ヒグマの駆除について、北海道猟友会(本部・札幌市)が自治体の要請に原則応じない方向で検討していると、地元紙の北海道新聞が報じ、波紋が広がっている。

建物に当たる危険性があったとして、猟銃所持の許可を取り消され、控訴審で敗訴したことがきっかけだという。最近は、人的被害が度々報じられているが、今後は一体誰がハンターを担うのだろうか。

「民間任せの駆除のあり方に一石を投じる狙い」

報道によると、砂川市内の猟友会会員は2018年、市の要請を受けて、警察と出動し、ヒグマ1頭に発砲して駆除した。その後、道公安委員会から鳥獣保護管理法違反などで許可を取り消されて猟銃を取り上げられ、会員は、処分の取り消しを求めて札幌地裁に提訴し、1審は勝訴した。しかし、公安委が札幌高裁に控訴し、2審では、24年10月18日の判決で敗訴してしまった。

道新の11月14日付ウェブ版記事によると、この判決を受けて、猟友会では、自治体からのヒグマの駆除要請に原則応じないよう、全71支部に通知する方向で最終調整し、年内にも決めるという。「民間任せの駆除のあり方に一石を投じる狙い」もあるとされた。地元のメディアも、一部の支部を除いて、要請を拒否することを検討しているなどと次々に報じた。

猟友会が駆除しないこともあるという衝撃的な内容だけに、ネット上では、様々な意見が出て論議になっている。

「ルールに違反しても目をつぶれ、というのはよろしくない」と判決に理解を示す声もあったが、猟友会に同情的な声の方が圧倒的に多い。「後出しジャンケンで許可取り消しって…」「裁判官が現実を見れていないんだろな」「警察や行政がヒグマの駆除に責任を持つべきだ」といった意見が書き込まれている。

裁判で猟友会会員の代理人を務めた中村憲昭弁護士は14日、道新の報道を受けて、「北海道猟友会は、会長自ら現地を確認し、地裁判決と高裁判決の両方を読んでいる。そのうえで組織として駆除拒否を決断したわけで、高裁判決がいかにハンターにとっては非常識な判断だったかがよくわかる」と指摘した。

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猟友会以外にもハンターはいるが…「困ります」

ヒグマ駆除を巡っては、24年5月に、北海道猟友会砂川支部の奈井江部会が奈井江町の報酬が安すぎるとして、その要請を拒否したケースがあった。

その後について、町の産業観光課は11月14日、J-CASTニュースの取材に対し、奈井江部会の会員5人からは協力してもらえない状況だと答えた。報酬の不満のほかに、高齢化して人数が少ないことも伝えられたという。

ただ、猟友会以外で協力してもらえるハンターが道内で27人おり、このうち有害鳥獣駆除実施隊の12人を中心にやりくりしていると明かした。もっとも、27人も高齢者が多いといい、猟友会会員のように、ヒグマ駆除で猟銃を取り上げられるなどのリスクも考えると、必ずしも見通しがいいとは言えないようだ。

北海道猟友会が駆除要請に原則応じない方向と報じられたことについて、道のヒグマ対策室は14日、「記事で初めて知って、何が正しいのか、情報収集をしているところです。お伝えできることは、何もありません」と戸惑いがちに取材に答えた。

「もし猟友会が駆除しないとなると、それは困ります。代わりのハンターについては、話せる状況ではありません。警察や自衛隊、自治体職員には、狩猟免許を持っている方もおられますが、業務で取っているわけではないです。警察官だからといって、業務に携わることはありません」

ヒグマを駆除できるハンターについては、道のヒグマ管理計画の中で、その体制を現在検討中だと説明した。

「警察など特定の団体で駆除するわけではありません。猟友会と協力しながら、捕獲従事者の育成・確保をする案を検討しています」

その素案を見ると、狩猟免許の取得に向けた出前教室を開催すること、市町村による経費補助を促進することなどが盛り込まれていた。

(J-CASTニュース編集部 野口博之)