借主が死亡したら、契約解消できる?
まず、借主が死亡した場合です。
民法597条3項による「建物所有目的の土地賃貸借契約が終了するか否か」について、東京地裁平成26年12月3日判決は、下記のように判示しています。
「民法599条(旧民法。筆者註)が借主の死亡を使用貸借の終了原因としているのは、無償で財物を貸与する使用貸借が、貸主の借主に対する信頼関係に基づく契約関係であり、貸主にとって、借主が誰であるかは特に重要な意味を持つものであり、借主の一身の利益のために貸与をしたとみるのが貸主の通常の意思に合致すると考えられるからであると解される。しかしながら、原告は、親族相互扶助の精神に基づき、弟であるAの必要に応じて、本件建物の所有者であるAに対し、その敷地たる本件土地を無償で貸与したものであることは前説示のとおりであり、Aのみならずその家族である被告らの住居を確保することもまたその目的となっていたものと解されるから、Aの死亡という一事をもって原告とAとの使用貸借契約が当然に終了したものということはできない。」
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そもそも土地を貸していたのは、Aの家族の住居を確保することも目的だったのだから、土地を貸していたAが亡くなったからといって、使用賃貸契約が終了したということにはならない、という解釈です。
結果、民法597条3項(旧民法599条)による使用貸借契約の終了を認めませんでした。
過去の裁判例でも、建物の所有目的の土地使用貸借において、該当の土地の上に建物が建築されて使用されている間は、借主が死亡しても、土地の使用貸借は当然に終了しないとした裁判例(大阪高裁昭和55年1月30日判決、東京地裁昭和56年3月12日判決など)が多数存在します。
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定めていた「建物の使用目的」が終了したら?
次に、民法598条1項(旧民法597条2項但書)に基づき、土地の使用貸借の終了を請求することができるかについては、同じく東京地裁平成26年12月3日判決として、下記のように判示しています。
「土地の使用貸借において、民法597条2項ただし書所定の使用収益をするのに足りるべき期間が経過したかどうかは、経過した年月、土地が無償で貸借されるに至った特殊な事情、その後の当事者間の人的つながり、土地使用の目的、方法、程度、貸主の土地使用を必要とする緊要度など双方の諸事情を比較考慮して判断すべきものであるが(最二小判昭和45年10月16日裁集民101号77頁参照)、本件土地を無償で貸借させるに当たり、原告とAが、Aが本件土地の贈与税を支払えるようになるか否かが明確になるまで本件土地を使用させる旨を合意した事実を認めるに足りる証拠はなく、かえって、前提事実及び弁論の全趣旨によれば、原告は、親族相互扶助の精神に基づき、弟であるAの必要に応じて、本件建物の敷地たる本件土地を無償で貸与し、以後、A及びその家族が本件建物において居住していたことが認められるのに加えて、原告が本件土地の使用を必要とする事情があることを認めるに足りる証拠もないことなどの諸事情を比較考慮すると、Aが50年以上にわたって本件土地を使用していたという年月の経過をもってしても、本件土地の使用貸借について、契約に定めた目的に従い使用及び収益をするのに足りる期間を経過したものということはできない。」
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土地の無償での貸借は、親族の相互扶助の観点から行われていたものであり、現状において、原告が該当の土地の利用を必要とする事情も認められない。50年以上という長きにわたって土地の使用賃借があっても、その年月の長さが契約終了の理由にはならない、ということです。
結果、土地使用貸借の終了は認められませんでした。