過去編:同じ失敗を繰り返す危険性はないか?
第2のポイントは「過去」です。問うべきなのは「選択しようとしている転職先企業で、過去の失敗と同じことを繰り返す危険性はないか?」という点です。
私は長らく多くのエグゼクティブの転職相談に乗り、その人たちの職務経歴書を1万枚以上拝見してきました。するといろいろ気がつくことがあります。その一つに、「短期(1~3年以内)での転職を複数回繰り返している人は、同じことを繰り返している」というものがあります。
転職するたびに、入社時に話のあった職務と違う職務を命じられ、不本意になり転職する。「次の入社先こそ」とスタートするも、そこでもまた入社時と違う職務にアサインされてしまい、また転職へ。あるいは入社する会社が次から次へとことごとく買収されたり倒産したりする。行く先々で、社長や上司からパワーハラスメントを受けたと感じ、周囲と意見が合わない。こうしたケースが本当に多くみられます。
もちろん全てがご本人の責任であるとか運の悪い人だということではありません。しかし、自分の中にこれらのことを引き起こす芽があることもまた事実なのです。
実は自分が自覚できていないところで、担当職務を全うするには専門性が不足していたり、人間関係力に課題があったりするから、担当職務を変更されてしまう。転職しやすさやオファー提示の早さにばかり気が行ってしまうため、その会社の経営の健全性や安定性、成長性をレビューできていない。「社長や上司が」と言っているが、自分自身のコミュニケーションや性格のほうに問題がある。そういうケースが珍しくありません。
自分の中の課題をクリアせずに転職すると、必ず転職先でまた同じ課題や困難が襲ってくるものです。私自身も過去に経験がありますが、自分の仕事上や人間関係上の宿題を解く「ステージクリア」を済ませない限り、次のステップアップにはうまく進めません。
今回の転職が、そもそもちゃんと「ステージクリア転職」になっているか否かは、絶対にチェックしたいものです。
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未来編:将来への夢、展望を持てる場か?
第3のポイントは「未来」です。「選択しようとしている転職先企業は、将来への夢、展望を持てる場か?」
ミドルやシニアの皆さんの転職支援時に、当社では必ず「〇〇さんは、そもそも今後、仕事上でどのようなことを実現、達成したいですか?」と尋ねます。一見簡単な、当たり前の質問に見えると思うのですが、これがなかなかどうして、10人に尋ねて、揺るぎなく明快に即答できる人は2、3人という感じです。
「う~ん、そうですね。上司を見ていると、50代で部長か本部長ですから、自分もそれくらいは」「いずれ起業してみたいという気持ちはあります」「60代、できれば70代に入っても現役で働きたいとは思ってるのですが」。このような感じの、漠としたイメージが多くの場合は返ってきます。
これ自体を否定するものではありませんが、エグゼクティブとしてこれからの5年、10年を最前線で活躍されていきたいとすれば、「世の中に、市場にどのようなことを提供していきたい」「企業、事業、組織にこのような具体的貢献をしていくことで、これこれを成し遂げてみたい」というような、「外部に対して」と「内部に対して」のそれぞれに関して具体的に提供、貢献したい、自分なりのビジョンや展望、夢をしっかり描いて携えておきたいものです。
その将来展望や夢を、転職先ですぐにかなえる必要はありませんが、中期・中長期ビジョンをしっかり持てている転職と、それ抜きに漠然と目先や条件だけ見て転職するのでは、その後のキャリア展開に天と地の差が開きます。
自分の行き先、進む道をしっかり切り開いていけるか、その場任せで流されていくかでは、前者と後者のキャリア可能性は乗数的に乖離していくこととなります。
「市場価値のある人材」として今後も進むためにも、目の前だけでなく、しっかりと中長期的展望や仕事上の夢を持っての転職先選択をしてください。