アイデアをひらめく脳はどうやったら作れるのでしょう? AIが本格的に活用されるこれからの時代、個々人のアイデア力が一層求められるのは間違いありません。アイデア力を高める習慣について「働き方改革プロジェクトアドバイザー」坂本崇博氏の著書『仕事のアップデート100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。
意識しなければ「自分の世界」を抜け出すことはできない
「私の働き方改革」とは、自分のやりたいことにより注力するために、やること、やり方、やる力を見直しながら、周囲にも改革を働きかけていくこと。言い換えれば、従来とは異なる選択を行うということです。
自ら改革を推進できるタイプの「働き方イノベーター」とも呼べる人が複数の選択肢をひらめくことができるのは、明確な意図を持ちながら世の中にアンテナを張っているため、自分の目の前の仕事以外にも幅広い知識を持っているからです。このことをクレアモント大学院大学のジェレミー・ハンター准教授は「セルフマネジメントができている状態」と表現しています。セルフマネジメントができている人は、結果を変えるために行動を変えるのではなく、その前段階である選択を変えていくことができます。
自分が普段過ごしている世界、職場や自宅、交友関係などから得られる情報だけでは、どれだけアンテナ脳を育てたとしても、そもそも新しい情報が飛び込んでこない状態では意味がありません。固定化された世界から飛び出し、世界を広げる機会を積極的に設けることで、情報の総量を増やすことができます。
新しい講演会やセミナーに参加することや、本を読むこと、ドキュメンタリー番組などを見ることも、他人の体験を自分の中に取り込むために良い方法でしょう。最近では、SNSやYouTubeなどの動画サイトで、いろいろな他人に出会うことも可能です。
しかし、その場合に気をつけることが1つあります。人は無意識のうちにリスクを避ける傾向があることです。セミナーの案内や本を探す時にも、「役立ちそう」とか「なじみがある」といったものに目が行きがちです。よくわからない、なじみのないコンテンツで「時間の無駄になるかもしれない」と感じるものを避けてしまうのです。同様に、SNSなども漫然と使っていると自分が興味のある人だけがタイムラインに現れるため、世界が広がりません。SNSやYouTube、Amazonのサジェストも同様です。
つまり、自分の世界を広げるためには、それまで食わず嫌いをしてきたような、自分の性格に会わない人、自分の人生には無縁のタイプの人に出会うことがポイントです。しかし、そのような出会いは時に気分を害したり、そこまででなくても時間の無駄になってしまうこともありえます。こういったリスクのある選択は、合理的な判断を好むビジネスパーソンにはなかなか取りにくいものです。つまり世界を広げる出会いは、合理的、必然的な選択だけをしていると得られないかもしれません。
【ポイント】
●新たな選択肢を得るためには、自分の世界を広げる必要がある
●講演会や書籍、SNSなどで世界を広げられるが、同じタイプばかりになり、まったく無縁の物や人に触れられない可能性もある
●縁がなかったものに触れることは、リスクもあるので注意
(広告の後にも続きます)
「人名」「地名」を調べる習慣が「アンテナ脳」を作る
脳のアンテナを鍛えるために有効なテクニックの1つが、脳をだましてドーパミンを分泌させる習慣を作ることです。ドーパミンとは脳内物質の1つで、何かを成し遂げた時に感じる興奮状態の原因でもあります。
つまり何かを成し遂げるとドーパミンが分泌され、脳が快楽を感じるのです。それを覚えると脳がもっとドーパミンを欲しがり、その成し遂げたことをもっと繰り返そうと考えるようになり、これによって人のやる気が引き起こされるようになります。つまり脳が無意識に、その行為を好んで行うようになるのです。これを使ってうまく条件づけを行うことで、脳が無意識のうちにさまざまな情報にアンテナを張る事ができるようになります。
では、脳が勝手にアンテナを張るようにするためにはどうすればいいのかというと、いわゆるトリビアを知ることが有効だと明らかになっています。人間は、どうでもいいことであったとしても「新たな知識を得る」ことで快感を得られる、つまりドーパミンが分泌される生き物なのです。
日常的に身の回りのトリビアを調べ、快感を得られるようにしておくと、仕事などで少し疑問に思ったことでもすぐ調べたくなる習慣がつき、いろいろなことを知りたがるようになります。
例えば、地名や社名、人名などを見たときに、その由来をスマホなどで調べるようにしましょう。身近にあるため調べやすく、知識の広がりも適度に大きいので、トリビアとして最適です。
ほかにも、いつもの通勤の途中駅の駅名を調べてみる、初めて会った人の苗字の由来を調べてみるなどもいいでしょう。これによって調べる快感を覚えた脳は、ニュースを見ても、メインニュース以外の細かなニュースにも目が向くようになり、もっと新しい情報を求めるようになります。これがさらに進むと、異業種交流会やセミナー・イベントなどにも、新たな情報を求めて参加しよう、という気分になってきます。書店などでも、今まで訪れなかった分野の棚が気になるでしょう。
なぜその社名なのか、なぜそんな地名なのか、今まで関心を持たずに過ごしてきていたことに興味を持つことが自然にできるようになると、習慣化できたといえるでしょう。普通の人が興味を持たないようなことに興味を持ったり、情報を記憶に止めようとする無意識が醸成され、意識することなく世の中の事象に興味関心を持つ「アンテナ脳」になっているのです。
【ポイント】
●世の中の情報にアンテナを張るには、それを意識することなく日常的な習慣としてできるようにすることが重要
●何かを知ること、調べることに脳が快感を持つようにする
●普通の人が無視することに興味を持ち、結果として選択肢が増える
【監修】坂本 崇博
コクヨ株式会社 働き方コンサルタント、働き方改革プロジェクト アドバイザー