【人生相談】「何事もやる気が出ない」僧侶が仏教の教えで導く、心のリセット方法とは?

「50代からの女性のための人生相談」は読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は50歳女性の「気持ちが切り替えられずダラダラしてしまう」というお悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く住職・名取芳彦さんが回答します。

50歳女性の「気持ちが切り替えられずダラダラしてしまう」というお悩み

ここ数年間、夫の親やきょうだいのことで大変だった時期が落ち着いたら、張っていた糸がプツンと切れた凧のように、家事などやらなきゃいけないことがやる気になれません。

頭では「やらなきゃ」と思っているのに、終日ダラダラとテレビ番組を見て終わってしまったり、提出書類の締め切りが過ぎてしまったりという状態が一年も続いています。

どうしたら気持ちを切り替えて動けるようになるか、アドバイスがほしいです。

(50歳女性・N.F.さん)

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名取さんの回答:決めれば動ける&動き出せば方向も変わる

 N.F.さんは気持ちの切り替えを人生で何度かなさってきたことでしょう。

恋の痛手から、失敗して落ちこんだときから、なんとなくモヤモヤしている状態からなど、立ち直る方法はご自分なりのやり方がおありでしょう。また、他人がそのような状態になればアドバイスするだけの経験は、すでに積んでいると思います。

ところが、今回は、ご家族のこんがらがった人間関係の、数年にわたる調整がひと段落した後の、“やる気が出ないシンドローム”。今までのリセット法はあまり役立たないのかもしれませんね。

今のような状態になるのも初めてですし、そこからの立て直しも初めてですから、途方に暮れるのも無理はありません。

N.F.さんも「頭では“やらなきゃ”と思っている」し、特に家のことなどは、思っているだけではなく、実際にやらないといけないことでしょう。けれど、それができない……。

そんなときに、思い出した方がいい二つの真実があります。

一つは「決めないと動けない」ということ。逆に言えば「決めれば動ける」ということです。仏教でこの事実(行動原理)を象徴しているのが不動明王です。

例えば、N.F.さんが身に着けている服やソックス、アクセサリーは「これにしよう」と決めて(心を不動にして)身に着けています。どれにしようかと迷っていれば、今でもタンスの前でモジモジしているでしょう。

「適当に引っ張り出して着ている」とおっしゃるかもしれませんが、その場合は「どれでもいいと決めている」のです。ご飯のおかず一つに箸がのびるのも、「これを食べよう」と決めているからです。決められなければ“迷い箸”になります。

N.F.さんは「やらなきゃ」と“思っている”状態で、「よし、やろう」と“決めていない”のです。決めていないので動けません。

それがわかっていても、決める気力が湧かないかもしれません。そんなときにもう一つ思い出したいのは、「船の舵は進まないと利かない」ということです。

今の状況を変えたいと思っているN.F.さんの状態は、船の舵に手を添えているようなものです。しかし、止まっていればいくら舵を動かしても船は方向を変えません。動き出さないと方向は変えられないのです。

現状を打破できなくても、

決めていないから動けない
推進力(前に進む力)がないと方向は変わらない

この二つは知っておいた方がいい事実です。