「社会にポジティブな変化をもたらす女性たちを支援」。クレ・ド・ポー ボーテのチーフ・ブランド・オフィサー 橋本美月が語る「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」の意義 Vol.4

クレ・ド・ポー ボーテの「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」は、特にSTEM/STEAM領域での女性の教育に貢献した女性たちを毎年表彰し、寄付金を通してエンパワーメントへの支援を行うという社会貢献活動だ。チーフ・ブランド・オフィサーの橋本美月にこの賞の意義や込めた思いを聞いた。(聞き手:マリ・クレールデジタル編集長 宮智 泉)

──「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」が誕生したきっかけを教えてください。

クレ・ド・ポー ボーテには、フランス語で「肌の美しさへの鍵」という意味があります。私たちは化粧品ブランドとして肌を美しくすることは当然のことながら、それを超えることができないかと考えています。その輝いた肌から生まれる自信でお客さま自身が自己実現をしていく。そして外見のみならず、内面からも輝く存在として、社会の中でより一層自信を持って活躍できる。そんな社会になっていくよう発信できればというのが、私たちの社会貢献活動への思いです。

具体的には2つの活動があり、ひとつは「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」。そしてもうひとつがユニセフとのパートナーシップです。ユニセフに毎年寄付金という形で、教育プログラムやカリキュラムの面から少女の※STEM教育に貢献している活動です。
※STEM教育:Science(科学)+Technology(技術)+Engineering(工学)+Mathematics(数学)を重視する教育のこと

「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」は当初、教育に貢献した女性を表彰・サポートするという形でスタートしました。最初の受賞者がマズーン・メレハンさんで、シリアからの難民です。彼女は、難民という状況にありながらも、教育は大事であり、難民キャンプでも子どもたちが勉強を続けられるよう活動を続けている女性で、ユニセフの親善大使になりました。

現在本アワードでは、いろいろなソリューションのデジタル化によって、21世紀型の知識やスキルを身につけてもらうことが非常に重要と考えるようになり、特にSTEAM(STEM教育にART芸術を加えたSTEAM教育)という領域で、地域社会に貢献して成果を上げている人を選び、アワードと寄付金を活用して、STEM/STEAM教育のさらなる活性化に役立てていただくという形になっております。

──これまで受賞された女性たちは多彩で、強い使命感を持って活動されています。

第1回のマズーン・メレハンさんは受賞した当時、19歳でした。非常にパワフルな女性で、彼女のインタビュー動画を作りましたが、語っている内容から強い意志が感じられました。知識を積み重ねることが自立した生き方を促し、そのために教育は不可欠だということを強く信じていることが伝わってきます。知識がなければ想像の翼も広げられないと、ご自身の経験をもとに若いうちから深く考えて活動しているのはすばらしいと思います。

マズーンさんの動画を見返すことがありますが、彼女のことばには力があり、見るたびに感動します。

──「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」の歴代受賞者は、その後どのように活動されているのでしょうか。

第2回の受賞者のビニタ・シュレスタさんとプラティクシャ・パンディさんはネパールでSTEM教育を、主に女の子たちに行っているNGO団体の方です。「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」の寄付金を使って、ネパールの遠隔地までその活動を広げることができたそうです。また、第4回受賞者でインドネシアのアマンダ・シマンジャンタックさんや、第5回受賞者でベトナムのダオ ティ ホン クエンさんも、寄付金が自身の団体の活動の活発化につながっており、それぞれに効果を生み出しています。

──10月2日にはアメリカのマリ・クレール誌と共催し、ニューヨークで国際ガールズデーを記念したイベントを実施しました。女性の社会活動家たちが集い、橋本さんも出席されましたが、いかがでしたか。


ニューヨークのイベントでスピーチする橋本美月

2024年の受賞者であるレシュマ・サウジャニさんをはじめ、アメリカの女性たちはみんなパワフル、エネルギーに満ちており、ファッショナブルで、私自身もインスピレーションをもらいました。

レシュマさんのお知り合いで、パネリストのひとりだったトリー・バーチ・ファンデーションのティファニー・ドゥーフーさんが、エピソードを披露してくれました。レシュマさんとある会議に行った時に、女性たちのロールモデルとなっている有名な女性が来ていて、みんなその女性と話すために列を作っていたのに、レシュマさんは彼女の手をつかんで、その女性のところに行ったのだそうです。その時、レシュマさんは「Don’t wait in the line.(列に並んで待つな:やりたいことがあるなら前に出て行けという意味)」と言ったそうです。臆することなく、先陣を切ることの大切さを説くという意味で、パワフルでエネルギーに満ちたお話でした。

このイベントの最中、お互いに自己紹介して、「私は今こんなことをしていて、こんなことをやりたいと考えているんだけれど」と話すと、「それは面白いから今度また会いましょう」といった会話が自然発生的にあちこちで聞かれ、志を持った女性たちがつながっていくことも実感しました。

──このイベントでは、2025年の受賞者に決まった、数学者でジャズピアニストの中島さち子さんも出席されました。日本人として初の受賞者であることへの思いはいかがでしょうか。

期待がとても大きいです。中島さんはSTEMをもう一歩広げてSTEAMというアートの要素を入れる活動をされています。これからAIの時代になっていくことも考えると、クリエイティビティーはさらに重要性を増すので、中島さんの活動はとても意義のあることだと思います。

日本はジェンダーギャップが非常に大きい国で、課題がたくさんあります。STEMの分野で優秀な女子学生がいたとしてもその領域で卒業する方はわずか16%に過ぎません。中島さんは数学者で数学オリンピックにも出場し、音楽家でもある。ご自身が既にロールモデルですので、クレ・ド・ポー ボーテとして中島さんの活動をサポートしていくことで、広く活動を知ってもらえるといいと考えています。

──社会貢献活動のもうひとつの柱、ユニセフの活動も意義深いですね。


photo: Tomoko Hagimoto

私たちは2025年までにユニセフのプログラムを通じて、約570万人の少女たちの教育を支援するという目標を掲げています。ユニセフの協力のもと、私たちの寄付金を通じて実現していくというものです。

今年3月、私たちが寄付をしているバングラデシュに行ってきました。国家レベルで教育カリキュラムを改革するところにも私たちは支援しています。これまでの暗記の教育から実践的な教育へと教育のシステムを変革し、国家をあげて21世紀のグローバル人材を育成する一大プロジェクトです。クレ・ド・ポー ボーテの寄付金が、そのカリキュラムの立ち上げと教科書の制作に使われているということでいくつかの学校を見学しました。教科書もジェンダーバイアスがないものになっていました。女子生徒に将来どんな仕事をしたいかと質問した時に出てきた答えも、遺伝学者や宇宙飛行士などSTEM領域のものも多く含まれていました。これまでの伝統的な職業だけでなく、STEM領域での可能性を感じさせてくれることを口々に語っており、心を打たれました。

「百聞は一見にしかず」ではないですが、実際に現地に足を運んでみて、私たちの活動全体の貢献やインパクトを実感し、それをみんなで共有することができて、本当によかったと思います。

──今後の活動でどんなことを目指していくのでしょうか。

ひとつひとつの事柄は小さいかもしれませんが、波及効果は大きく、地道に、息長く続けていくことに意味があると考えています。また、受賞者たちとお会いして、社会にポジティブな変化をもたらしている女性たちのグローバルなコミュニティーのようなものを作っていければいいと思います。今回はその先駆けとして、ニューヨークでのイベントでかたちにすることができたと思っており、今後も続けていくことで、社会にポジティブな変化をもたらすと期待しています。