値引き交渉を受けるときは「全体を見て」考える



 

先ほどのように、挨拶のような感覚で値引き交渉をしている人もいるので、値引き交渉を受ける側のときは、イラッとした顔をしたり、軽蔑のまなざしをしたりしないように心がけましょう。

わたし自身も、人数や予算の面で値引き交渉を受けることがあります。交渉があった場合は、金額以外の付加価値も含め、全体を見て考えることも必要です。

たとえば、わたしが金額面以外に考慮しているケースは、下記の場合です。

・長いお付き合いをしている取引先や、今後も数年やりとりが続くと予想される取引先の場合

相手の事情がわかれば(予算、緊急性のある内容など)、申込講座をパッケージにして値引きするなど、何かしら方法を考えてお引き受けすることがあります。

・講演料が規定の額に満たなくても、SNSなどPR・広告効果が見込める場合

・社会貢献につながる場合

子育て中の母親たちの支援につながると思ったものは、交通費程度の金額でもお引き受けしたことがあります。ただし、「この金額で受けるので、日程は繁忙期ではない時期に実施させてもらえませんか?」という別の交渉を行いました。

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次につながるスマートな「断り方」



 

すぐその場で値引きの判断ができない場合や、自分にその判断をする権限がない場合は、その事実を相手に伝えて、一度持ち帰りましょう。持ち帰る際は、返答期限を確認したり、上司に確認をとって返答する旨を伝えておくことも忘れずに行いましょう。内容にもよりますが、わたしの場合は、早くて翌日、長くて1週間くらいの時間をもらうようにしています。

最終的に金額を引くことができない場合には、「申し訳ありません。ほかのお客様と公平にしなければいけませんので、ご理解いただければ幸いです」とお伝えします。先方の希望に応じることができないと判断したときは、その理由まで伝えるのもポイントです。返答に説得力が増し、相手も「そうだよね。それは無理だよね」と納得を得られやすくなるからです。また、理由を話しておくことで、次につながる可能性もあります。

「前回は〇〇が理由で無理だったけれど、今回はその条件をクリアしているから……」と再度ご依頼をいただくこともあるかもしれません。「ちょっとダメなんです」「やはり無理です」だけでは、一方的に断られたという印象を相手に与えてしまうこともあります。逆に、明確な理由があると、「無下に断られた」という印象は与えません。

このように、金額交渉の対応や断り方は今後の関係も左右する分、とても大切です。お互いにとってよい形になるよう、スマートな対応を身につけていきましょう。

戸田 久実

アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事