しかし、金利が上昇してしまうとイールドギャップが小さくなってしまいます。実際にはイールドギャップのなかから元本の返済や建物修繕費、税金、保険などの経費がかかるため、手残りはさらに小さくなります。
特に自己資金を小さく設定し、フルローンで融資を受けた場合などは、金利の上昇によってキャッシュフローが破綻してしまうかもしれません。