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 日本の日常生活に欠かせない割り箸の国内生産量は少なく、ほとんどが中国などから輸入される木箸・竹箸だ。財務省貿易統計によると、昨年の輸入量は138億膳と膨大だった。

 木製の割り箸は、国産の場合は原料に間伐材(森を健康的に育てるために切る必要がある木)や端材などが使われていて、環境負荷は低めだ。木の割り箸(国産・輸入品とも)は、資源を無駄にしないようにと製紙メーカーが回収を受けつけており(王子グループなど)、ティッシュペーパーやコピー用紙などに生まれ変わっている。一方、竹の割り箸は繊維が硬いためリサイクルには向かず、廃棄されることが多いという。

◆ニーズが高まる竹製の割り箸

 世界の割り箸の市場調査はいろいろ行われているが、大手市場調査会社のIMARCのレポートでは世界の割り箸の市場規模は、2032年までに推定で287億ドル(約4.5兆円)に達するという。

 割り箸はアジアだけでなく、北米やヨーロッパでの需要も高い。使い捨て箸市場の動向に関するレポートによると、2021年の普及率はアジアとオセアニアで38%、北米で27%、ヨーロッパで24%となっている。アジア系の料理が世界中で人気を博していることが、割り箸が多くの国に広まっている理由だろう。

 割り箸の材料はアスペン(ポプラ)、竹、樺などで、竹の割合も多かった。竹は成長が早く繁殖力も高いうえ、竹の自生地の水質は良く、二酸化炭素(CO2)を効率よく吸収するため、竹の割り箸は木の割り箸に代わる環境に優しい製品だという見方が広まっている。

◆カナダのチョップバリュー社、川崎市にリサイクル工場開設

 北米で使われる割り箸の90%は竹製だという。竹の割り箸のリサイクルは海外でもあまり進んでいない。そこに気づき、使用済み割り箸を材料に価値ある製品を作ろうと考えた人がカナダにいた。ドイツで木材エンジニアだったフェリックス・ベック氏は、バンクーバーで竹の素材の研究をしていた。ある夜、大好物の寿司を食べている時にアイデアが浮かんだという。(世界経済フォーラム

 そして、地元のレストランと提携して使用済みの割り箸(木製も竹製も)を回収し、熱、蒸気、圧力を利用し、割り箸を固めて丈夫な板に変える方法を開発した。板はデザイン性の高いテーブル、椅子、壁パネル、カウンター、コースターなどの小物に姿を変え、飲食店やオフィス、一般家庭で使われている。それが2016年設立のブランド「チョップバリュー」だ。

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 同社の割り箸の加工では廃棄物はほとんど出ない。割り箸をコーティングする樹脂は環境に優しいものだし、スクラップは小さい製品に利用して使い切っている。

 同社は、世界で毎週使われている15億本の割り箸をできる限り廃棄しないようにしたいと、事業をフランチャイズ化している。「地産地消」の地域密着型ビジネスとして、地元で回収した割り箸を板や家具にし、近くの顧客に届ける工場「マイクロファクトリー」を徐々に増やしているのだ。

 現在、マイクロファクトリーは北米、メキシコ、東南アジアにあり、まもなく新たに5ヶ所がオープンする。新しいマイクロファクトリーの候補地には日本も選ばれた。3階建て約470平方メートルの工場は川崎市にある(日本本社は東京)。同社のグローバルマーケティングディレクターによると、割り箸は木製も竹製も回収し、年内には稼働できるという。川崎市に根を張った後に全国展開を目指すとする。

 同社の2023年版のサステナビリティ・レポートによると、2023年末時点での累計で1億3740万本以上の割り箸をリサイクルした。CO2排出量は約669万キロ(割り箸が埋め立てられたり、割り箸ではなく新しい材料を使ったり、材料を遠い場所から輸送した場合などに排出されるCO2の総量)削減できた。

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◆京都でも回収した割り箸を美しい家具に再利用

 昨年の夏、日本ではチョップバリューより一足早く、竹割り箸を再利用したテーブルの販売が始まった。2022年設立の京都の「TerrUP」が製作したテーブルだ。木目(割り箸の柄)が美しく、アイアン脚がアクセントになっていてお洒落だ。

 イギリスの大学院で現代ビジネスを学んだ村上勇一氏が、帰国後、捨てられる竹の割り箸を見て「捨てずにリサイクルできるのではないか」と思い、自作の小物から売り始めた。TerrUPはメディアで取り上げられることが増え、商品の購入者が増えているという。

 日本での竹割り箸の本格的なリサイクル事業は始まったばかりだが、近い将来、当たり前のことになるかもしれない。