銀シャリ橋本「今が一番、仲が良い」相方との関係性。ネタ作りするための部屋も借り「末永く漫才を続けたい」

2016年に「M-1グランプリ」の王者に輝いて以降、テレビや舞台、ラジオ、YouTubeと幅広く活躍している銀シャリ・橋本直さん(44歳)。瞬発力とワードセンスが光るツッコミを武器に、『ゴッドタン』や『アメトーーク!』といったバラエティ番組では抜群の存在感を放つ存在だ。いまや全国区の人気者となった橋本さんが、多忙の合間を縫って執筆したのが、10月30日発売のエッセイ集『細かいところが気になりすぎて』(新潮社)だ。

仲良しコンビとして知られる銀シャリの相方・鰻和弘さんとの関係、書き下ろしエッセイ「結婚」にも登場する奥さんとの日常生活など、橋本さんの“細かいところが気になる”日々について話を聞いた。

◆静かな狂気がある「相方・鰻」

――エッセイ集『細かいところが気になりすぎて』には、20エピソードのそれぞれに相方の鰻さんが描いた4コマ漫画が収録されています。どのような経緯で鰻さんにイラストを依頼することになったのでしょうか。

橋本直(以下、橋本):鰻は昔から漫画がうまくて、何よりおもしろいんです。以前個人で1コマ漫画集も出しているので、彼に頼むのは自然な流れでしたね。僕自身、鰻がどんな4コマ漫画を仕上げてくるのか毎回楽しみにしていました。

――エッセイ内でも鰻さんの登場シーンがありましたね。

橋本:そうですね、しょっちゅう一緒にいる相手ですからね。でも実際に読んでみると登場回数は意外と少ないんです。理由は、鰻がちょっと変な奴だから(笑)。日常が常におかしいから、書ききれない部分も多いんです。

例えば、セスナの免許を取るために960万円を使ったり、マンゴーを買うためだけに東京から宮崎まで行って、持って帰る前に空港のトイレで食べたり。普段は社会性があって、芸人っぽい破天荒さもないけれど、「静かな狂気」を感じるんです。

◆お互い健康に気を付けて、漫才を続けられたらいい

――銀シャリといえば、コンビでネタ合宿をするための家、通称“銀シャリハウス”を借りるなど、仲良しコンビとしても知られていますね。

橋本:コンビ結成19年の今が一番、仲が良いです。若い頃はお互いにとがっていて、よく言い合いになっていました。完璧主義の僕が突っかかることも多かった。でも30代半ばくらいで、ふっと気持ちが変わりましたね。

人は毎日コンディションが違うから、昨日できたことが今日できないこともある。でも毎日少しずつ改善していったら、それでいいと思ったんです。

それに長くコンビを続けて気付いたのは、相方として僕には鰻さんが、鰻さんには僕しかいないということです。なんだかんだ、僕も変ですから(笑)。

今はぶつかることもなく、コンビでの仕事が楽しいです。完璧を求めてピリピリしていた日々は間違っていたんだなと、今になって思えます。お互いに健康に気を付けて、末永く銀シャリの漫才を続けられたらいいですね。

◆囲碁将棋文田、オズワルド畠中が所属する「橋本軍団」も読書好き

――『細かいところが気になりすぎて』に関する反響はいかがですか。

橋本:意外だったのは、ジャルジャルの福徳(秀介)が雑誌『波』の連載で読んでくれていたことですね。特に告知していなかったのですが、「めっちゃ面白い。橋本らしいな」と連絡をもらって、すごくうれしかったです。

――橋本さん自身も、かなりの読書家ですよね。

橋本:父は46歳で亡くなったのですが、生前は本が大好きでした。父は自室の四方八方を本棚で囲むくらいだったので、その影響もあると思います。

僕自身は幅広いジャンルの本を読みますが、芸人さんが出したものはほとんど読んでいると思います。特に好きなのは、東京ダイナマイトのハチミツ二郎さんが出した『マイ・ウェイ ー東京ダイナマイト ハチミツ二郎自伝ー』で、“橋本軍団”(囲碁将棋・文田さん、オズワルド・畠中さん)のバイブルになっています。

――書き下ろし「結婚」に登場する奥様の感想はいかがでしたか。

橋本:「結婚」では、妻からの視点で、僕について思っていそうなツッコミを勝手に書きました。それを読んだ妻いわく、思っていることはだいたい合っているみたいでした。「気づいているならやめてよ」とは言われましたが(笑)、特に何かを直したほうがいいと言われることもなく、楽しく読んでくれたようです。

◆これからも気になることには“ネチネチ”ツッコミを入れ続けたい

――今後もエッセイを書く予定はありますか。

橋本:『細かいところが気になりすぎて』の続編を書き続けたいですね。気になることやツッコミどころは尽きません。

つい先日も、つけ麺屋に行ったときにイラっとする出来事がありました。隣の人がカウンターにある胡椒と豆板醤にスマホを置き、イヤホンで動画を見ていたんです。僕が豆板醤を使いたいのに、わざわざ離れた場所に置いてあるものを取りに行かなきゃならなくて。「こういう人はどんな人生を歩んでいるんだ?」とちょっとイラっとしました(笑)。でも、こういうことをエッセイに書くと不思議とすっきりします。

――どんな人にこの本を届けたいですか?

橋本:真面目に日々を生きている方に読んでいただきたいですね。少しでもくすっと笑って、ストレスが軽くなればうれしいです。

<取材・文/橋本 岬>

【橋本 岬】

IT企業の広報兼フリーライター。元レースクイーン。よく書くテーマはキャリアや女性の働き方など。好きなお酒はレモンサワーです