理想的な求職者を雇用したいと思っても、なかなか求める人材に出会えない、採用にかかる時間的なコストがかさむといった悩みを抱える企業は少なくありません。そこで今回は、サーチ・ビジネス(ヘッドハンティング)のパイオニアである東京エグゼクティブ・サーチ(TESCO)の代表取締役社長であり、人材コンサルタントとしての経験・知識を豊富に持つ福留拓人氏が、そうした悩みを解決する一案として、採用面接の場に転職エージェントの担当者が同席することのメリットを解説します。

企業にとっての「理想の人材」を素早く見つけるための原始的な方法とは?

人材コンサルタントはクライアントが求める理想の候補者像を的確に把握する必要があります。新型コロナ感染症が流行したときなどは面談そのものがなかなか難しかったのですが、最近はオンラインのシステムと併用するかたちで、企業と候補者の最初のお引き合わせができるようになりました。

この面談には人材コンサルタントが同席することが多くなっています。面談にエージェントサイドのコンサルタントが同席するのはさほど難しいことではありません。業界ではごく一般的な手法となっています。

ただし規模の大きなエージェントになればなるほど、ある程度システマティックにオペレーションを展開しているため、きめこまやかな同席面談はよほど大きなディールでなければ通常は実施しません。けれども中小のブティック型エージェント(担当者が企業側と候補者側の双方に向き合う仕組み)の場合は一般的によく行われています。逆に同席をあまり要望しない人事担当ということになると、そのエージェントを含め、企業の基本姿勢に何かしら問題があるのではないかという推測も成り立ちます。

いつも忙しさに追われている人事担当や事業責任者が人材エージェントに何度も求人のスペックを説明する時間を極力セーブしつつ「的確なスペック」や「期待する人物像」をイメージさせるには、原始的ですが面談に同席という方法がベターだと思われます。口頭で説明いただくだけでは把握しきれないような人物像、仕事に取り組む意欲や能力のレベル感などを人材コンサルタントが面接に立ち会い、その模様を拝聴することで感覚的に理解することができるからです。

ただし企業によっては同席を嫌がる担当者もいます。その理由は、コンサルタントのような第三者が入っていることで「場の空気」が変わってしまう、もしくは候補者に追い風が吹くことを気にするからです。候補者に強力な後見人がいることで、候補者が緊張せず普段以上の力を発揮することを警戒されることがあるのです。一般的な評価軸とズレが出てしまうことを嫌がる方もいるので、同席面談を無理強いすることはありません。

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人材のミスマッチによって企業側が貴重な時間を浪費する

しかし、次のようなことがよく起きます。レジュメを見て「可能性がありそう」と評価して実際に面談を実行したものの、最初の3分くらいで「おや? ちょっとイメージと違うな」と感じてしまうのです。

求めているポジションと合致しない、もしくは企業が理想とする人物像とは合わないと感じて「絶対にこの人は違う」とすぐわかったとしても「弊社とは合いそうもないので結構です」と欧米のようにドライには言えません。そうなると当たり障りのない世間話をするとか、採用する気がなくても30分くらいは何とか形にしないとまずいということになりがちです。結局、貴重な時間を浪費することになるわけです。

実はこれはよくあることです。不思議なことにこういう事態は忙しい時間の谷間を縫って面談を設定したときになぜかよく起きるのです。

もしもエージェントが採用のニーズをよく理解し、厳選された候補者を推薦すれば、たとえば10人面接してやっとたどり着くフィット感のある候補者に2~3人目で遭遇する可能性が高くなってきます。そうなれば余計な時間の無駄が省かれ、効率的に時間を有効活用することができます。

同席面談は移動(現地立ち会いの場合)が必要で、人材コンサルタントも時間を割くわけですが、これをきちんとやらなければサーチファームとして仕事を全うしていないことになります。クライアントの「第二の人事部長」になるためには労力を惜しむわけにはいきません。

採用のクオリティを維持するために、コンサルタントサイドの努力はマストです。同席面談は上位のポジションになればなるほど実施される傾向にあります。クライアント企業も無駄な面接を減らすことに繋がり、貴重な30~60分を本来の業務に使うことができます。

たとえば個々のマネージャーにすれば浪費した時間は30分程度ですが、大きな会社でマネージャーが何人もいると「30分×何人」と、会社として相当の時間をロスしてしまいます。