ハイリスク商品に手を出してしまった佐藤さんの悲劇

2,000万円とそれまでの利益全額を3倍レバナスに投じた数日後、2,200万円まで資産が急増しました。佐藤さんは、その勢いに笑いが止まりません。

ところが、その後相場は急変します。

日本市場も米国市場も連日下落が続きます。そして、さらに日本の株式市場ではストップ安に、ニューヨーク市場も暴落してしまいました。

証券会社の口座の評価損益欄を見ていると、ピーク時に100万円ほどの利益だった3倍レバナスの評価損益がみるみるうちに激減して行き、ついに赤文字のマイナス700万円になってしまいました。佐藤さんの不安は増し、仕事が手につかない状態が続きました。

そして、最悪の状況を想像し、佐藤さんは思い切って売却を決断します。しかし、既に手遅れでした。

20年間をかけてコツコツと貯めた2,000万円がほんの半年ほどで1,400万円ほどに激減してしまったのです。彼の資産は一瞬で大きな損失に変わり、早期退職の夢は遠のいてしまいました。

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早期退職の夢を脅かすブル・ベアファンドの仕組みとリスク

佐藤さんの物語は、単なる投資の成功と失敗の話ではありません。それは、夢を追い求める中で直面するリスクを浮き彫りにしています。彼が手を出したブル・ベアファンド(レバナス)は、一見魅力的に映りますが、その実態は非常に危険な一面を持っています。

ブル・ベアファンドは、特定の株価指数にレバレッジをかけて運用される投資信託です。つまり、相場が上昇すればその動きの2倍、3倍の利益を得ることができる一方、下落すればその損失も2倍、3倍になってしまいます。

ただし、信用取引とは異なり、審査を受けて特別な口座を作る必要はありません。通常の証券口座で普通の投資信託やETFを買うのと同じように簡単に購入できます。そのため、佐藤さんのように短期間に利益を狙えると考えて購入する投資家もいるでしょう。

しかし、ブル・ベアファンドは大きなリスクを内包しています。また、その特性上、相場が一方向に下落しなくても相場が横ばいや急激な変動を繰り返すだけで、投資額が減少してしまうという性質があります。これは「負の複利効果」とも呼ばれています。

一般的にインデックス運用は「ほったらかし投資」と言われることが多いですが、ブル・ベアファンドではそうはいきません。ブル・ベアファンドはその名の通り、上昇相場を狙うブル型と、下落相場を狙うベア型が存在しますが、どちらの戦略であっても相場の動きに非常に敏感であり、投資家は常に市場を注視する必要があります。

特に、相場が不安定な状況では、迅速な判断が求められます。佐藤さんが経験したように、相場の急変に対して無防備だった場合、早期に損失を確定させる選択を迫られることになります。これは、長期的な投資戦略を望む多くの投資家にとって、大きな落とし穴となるのです。