会社員の給料ではお金持ちになれない。であれば「プライベートカンパニー」を作ればいい……。そう提言するのは、投資の失敗から貧困生活を経験しながらも現在では数億円の資産を保有するまでになった元メガバンカーの坂下仁氏です。今回は坂下氏の新刊『新版 いますぐ妻を社長にしなさい』(フォレスト出版)より一部を抜粋し、プライベートカンパニーを作ることのメリットと作る際のポイントをご紹介します。

家賃30万円の家を10万円で借りられる究極の節約方法

サラリーマンをやっているだけではお金持ちにはなれない……。これは前回までのコラムで繰り返しお伝えしてきました。その理由は、個人(サラリーマン)は節税の恩恵を受けられないからです。法人と個人では同じ1,000万円の稼ぎでも手取りに2倍の差がつきます。法人は800万ですが、サラリーマンは400万円です。

ではどうしたらいいのでしょうか? その答えは簡単です。妻を社長に据えてプライベートカンパニーを作り、副収入を得つつ節税メリットを享受する。この方法であれば、自分は会社員という安定したポジションをキープしたままお金持ちになることも決して夢ではありません。

プライベートカンパニーの作り方についてはこの後で解説するとして、プライベートカンパニーに資産が貯まってきたら、念願のマイホームをプライベートカンパニーで持つこともできます。どういうことかというと、プライベートカンパニー名義で家を買って、社員となっている家族の誰かに対して社宅として激安家賃で賃貸するという裏ワザが使えるようになるのです。

たとえば、5,000万円の豪邸があったとしましょう。この家を借りる場合、普通であれば月額30万円以上の家賃になるはずです。ところが、これをプライベートカンパニーが社宅として買って、それを家族が社宅として借りるとすると、家賃を約10万円にしても税法上は大丈夫なのです。

つまり、家賃30万円の家を10万円で借りられるのです。しかも、維持費はすべてプライベートカンパニーが負担してくれます。

一方で、建物代金を毎年少しずつ費用扱いにしたり(減価償却費)、借入利息を費用扱いにしたりできますので、プライベートカンパニーにとっては大きな経費となります。結果的にプライベートカンパニーの儲けとチャラになって、税金が大幅に減らせることになるのです。

もし、個人名義で買ったとしたら、ここまで徹底した節税をすることはムリでしょう。住宅ローン減税とは比較になりません。

とはいえ、経営が軌道に乗っていない初期段階で、社宅購入資金を銀行が貸してくれるわけがありません。そこで、プライベートカンパニーに社宅用のマンションなどを借りてもらって、それを家族に社宅として賃貸するという裏ワザがあります。

この場合、社宅の賃借料としてプライベートカンパニーに支払う家賃を、プライベートカンパニーが家主から借りる際の家賃の半額に設定します。

たとえば、賃料20万円の物件をプライベートカンパニーが社宅用に借りた場合、プライベートカンパニーに対して社宅費として毎月10万円を支払えばよいのです。結果的に、プライベートカンパニーから見ると年間120万円の赤字要因となりますので、その分の所得が減って、節税することが可能になります。その一方で、家計費からの家賃出費は年間120万円も減るので、その分のお金が手許に残るというわけです。まさに一石二鳥です。

自家用車についても、必要であればプライベートカンパニーに買ってもらいましょう。購入時の諸経費やガソリン代、保険料といった維持費もプライベートカンパニーの経費として落とすことができます。自動車の耐用年数は6年ですから、たとえば300万円の新車を買ったとすれば、毎年50万円を費用扱いにできます。つまり、税金がかかる所得を毎年50万円ずつ減らすことができるのです。

4年落ちの中古車であれば購入時に支払った代金を2年で費用扱いにできてしまうので、さらに効果的に節税ができます。

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プライベートカンパニーに資産を集めれば相続税は「0円」

プライベートカンパニーは、手許に残るお金を「増やす」だけでなく、それを「守り抜く」ためにも使えます。先ほどの社宅や車が典型例です。

家族の資産を個人個人で持つのではなく、できるだけプライベートカンパニーに買ってもらって、プライベートカンパニーに持ってもらう。これが、税法上もっとも優遇を受けられる、資産の取得・保有方法です。

長い目で見て、子どもや孫に財産を引き継ぐ際にも、プライベートカンパニーは威力を発揮します。具体的には、プライベートカンパニーの出資者に子どもや孫を加えるという方法を使います。

たとえば、資本金200万円のプライベートカンパニーをつくる場合に、夫が4分の1に相当する50万円、妻も50万円、子どもが2分の1に相当する100万円出資したと仮定しましょう。ちなみに、子どもの出資分については、110万円以下であれば、贈与しても課税されません。

ただし、贈与というのは贈与契約というお互いの合意に基づいた契約です。そのため、受け取る側の子どもが中学生以上でないと、意思能力がないと税務署が判断するため、110万円以下でも税金がかかります。

なお、税務上は証拠がすべてですので、贈与契約を交わして実際に贈与した金額が証明できる証拠を必ず残しておいてください。

その後、プライベートカンパニーのビジネスが毎年利益をあげていくことで会社の価値が大きく膨らみ、相続が発生する頃には1億円の価値になっている、と仮定してみましょう。

そのうちの2分の1は子どもの持ち分ですから、相続税がかかる対象資産は両親の持ち分の5,000万円分で済んでしまいます。一歩進めて、最初から子どもの持ち分を100%にしておけば、相続税はかからないことになるのです。

しかも、プライベートカンパニーで所有している社宅や車もすべて子どもの持ち物になります。その他、日常生活のなかでプライベートカンパニーに接することを通じて、お金について学ぶきっかけを子どもにつくってあげることができるようにもなるでしょう。

幸いにも、「合同会社」というプライベートカンパニーにうってつけの法人があります。設立費用はマイカーを買うよりもずっとお手ごろ価格ですし、維持費もマイカーほどは高くありません。しかも、合同会社であれば会社分割することができますので、相続人の人数に合わせて、臨機応変に対策を立てることもできます。

夫婦二人でつくったプライベートカンパニーは、家族の財産と未来を乗せる方舟です。大切なモノをすべてこの方舟に乗せてしまうことで、家族の財産は世間の荒波から守られて、着実に価値を高めていけるでしょう。