リモートワークの功罪は、オンとオフの切り替えが難しい
――リモートワークが進むことが残業時間の減少につながるわけですね。ただ最近は、社員同士のコミュニケーションを優先させるため出社を促す企業が増えています。その辺のバランスはどうなっていますか。
担当者 リモートワークに関しては、ポジティブとネガティブなクチコミが両方寄せられています。「働きやすさが向上した」という声がある一方、「通勤時間がないため、かえって働く時間が長くなる」「仕事とプライベートの切り替えが難しい人には疲れやすい」などの声が見られました。
PwCコンサルティング「リモートワークが浸透しており、多くのミーティングがオンラインで行われる。オフィスもフリーアドレス。プロジェクトによっては、ほとんど出社せずに勤務することが可能。また、コアタイムなしのフレックスを採用しているため、時間の調整がしやすい。特に現在子育て中の社員は恩恵を感じているのではないかと思う」(コンサルタント、女性)
三井住友信託銀行「在宅ワークが増えたが、出社しないと仕事ができない部署と、フルリモートでも仕事ができる部署があり、不平等感はある。上司が積極的に在宅勤務する部署だと部下も在宅勤務しやすいが、上司がそうでないと出社を促されることも聞いた。まだ会社としての制度はこれからだと感じる」(事務、女性)
日本アイ・ビー・エム「個人的な問題だが、昨今のリモート環境下ではついつい就業時間外でも仕事に手を付けてしまいがちで、プライベートとの線引きが難しくなっている。通勤時間がないのはラクである反面、切り替えの難しさにつながっている」(エンジニア、男性)
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NHKの働き方改革、番組制作と報道でそれぞれの悩み
――ところで、公共放送のNHKはメディアの代表として、また経済産業省は経済界をリードする立場として、働き方改革を奨励していく立場ですが、それぞれどのように残業削減の努力・工夫をしているのでしょうか。
担当者 NHKに投稿されたクチコミからは、部署・職種によって働き方や働きやすさには違いがあることがうかがえました。一方、日本全体の傾向と同様に、働き方の改善に対する意識は向上していることが見てとれました。
NHK「ここ10年くらいで労働時間に対する意識が大きく変わってきた。ただし職種による意識の差はいまだに大きい。番組制作を担当するディレクターのセクションは、仕事のやりがいと長時間労働との板挟みに悩む職員が多い印象」(報道、男性)
NHK「法改正もあり、この5年ほどで大幅に改善されている。とはいえ、災害等が起きれば、ワーク・ライフ・バランスとも言っていられないので、普通の業界と比べると、プライベートは削られるかもしれない」(報道、男性)
NHK「最近ではかなり働き方改革が進み、無駄な残業はさせないような雰囲気ができている。育児や介護にも配慮してくれる空気があるので、仕事が繁忙期でなければ、ワーク・ライフ・バランスはとりやすい会社だと感じた」(ディレクター、男性)
経済産業省でもリモートワークをかなり進めていますが、民間と同様、ポジティブな面とネガティブな面が共存しているように見受けられます。
経済産業省「部署や上司にもよるかもしれませんが、柔軟にテレワークをすることができるため、プライベートとの両立はかなりしやすいと感じています。午前中のみのテレワークや帰宅後のテレワークも可能なので、子育てとの両立もしやすいです。今後より両立しやすい環境になっていくと思われます」(総合職、女性)
経済産業省「テレワーク環境がかなり整っているので、どこでも仕事ができてしまう分、プライベートとの区別がついていない人もチラホラ」(事務、男性、経済産業省)
――今回の調査で特に強調したいことはありますか。
担当者 ランクイン企業に寄せられたクチコミからは、働き方改革やリモートワークの定着が、残業時間の削減に一定の影響を与えたことがうかがえました。しかし、自宅で働くことで仕事とプライベートの境界が曖昧になる現状や課題も見てとることができました。
手前味噌ではありますが、働く人のリアルな声や本音が集まるクチコミは組織改善のヒントになり得るのではないかと感じました。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)