スポーツクラブと提携、社会人教育に進出する塾も

――やはり生徒数の減少と同業者との競争激化が大きいですね。ところで、私は現在70代ですが、孫が通っている塾の優秀な先生がほかに引き抜かれて騒ぎになっています。そういった先生の人材獲得競争も背景にあるのでしょうか。

また最近、オンライン教育の塾や無料配信の学習コンテンツを利用する子どもが増えているそうです。新時代の塾のあり方の影響もありますか。

橋本伊織さん 人材獲得の影響はあると考えられます。まず、教育業界全体に人手不足感があり、特に非正社員は帝国データバンクの調査でも、学習塾が属する教育サービスでは、この1年で人手不足感が4割以上も上昇しています。

また、大手企業のほうが社内教育に力を入れており、一般的に賃上げ余力もあるので優秀な講師が大手に集中します。進学実績のほか、タブレットなどを活用したコロナ禍以降の教育DXへの対応という観点でみても、人材確保・教育は学習塾経営で重要な要素になっています。

ご指摘のように、オンライン塾や無料コンテンツとの競争が要因の倒産事例もあります。

――今後の学習塾業界はどうなるでしょうか。どういう塾が生き残ることができますか。

橋本伊織さん 中堅・大手で業界再編が進む可能性があります。教育春秋社のように、倒産前に事業譲渡されるケースが散見されるほか、現状では経営に懸念点がみられない地場の有力塾でも、独自性を維持しつつコスト削減や相乗効果を期待して、コロナ禍前後のタイミングで大手塾の系列となっているケースもあります。

スポーツクラブなどの異業種と業務提携を行う例もあります。また、社会人教育のリスキリングに政府が力を入れて、今後のトレンドとなることが考えられます。大手・中堅クラスであれば、「教育」という学習塾の武器をもって、新たな需要を取り込むことは可能でしょう。

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小さな塾は、地域の子どもにあった独自のカリキュラムを

――小規模塾はどうすればいいのでしょうか。

橋本伊織さん 子どもの学力に関係なく、塾に行かせて教育投資を行う親は少なくありません。小規模塾では、学区内の教育環境に密着・特化することで、地域の子どもたちにあった独自のカリキュラムを作って差別化を図れば、生き残ることは可能でしょう。

大手中堅小規模、それぞれの塾には今の環境を分析した思い切った経営改革が必要と考えます。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)