パンデミックの終息とともに、世界の人々が再び旅に出るようになった。そこに「サステナブル・ツーリズム」というトレンドが生まれているのを、ご存じだろうか? ただの観光にとどまらない、新しい体験が生まれる旅に出てみよう。
その土地ならではの本物の体験を通して地域の「環境・文化・経済」を守り育む
「SDGs」が浸透し、サステナブル(持続可能な)という言葉も耳になじんだ。ところで、「サステナブル・ツーリズム」とは? 日本政府観光局(JNTO)の田浦靖典さんにうかがった。
「国連世界観光機関によれば、『訪問客、産業、環境、受け入れ地域の需要に適合しつつ、現在と未来の環境、社会文化、経済への影響に十分配慮した観光』を意味しています。地球規模の気候変動や、オーバーツーリズムによる自然環境、地域住民の生活への悪影響が問題視されている中、世界的にこのサステナブル・ツーリズムへの意識が高まっていて、各国で取り組みが行われています」
JNTOでも、日本の地域の「環境・文化・経済」を守り育む、持続可能かつ発展性のある観光を目指して、訪日インバウンドに向けたさまざまな情報を発信しているそうだ。
「海外からの旅行者の中にも、日本ならではの文化や伝統に触れ、本物の体験をしたい、旅を通じて視野を広げ、地域や環境に貢献したいというニーズが高まっています。それに応えるように、グリーン・デスティネーションズによる『世界の持続可能な観光地トップ100選』や国連世界観光機関による『ベスト・ツーリズム・ビレッジ』といった国際認証を取得する地域も増えていて、旅先を選ぶ際の一つの指標にもなっているようです」(田浦さん)
北海道・美瑛町。2023年「ベスト・ツーリズム・ビレッジ」にも選出されている
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旅を楽しんで地域経済に還元。環境の保全につなげるよい循環を保つことが大切
インバウンドビジネスコンサルタントで、日本初のインバウンド専門情報サイト「やまとごころ.jp」を運営する村山慶輔さんは、サステナブル・ツーリズムにおいて大切なのは、「環境、社会、経済の3つのバランスがとれていること」と語る。
「つい環境に注目しがちですが、サステナブルであるためには、地域にお金が落ちることが必要。伝統文化や環境の体験に経済的な付加価値を生み出し、それに満足した旅行者が支払うお金をもとに、地域の環境や住民の暮らしが保全される。この循環が続くことが重要なのです」(村山さん)
こうした循環を生み出すべく、日本でもいろんな地域が動き出している。村山さんは、観光客の受け入れに不慣れだった離島での取り組みにも注目しているそう。
沖縄・西表島/西表石垣国立公園内のクーラの滝
©Hoshino Resorts
「例えば世界自然遺産に登録された西表島では、『星野リゾート 西表島ホテル』が日本初のエコツーリズムリゾートを目指し、生物多様性を学ぶアクティビティなど多彩な体験を用意しています。受け入れる側だけでなく、旅行者側も、地域への配慮や貢献を意識した『レスポンシブル・ツーリズム(責任ある観光)』を心がけたいですね。なるべく長期滞在して地元の人々と交流する。地元の食材を食べ、工芸品を買い、伝統文化に触れることで、生産者や職人を応援する。こうした行動は、あえてサステナブルと謳わなくても、我々日本人がふだんから実践していることかもしれません」(村山さん)
サステナブルな旅の体験が、日本の素晴らしさの再発見にもつながるはずだ。
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