あおり運転をした“ヤンキー仕様の車”が返り討ちに。高速道路で覆面パトカーに連行されるまで――仰天ニュース傑作選

過去5万本の記事より大反響だった話をピックアップ!(初公開2023年10月18日 記事は取材時の状況) *  *  *

 ここ数年、ニュースなどで頻繁に取り上げられている「あおり運転」。20年6月には改正道路交通法が施行され、以前よりも厳しく罰せられるようになったが、激減しているとは言い難い。

 自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険が8月に発表した『2023年あおり運転実態調査』によると、あおり運転をされたことがあるドライバーは53.5%。最初に調査を行った18年(70.4%)に比べれば改善しているが、前回調査の22年(51.3%)よりは悪化している。つまり、半数弱の方が被害経験を持つわけだ。あおり運転の被害者は後を絶たない。

 今回は、高速道路で体験した危険な「あおり運転」のエピソードを紹介する。

◆駐車スペースからハミ出す“DQN(ヤンキー)仕様の車”

 原田裕子さん(仮名・20代)は、レンタカーを借り、友人3人と高速道路を走っていた。まだ運転に慣れていない原田さんたちは、サービスエリアごとに運転を交代しながら目的地に向かっていたという。

 とあるサービスエリアで、「様子のおかしい車と遭遇した」そうだ。

「私たちの横の黒い車が、駐車スペースの枠からズレて停めていました。フロント以外の窓はスモークが貼られており、車高は低く、タイヤは八の字です。明らかにDQN(ヤンキー)仕様の車でした」

 原田さんたちは車に戻ったのだが、その車が枠から大きくはみ出していたため、後部座席のドアが開かなかった。仕方なく、運転手が来るまで待つことにした。

「サングラスに金のネックレスをした、いかにも怖そうな男性が現れました。こちらに気づいた彼は『何?』と一言。『すみません。後ろに乗れないので』と頭を下げると、“ニヤッ”と笑い車に乗り込んだんです」

◆繰り返されるパッシングとクラクションに震えが止まらず

 黒い車が走り出したことを確認した原田さんたちは、胸を撫で下ろした。しかし、しばらくすると、前方の左車線には例の黒い車が……。“どうかこちらに気づきませんように”と祈りながら追い抜いたという。

 そして、しばらくしてから左車線に戻り、そのまま走っていると、ありえない展開が待っていた。

「黒い車がものすごいスピードで真横に迫ってきました。私たちのすぐ後ろに入り込むと、パッシングとクラクションを繰り返します。私たちは震え上がりました」

 原田さんの友人は、「彼、笑ってる! 早く逃げて!」と叫んだ。しかし、アクセルを踏み込んで逃げたところで、彼の運転テクニックは原田さんたちよりも上。“すぐに追いつかれてしまうので無駄だろう”と思っていたと振り返る。黒い車の運転手は、窓を開けて何かを叫んでいたが、原田さんは“あること”に気づいていたという。

◆覆面パトカーらしきクラウンに希望を託す


「後方に白い覆面パトカーらしきクラウンの姿が見えていました。そのクラウンに希望を託すほかなかったです。ちなみに、黒い車はクラウンには気づいていなかった。ただ、私たちがスピードを出して捕まったら元も子もないので、視界の隅にクラウンを確認しながら、徐々に黒い車へ近づかせるための絶妙なアクセルワークが求められました」

 そして、次の瞬間——。クラウンのパトランプが光ると、「そこの黒の車、付いてきてくださーい」。黒い車はみるみる減速していき、パトカーに誘導されて近くのパーキングエリアに消えていった。

 その後、黒い車と遭遇することはなく、無事に目的地に着いた。原田さんは「あの日、私の運転スキルはグッと飛躍したと思う」と苦笑いだった。

◆明らかにあおってくるトラック運転手

 主に木材をダンプトラックで運搬している山本憲司さん(仮名・30代)。普段は下道を使用するのだが、その日は片道2時間かかる場所だったため、高速道路を走行していた。

「いくら高速道路とはいっても、重い材を積んでいるのであまりスピードを出せません。なので、左車線を走行するようにしていました」

 そこに、後方から大型のダンプトラックがかなりのスピードで近づいてきたという。山本さんは、「嫌だな」と思いながらも、荷物を安全に運搬しなくてはいけない状況のため、そのままのスピードで走行を続けることにしたそうだ。

「横から追い越してくれるだろうと考えていました。しかし、運転手はしつこく私の後ろに付き、明らかにあおってきたんです」

◆危険なスピード競争に巻き込まれないように必死

 山本さんは「冷静さを保ち、スピード競争に巻き込まれないように」と必死だったという。だが、相手の運転手の危険な運転はますますエスカレートした。

「彼は、急かして近づいては私の車にぶつかりそうになり、ヒヤヒヤしながらの運転が続きました。私は、できる限り安全な距離を保っていたのですが……」

 その後も容赦なく「あおり運転」は続き、周りの車の運転手たちもトラックの危険な運転に困惑していた。やがて、高速道路のトンネルに差し掛かった。

 トンネル内はスピードが制限されている。山本さんがスピードを落として、慎重にトンネル内に進んだそのとき……。予想外の光景を目の当たりにする。

「大型ダンプが、まさに私を追い越そうとした瞬間、パトカーが現れたんです。警察官が大型ダンプを停止させ、違反キップを切られる姿を見ました」

 高速道路上でのあおり運転が原因で、死亡事故も起きている。どんな場面でも冷静に、くれぐれも自分自身が被害者、加害者にならないように注意が必要だ。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】

2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。