1. 介護医療院とは

医療と介護の両方を提供する介護保険施設

介護医療院は長期療養が必要な要介護者に、医療と介護の両方を提供する介護保険施設です。介護職だけでなく、医師や看護師、薬剤師、リハビリ職などが配置されており、入所者は生活の場で医療やリハビリを受けることが可能です。

介護医療院では、長期療養に必要な喀痰(かくたん)吸引や経管栄養などといった医療的ケアだけでなく、看取りやターミナルケアまで提供されます。また、生活施設でもあるため、日常の食事や排泄などの介助、レクリエーションなどもおこないます。なお、介護医療院で受けるサービスには介護保険が適用されます。

tips|介護医療院ができた経緯は?

介護保険施設は従来、介護老人保健施設(老健)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護療養型医療施設(介護療養病床)の3種類でした。このうち、介護療養型医療施設は医療の必要性の低い高齢者が長期的に入所するケースが多く、社会保障費を圧迫することが課題となっていました。そのため、2018年に介護療養型医療施設の後継として介護医療院がスタートし、介護療養型医療施設は2024年3月をもって廃止されました。

介護医療院の入所条件

介護医療院に入所できるのは、要介護1〜5に認定された人のみです。要支援1〜2では利用できません。

要介護認定は原則、介護保険に加入する65歳以上の第1号被保険者を対象としています。ただし、40歳〜64歳の第2号被保険者も、関節リウマチやパーキンソン病などの特定疾患が原因の場合は、要介護認定を受けられます。

要介護度について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>要介護度(要介護レベル)とは?

介護医療院の種類

介護医療院は入所者の病状に応じて、Ⅰ型とⅡ型に大別されます。Ⅰ型は比較的病状が重く、急変のリスクがある入所者のための施設で、病院同様に医師や看護師が配置されています。一方、Ⅱ型では比較的容体が安定した入所者を受け入れており、人員基準は介護老人保健施設と同等以上となっています。

介護医療院の施設数の推移

2018年以降、介護医療院の施設数は増加を続けています。これは介護療養型医療施設から移行する施設が多いためで、2022年10月時点では全国で730施設となっています。


厚生労働省|介護サービス施設・事業所調査より作成

(広告の後にも続きます)

2. 介護医療院と介護・医療施設の違い

高齢者が暮らす施設にはさまざまな種類があるため、どの施設が適しているか慎重に検討する必要があります。ここでは、「介護医療院と老健・特養の違い」と「介護医療院と医療施設の療養病床の違い」に分けて解説します。

介護医療院と老健・特養の違い

現在、介護保険施設は介護医療院、介護老人保健施設(老健)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の3種類となっています。特別養護老人ホームは特養とも略されます。これらは設置の目的が異なるため、利用期間や対象者、提供されるサービスに違いがあります。

 

介護医療院

老健

特別養護老人ホーム

目的

長期療養・生活施設

在宅復帰・在宅支援

生活施設

利用期間

長期

短期

長期

対象者

要介護1〜5

要介護1〜5

要介護3〜5

医療サービス

⚪︎

⚪︎

×

介護サービス

⚪︎

⚪︎

⚪︎

看取り

⚪︎

×

⚪︎

介護医療院と老健の主な違いは、施設の目的と利用期間にあります。老健は病院からの退院後に、リハビリや介護を必要とする高齢者が在宅復帰を目指す施設です。原則3ヶ月の入所期間が設けられており、原則的に看取りには対応していません。一方、介護医療院は生活施設なので、長期の入所を前提としており、看取りやターミナルケアにも対応しています。

介護医療院と特養では、対象者と医療サービスの有無が異なります。特養は、在宅での生活が困難になった要介護3以上の高齢者の生活施設です。生活施設なので終身利用が可能で、看取りにも対応していますが、医療サービスは必要最低限しかありません。一方、介護医療院は医療の必要な要介護1以上の高齢者を対象としており、必要な医療的ケアを提供します。

介護老人保健施設(老健)について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>老健(介護老人保健施設)とは?

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
>特別養護老人ホーム(特養)とは?

介護医療院と療養病床の違い

療養病床とは、病院・診療所で、長期療養を必要とする患者が入院するための病床です。療養病床がある医療施設を「療養病院」「療養型病棟」と呼ぶ場合もあります。

介護保険施設である介護医療院と、医療施設の療養病床とでは入所する人の「医療区分」が異なります。医療区分とは、患者の医療の必要性を3段階で示す基準です。療養病床には原則的に、医療区分3(人工呼吸器を使用している状態など)と医療区分2(筋ジストロフィー、パーキンソン病関連疾患など)の患者が入院します。一方、介護医療院には医療区分1(医療区分3・医療区分2に該当しないケース)の人も入所できます。

 

介護医療院

療養病床

対象者

医療区分1〜3

医療区分2〜3

適用される保険

介護保険

医療保険

提供サービス

医療・介護

医療

なお、療養病床にはかつて、医療療養病床と介護療養病床の2種類がありましたが、介護療養病床は2024年3月で廃止されました。