3. 「支給」に関する項目

「支給」には支払われる給与の内訳が記載されていますので、雇用契約や勤怠を正しく反映しているか確認しましょう。主な項目は次のとおりです。

基本給

基本給とは、各種手当(残業手当、通勤手当、役職手当など)やインセンティブ(業績給、歩合給、報奨金など)を除いた給与のベースとなる固定賃金です。金額は仕事内容や能力、経験、勤続年数、年齢などを考慮して決められることが一般的です。

なお基本給のことを給料(月給)、これに各種手当やインセンティブを加えた総支給額を給与(月収)と呼びます。

給料(基本給)より給与を気にする方も多いかもしれませんが、基本給は年収を左右する重要な賃金です。例えば、時間外労働や深夜労働、休日労働に対する割増賃金は基本給を基準に計算されます。さらに賞与額が「基本給◯ヶ月分」と定められているケースも多くあります。基本給は労働条件通知書や雇用契約書で定められた金額と相違ないか必ず確認しましょう。

用語解説|固定残業手当(みなし残業代)とは?

求人票や労働条件通知書に「基本給(固定残業手当あり)」「基本給(固定残業手当◯時間分含む)」と記載されているのを見たことがあるのではないでしょうか? 固定残業代とは残業が一定時間発生すると想定して支払われる固定賃金のことで、みなし残業代とも呼ばれます。

例えば「固定残業手当 20時間分 3万円」という雇用契約の場合、実際にその月の残業時間が20時間に満たなくても固定残業手当3万円が満額支払われます。20時間を超えて働いた場合には残業手当が別途支払われます。

残業手当

残業手当とは、雇用契約で定められた労働時間(所定労働時間)を超えて働いた場合に支払われる手当です。

労働基準法第37条では、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えて働いた場合に、25%の割増賃金を支払うことが義務付けられています。つまり所定労働時間が1日8時間であれば、残業時間のすべてが割増賃金の対象となります。またパートやアルバイトであっても、1日8時間、週40時間を超えて働いた場合には割増賃金が支払われます。

休日手当

休日手当とは、法定休日に働いた場合に支払われる手当で、35%の割増賃金を支払うことが義務付けられています(労働基準法第37条)。

法定休日とは雇用主が従業員に最低限与えなければならない休日のことで、1週間に1日もしくは4週間に4日と定められています(労働基準法第35条)。次のように定めることが一般的ですが、勤務先の法定休日がいつか知りたい場合は就業規則やカレンダーを確認してください。

・原則休日制(週休2日制)の場合

土日が休日の場合は就業規則で土日のどちらかを法定休日に設定します。クリニックなど平日に定休日がある場合は、その曜日を法定休日にすることもできます。

・変形休日制(4週8休制)の場合

4週8休制の場合は就業規則で月の起算日を決め、その日から4週間以内に4日間の法定休日を設定します。

夜勤手当

夜勤手当(深夜手当、深夜勤務手当)とは、22時〜翌5時の間に働いた場合に支払われる手当で、25%の割増賃金を支払うことが義務付けられています(労働基準法第37条)。

医療・介護施設で夜勤が発生する勤務体系の場合は「夜勤1回につき5,000円」などと定額で支給されることが一般的です。日本看護協会の調査によると、夜勤手当の平均額は三交代制の準夜勤で約4,000円、同深夜勤で約5,000円、二交代制の夜勤で約1万1,000円となっています。

看護職員の夜勤手当の平均額

三交代制 準夜勤 4,141円
三交代制 深夜勤 5,033円
二交代制 夜勤 11,026円

*参考:公益社団法人 日本看護協会|2019年 病院看護実態調査

そのほかの支給項目

そのほかにも次のような支給項目があります。名目や支給要件、支給金額は勤務先によって異なりますので、詳細は就業規則を確認してください。

そのほかの主な支給項目

通勤手当 通勤に定期代やガソリン代などの費用がかかる場合に支払われる手当。月15万円までは非課税*。
資格手当 所定の資格を保有している場合、もしくは取得した場合に支払われる手当。
役職手当 所定の役職に就いている場合に支払われる手当。
住宅手当 所定の居住費がかかる場合に支払われる手当。
家族手当 所定の扶養家族がいる場合に支払われる手当。
皆勤手当 無遅刻・無欠勤の場合に支払われる手当。
精勤手当 遅刻・欠勤数が所定以下の場合に支払われる手当。

*参考:国税庁|通勤手当の非課税限度額の引上げについて

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4. 「控除」に関する項目

「控除」には給与から天引きされる社会保険料や税金の内訳が記載されていますので、納めるべき保険料や税金が未払いになっていないか確認しましょう。主な項目は次のとおりです。

社会保険料

けがや病気、失業などの不測の事態にに備えて社会全体で支え合う仕組みのことを社会保険と呼び、その保険料は給与から天引きされます。

代表的なものに労災保険、雇用保険、健康保険(介護保険)、厚生年金が挙げられ、この4つの社会保険に加入できることを一般的に社保完備と呼びます。なお、現在(2020年11月)ジョブメドレーに掲載中の求人の8割弱が社保完備となっています。

これらの社会保険に加入していれば、給与から次の保険料が天引きされているはずです。

給与から天引きされる社会保険料

雇用保険 失業したときに失業給付などを受け取れる。従業員が負担する保険料は賃金の0.3%(農林水産業、清酒製造業、建設業の場合は0.4%)。
健康保険 業務外のけがや病気の治療にかかった医療費の負担が軽減される。従業員が負担する保険料は標準報酬月額*1の4〜5%程度。
※保険料率は加入している健康保険によって異なる。
介護保険 介護サービスの利用料の負担が軽減される。40歳になると介護保険の被保険者となり、保険料を納めなくてはならない。従業員が負担する保険料は標準報酬月額*1の0.8〜0.9%程度。
※保険料率は加入している健康保険によって異なる。
厚生年金 65歳以上になったときや障害認定を受けたときに年金を受け取れる。従業員が負担する保険料は標準報酬月額*1の9.15%(令和2年9月〜*2)。
※厚生年金保険は日本の年金制度の2階部分に当たるため、厚生年金の保険料には1階部分である国民年金の保険料が含まれている。
※公務員の場合は共済年金となる。

*1標準報酬月額:社会保険料の計算を簡略化するためのテーブル。毎年4〜6月に支払われた給与を基に健康保険の場合は50等級、厚生年金の場合は32等級に区分される。
*2参考:日本年金機構|厚生年金保険料額表

社会保険は強制加入の保険ですので、従業員が加入要件を満たす場合には雇用主が必ず加入させなければなりません。加入要件を満たしているのに保険料が未払いの場合(=加入していない場合)は、勤務先に確認しましょう。

なお、加入要件は次のとおりです。

労災保険は業務上や通勤時のけがや病気、障害、死亡に対して保障する保険です。安心して働いてもらうために、雇用主にはすべての従業員を労災保険に加入させる義務があります。保険料については雇用主が全額負担しますので、従業員の給与から天引きされることはありません。

雇用保険については次の条件を満たす従業員が加入対象となります。正社員や契約社員、パート・アルバイトなどの雇用形態は問いません。

雇用保険に加入させなければならない従業員

・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上雇用される見込みがある

*参考:厚生労働省|人を雇うときのルール

健康保険と厚生年金については、次の強制適用事業所で働く従業員が加入対象となります。パートやアルバイトであっても、1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数が正社員の3/4以上であれば加入させなければなりません(日雇いアルバイト、短期アルバイト、季節労働などは除く)。

健康保険と厚生年金に加入しなければならない事業所(強制適用事業所)

・国、地方公共団体、法人の事業所
・従業員が常時5名以上いる個人事業所(ただし、理美容院やエステサロンなどのサービス業は対象外)

*参考:厚生労働省|人を雇うときのルール

税金

給与から天引きされる税金は所得税と住民税の2種類です。

給与から天引きされる税金

所得税 所得に応じて税率が変わる(累進課税)。給与所得者の場合、給与から概算で源泉徴収されるが、払い過ぎがあれば年末調整をおこなうことで還付してもらえる(給与額の変動が大きい場合や扶養親族が減った場合は逆のケースもある)。
住民税 定額で課税される均等割(5,000円)と前年の所得に応じて課税される所得割(10%)から成る。前年所得のない社会人1年目は住民税が天引きされない。

そのほかの控除項目

そのほかにも次のような控除項目があります。勤務先によって制度の有無、内容が異なりますので、詳細は就業規則を確認してください。

そのほかの主な控除項目

生命保険 雇用主が契約者の保険(団体保険)に加入する場合、その保険料が天引きされる。
財形貯蓄 勤務先の財形貯蓄制度を利用する場合に、その積立金が天引きされる。
従業員持株会 勤務先の持株会に加入する場合に、その積立金が天引きされる。