FPから見た住宅購入の注意点

物件価格や毎月の返済に関して重要なことは「毎月のやりくり」と「現役引退時にどれぐらいの残債があるか」になると思います。住宅ローンは最長35年という長期間にわたる契約です。そのため「ちょっと頑張れば返せるのではないか」という認識だと先々のことが不安です。

住宅ローンの返済金額が今の家賃と同じぐらいだとしても、税金や修繕積立金など賃貸物件では発生しない固定費が不動産を所有している期間中は必ず発生します。また住宅ローンの返済だけで他に回す資金的な余裕が無くなってしまうと、教育費や老後に向けた資金の確保が非常に難しくなります。

「今の家賃と同じぐらいで買えます」「家賃がもったいない」「資産になります」といったセールストークをよく聞きますが、住宅ローンを返済する責任があるのは購入者ですから、この点は要注意です。またマンションの価格だけで探してしまうと仮に売ろうとしても物件に魅力がなく、売るに売れないという「不動産が負動産化してしまう」リスクもあります。

不動産は需要と供給による市場価値の評価が極めてシビアです。安いものは安いなりに、高いものは高いなりに理由があります。不動産に掘り出し物はないと思ったほうがよいでしょう。

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まとめ

● 20代でのマンション購入は売却ありきで考える
● 住宅ローン返済以外に毎月1.5万~2万円は必要
●  住めなくなったら貸すと安易に考えない
● 数百万円~数千万円の買い物なので、購入者の責任をよくよく考えて

20代でのマンション購入に関しては「売却ありき・住み替えありき」で考えていくことが重要です。今は人生100年時代といわれています。就職して同じ会社で40年~50年の勤務をして定年退職をする人も減っており、職場やキャリアが変わることを前提にすると20代でマンションを買うことはリスクになりえます。

特に独身の人が単身用のマンションを購入すると、結婚したときに不動産の取り扱いに苦労する可能性が高いでしょう。子供が生まれ、広い部屋に移りたいと思ってもすぐには難しいかもしれません。

逆に「結婚して子供がいる」という家庭にとっては良いかもしれません。ただその場合でも子育て環境などを考えながら場所を選びましょう。また、将来売却することを前提に考えると、新築ではなく中古が良いでしょう。

新築物件は新築プレミアムといって価格が高く設定されています。そのため新築で購入し売却しようとすると思った以上に売却価格が安くなり、残債を整理しきれないことも想定されます。一方で中古物件は新築プレミアムがないので一定の価格で流通しており、買うことも売ることも適正価格で行われていると言われています。終の棲家ではないということであれば中古物件の購入を検討しても良いでしょう。

また繰り返しになりますが賃貸物件に住んでいると固定費の感覚がどうしても希薄になります。そのため、不動産を購入して税金や修繕積立金の負担に苦労するケースが後を絶ちません。

家賃と住宅ローンが同じくらいというケースを想定している方は、貯金をしながら家賃プラス2万円で毎月のやりくりがキチンとできるかどうかを試してみることをおススメします。もし難しければ各種の固定費やおこづかいを含めたお金の使い方を考え直すか、物件価格を見直す必要があるでしょう。

不動産を買うということは住宅ローンも含め、非常に大きな責任を伴います。そこまで考えずに「いざとなれば売ればいい」という論調もあります。どちらが正しいということではありませんが、ご自身にとってのメリットとデメリットをよく考えて判断をしてください。