「AIでなく、人間に評価されたい」という若者も

――どういうことでしょうか。

朝比奈あかりさん 調査では、中途採用でAIツールを使う企業に対して、逆に「応募/入社意欲が下がる」と回答した人にも、その理由を聞いています。そう答えた人は、全体の1割以下ですが、トップの理由は「信頼度が低い」でした。

また、ご指摘のように「(AIではなく)人に評価されたい」という回答も2番目に多かったです。さらに「AIに評価されることは緊張しそう」と人もいました。

――少数派とはいえ、個人的には共感できる回答ですね。

朝比奈あかりさん AIツールには複数のメリットがある一方で、「信頼度への不安」は存在しており、取り扱いには十分な注意が必要だと考えられます。AIツールを扱う際には、使われているデータセットやメカニズムなど、信頼性や透明性が担保されている必要があるでしょう。

また、転職は個人にとって人生の転機ともいえるので、企業が採用の際にどのようなAIツールを使っているのか、知る権利があります。個人、特に若手は「企業が採用活動でAIを使うこと」に対して肯定的な傾向があるため、企業による積極的な情報開示は、企業・個人双方にとってのメリットとなると考えています。

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企業の人事部門の人手不足が進み、AI活用が加速

――なるほど。ところで、転職者の採用活動にAIツール活用する企業が増えた理由は何でしょうか。

朝比奈あかりさん 積極的に活用している企業に理由を聞くと、トップは「業務効率が改善できた」です。企業の人手不足感が高まっているが背景にあり、従業員規模が大きいほど採用者数が増えますから、業務効率化が重要視されています。

多くの企業では、人事部門はいまだにサポート的な立ち位置にとらえられていることが原因で、人員不足や予算不足に陥りがちです。最も時間がかかる作業をAIで自動化できれば、人事の少数精鋭化につながります。

――具体的にはどういう場面で活用するのですか。やはり、書類審査の段階でAIのチェックが入ったり、まさか、最後にAIが面接したりするのでしょうか。

朝比奈あかりさん 活用場面で最も多いのは「適性検査」です。企業はAIを活用して自社にマッチした人材を見極めているようです。採用段階でのAI活用については、さまざまなツールが開発され、自社開発も行われているため一概には言えません。

一般的には自社の雰囲気や、現在求めている人材の要件などをあらかじめAIに学習させておき、求職者が自社にマッチしているか、書類選考や適性検査、面接の結果を総合的に判断するものと思われます。

AIが直接面接するのではなく、現状は、選考におけるサポート的なツールとして利用されているケースが多いと考えます。