代打で出席した「PTAの集まり」が転機に

そんなある日のこと。麻衣さんは地域のママ友から「どうしても仕事を休めなくて」とピンチヒッターを頼まれ、家事代行の一環としてPTAの集まりに出席することになった。

そこで、家事や育児について意見交換をする場面があり、麻衣さんが普段やっているルーチンを簡単に話してみたところ、周りのママたちから「そんなやり方があったのね、すごい! もっと詳しく教えて!」と麻衣さんに質問が飛び交い、会はおおいに盛り上がった。

この体験から、麻衣さんは「家事スキルよりも、仕事と家事を両立するための“家事効率化スキル”に価値があるかもしれない」と考え、業務内容を「家事代行」から「家事アドバイザー」に切り替えることにした。

また、麻衣さんは方向性の変更に伴い、家事を効率化するためのデジタルツールやアプリも積極的に取り入れることにした。

世の中にはすでに「買い物リスト」を作成するアプリや冷蔵庫内の食材を管理するアプリなどさまざまあるが、それを使いこなせている人はほとんどいない。家事の効率化を助けるアイテムはどんどん試し、いいと思った方法をわかりやすく伝えることで、だんだんと口コミで依頼が増えていった。

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地域で評判の「家事アドバイザー」に

やがて、麻衣さんの副業は地域内で評判を呼び、個人だけでなく地元の企業からも「社員向けの家事効率化セミナー」や「時短ワークショップ」の依頼が舞い込むようになった。

そこで、これを機に麻衣さんはサービス提供を個別対応から少人数のワークショップ形式に切り替え、参加者全員に「まとめて準備」「ながら掃除」を実演。楽しく学べる場を提供した。この形式は、より多くの人に効率的にアドバイスを届けることができ、参加者からの満足度も高くなった。

そこで、麻衣さんはオンライン形式の「家事アドバイザリー講座」を開設し、自宅から参加できるカリキュラムを整備した。これは忙しい人でも動画コンテンツを購入すれば、自由な時間に効率化のノウハウを学べる仕組みで、これによって地域外からの参加者や、個別指導の受講が難しい人にもサービスを提供できるようになり、収益源がさらに拡大した。

「従業員の家事負担を軽減させたいと前々から思っていたところだったんです。あなたに出会えて本当に感謝しています」ときにはそんな嬉しい感想をもらうこともあった。複数の企業からの支持を得て、継続して依頼が来るようになった麻衣さんは、副業から本業へとビジネスを発展。

その結果、会社勤めのみでは350万円だった年収が、家事効率化のアドバイスで合計900万円に。自身の負担を減らしながらビジネスチャンスを広げることで、ワークライフバランスも改善し、家族との時間も増え、麻衣さんは日々充実感に満ちた生活を送っている。

無形資産を自覚できると、人生に“思わぬ転機”が訪れることも

麻衣さんの事例は、日常無意識に行っている「習慣」が、他者にとって価値のある「無形資産」となり得ることを示す好例だ。

彼女は、自分にとって当たり前だった家事の効率化スキルを再認識し、それをビジネスに変えることで大きな成功を手にした。また、特に「働くママたち」にターゲットを絞り、地域のママ友とのつながりという「無形資産」を活用しながらサービスの内容を工夫したことで、ビジネスの広がりを生み出した。さらには、デジタルコンテンツの販売によって、自分が休んでいてもサービスが売れる仕組みを整えた。

本事例は、誰にでも日常のなかに無形資産が眠っていることを示し、それを活かす勇気と発想が新たなチャンスを生むことを教えてくれるだろう。

鈴木 健二郎

株式会社テックコンシリエ

代表取締役