現状の日本に合った制度を考えるべきでは


ワーキングマザー
【画像出典元】「Kaspars Grinvalds/Shutterstock.com」

多くの人が、もっと働くことができるのに、「働き損」になってしまうことを嫌って働く時間を抑えた結果、さまざまな業界で人手不足がより深刻度を増しているという現実があるのです。

そもそも年収の壁の原因となっている配偶者控除は、一家の大黒柱の男性がメインとして働いて、女性は家事・育児・介護などを担うことを前提に作られた制度です。しかし1980年に614万世帯だった共働き世帯は、2019年には1245万世帯と約40年の間で2倍に増えています。1980年の共働き世帯の割合は36%でしたが、2000年には過半数を占め、2020年には69.2%にまで上昇しています。夫婦共働きでなければ生活していくことが難しい世帯も少なくありません。

つまり過去数十年にわたって賃金が伸びず、労働力不足に直面している現在の日本と、「年収の壁」の元となる配偶者控除が創設された当時の日本とでは置かれた状況がまったく違うわけです。

今回の「年収の壁」対策は最長2年間という時限的措置です。2年後にこの対策がどう変化するかは明らかになっていません。しかし、少なくとも「働く意欲はあるのに働き損になるから働かない」という人を出さないための、現状の日本に合った恒久的な制度を考えるべき時に来ているのではないでしょうか。