3.【2024年】年末調整の3つの変更点
2024年の年末調整は、前年から変更があります。ここでは、3つの変更点について解説します。なお、各申告書の詳細な書き方については、「4.年末調整のやり方」で紹介します。
(1)定額減税関連の記載欄が追加
2024年の年末調整では、6月から実施された定額減税に関する記載欄が追加されています。定額減税とは、税制改正に基づき、納税者本人とその同一生計配偶者、扶養親族に対し、それぞれ所得税3万円・住民税1万円を控除する制度です。日本国内に居住している、2024年分の所得税納税者で、合計所得金額が1,805万円以下の人が対象になります。
年末調整では「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に定額減税関連の「年末調整に係る定額減税のための申告書」が追加されました。
本人や配偶者の所得などを記入する点はこれまでと同様ですが、定額減税の対象になっている場合は、赤枠の「本人定額減税対象」「配偶者定額減税対象」にチェックを入れて申告しましょう。
国税庁|給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書より作成
(2)「給与所得者の保険料控除申告書」も簡略化
「給与所得者の保険料控除申告書」では、赤枠で囲った以下の3つの欄で、「あなたとの続柄」を記載する必要がなくなりました。氏名のみを記入して提出してください。
「生命保険料控除」:「保険金等の受取人」欄「地震保険料控除」:「保険等の契約者の氏名」欄「社会保険料控除」:「保険料を負担することになっている人」欄
国税庁|給与所得者の保険料控除申告書より作成
(3)「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が大幅に簡略化
2025年1月1日以降に「令和7年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する場合、前年と申告内容に変更がなければ、申告書の提出が簡略化されます。変更がなければ「簡易対応様式」を使用できるので、赤枠内を記入のうえ「前年の申告内容からの異動 なし」にチェックを入れて申告しましょう。
なお、2024年中に「令和6年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する場合は、前年までと同様の方式での提出が必要です。
国税庁|【簡易対応様式】令和7年分扶養控除等(異動)申告書より作成
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4.年末調整のやり方
給与の支払いを受けている人は、以下の流れで年末調整をおこないます。
各種控除に必要な証明書などを用意各種控除の申告書に必要事項を記入・証明書などを添付勤務先に書類を提出
続いて各書類(控除)について詳しく説明します。
年末調整に必要な書類と書き方
各申告書の名称と、対応する控除の種類は以下のとおりです。申告書の裏面には記入上の注意や算出表などがありますので、不明点があるときは参照しながら記載するとよいでしょう。
申告書 | 申告できる控除 |
---|---|
扶養控除等(異動)申告書 | 扶養控除、障害者控除、勤労学生控除、寡婦控除、ひとり親控除 |
基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書 | 基礎控除 |
配偶者控除、配偶者特別控除 | |
所得金額調整控除 | |
定額減税 | |
保険料控除申告書 | 社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除 |
住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅借入金等特別控除 |
扶養控除等(異動)申告書
年末調整の対象となる全員が提出しなければならない書類です(提出しないと税率が高くなります)。翌年最初の給料日前日までに提出することになっていますが、勤務先で提出期限が決められている場合はそれまでに提出しましょう。
氏名、生年月日、住所、マイナンバー、配偶者の有無の記載は全員共通で、ほかに該当する項目がなければ記入済みの扶養控除等(異動)申告書と、次に説明する基礎控除申告書を勤務先に提出すれば手続き完了です。
扶養対象親族や控除対象配偶者、障害者、寡婦、勤労学生など各種条件に当てはまる場合は該当箇所にチェックを入れ、親族の氏名、生年月日、収入などを記載します。また、年の途中に家族の結婚や就職などで控除対象扶養親族の人数に変更があった場合は、その時点で異動申告書を提出します。
基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書
これら4つの申告書は、ひとつにまとめられています。基礎控除は2019年(令和元年)までは申告不要で一律に受けられましたが、2020年(令和2年)以降は基礎控除申告書の提出が必要になっています。合計所得金額が2,500万円以内の人が対象ですので、こちらも忘れずに記載・提出しましょう。
なお、扶養控除等(異動)申告書で源泉控除対象配偶者のチェックを入れていても、配偶者控除・配偶者特別控除を受けるにはこちらの申告書を提出しなければなりません。
保険料控除申告書
各種保険料の控除を受けるには、申告書に証明書を添付して提出する必要があります。証明書は保険会社などが発行し、一般的に10月頃に送られてきます。
それぞれの保険料控除に必要な証明書類は以下のとおりです。
保険の種類 | 必要な証明書類 |
---|---|
生命保険 | 保険会社などが発行する証明書 ※旧契約の一般の生命保険料9,000円以下(1契約あたり)のものは添付不要 |
地震保険 | 保険料額にかかわらず保険会社などが発行する証明書が必要 |
社会保険料小規模企業共済等掛金 | 国民年金及び国民年金基金に係る保険料・掛金小規模企業共済等掛金はすべての掛金 |
2019年からは証明書の電子データ添付が認められていますので、勤務先に確認のうえ、電子データで提出することもできます。
住宅借入金等特別控除申告書(2年目以降)
住宅を購入した最初の年は、住宅借入金等特別控除を受けるのに確定申告が必要となります。2年目以降は、控除の対象となる人に税務署から直接申告書が送られてくるので、それを使い年末調整をおこないます。
申告書は、借入先の金融機関が発行した「住宅取得資金にかかる借入金の年末残高等証明書」を参照し金額を記載します。2ヶ所以上から借り入れている場合も、すべての年末残高等証明書にもとづいて記載し、欄に従って控除額を計算します。
控除の対象となるには、12月31日まで居住していること、合計所得金額が3,000万円を越えていないことが条件です。また、連帯債務や借換えをしている場合は、算出額を間違えないようとくに注意が必要です。
初回の確定申告時に控除証明書の電子交付を希望すると、2年目以降の年末調整はペーパーレスで申請することができます。
年末調整はいつまでにやる?
年末調整の書類は翌年最初の給料日前日が提出期限となっていますが、控除申告書を提出したあと勤務先(会社など)では控除内容が合っているかなどの確認をおこないます。そのため、11月下旬〜12月が書類の提出期限とされることが一般的です。
翌年1月を過ぎると、間違いがあった場合に勤務先での修正ができず、自分で確定申告をする必要が生じます。年末調整の書類は、勤務先で決められた期限内にきちんと提出しましょう。