カフェミュージックの大定番、Kenny Rankinの「Haven’t We Met?」。僕はアン・サリーさんのカバーverも大好きです。“Haven’t We Met?(どこかで会ったことあるよね?)”はナンパのフレーズらしいのですが、歌い手が男女変わるとまた違って聴こえます。飽きない。
いいとしか言えない。
この前、鎌倉のカフェでモーニングを食べているときに聴いたJoão Donatoの「É Menina」。緩やかなサンバのリズムと爽やかなコーラスは、店内に心地よくそよぐ“風”のようでした。3年ほど前、札幌のカフェで聴いたEnjiの『Ursgal』。当時、まだマイナーだったモンゴル人ジャズシンガーの奥ゆかしい声に反応した僕に、マスターが「好きですか?この音楽」と話しかけてくれ、今では音楽を薦め合う仲になりました。学生の頃、渋谷の『ドトール』で聴いたBill Withersの「Lovely Day」。飽きるほど聴いたはずのヴォーカルは、人混みにぐったりしたこの日でさえも心を優しくほぐしてくれ、“愛すべき一日”に変えてくれました。
カフェと音楽。この組み合わせが素晴らしいことなんて説明不要かと思います。おいしいコーヒーに心地よい空間、そこに良質な音楽ってもう「最高」以外に書くことないです。なんなら、他のお客さんにバレるのがなんだか恥ずかしいから、カフェで流れている曲をこっそりShazamする瞬間もいいですし、かかっているレコードを「写真撮らせてください」と言うのも野暮だからと、チラ見を繰り返して記憶する必死さなんて愛おしすぎる。それに、カフェで出合った音楽をその場でサブスクで探し、イヤホンで聴きながら帰る時間もたまらなくいいですよね。カバンの中から、カフェで買ったコーヒー豆のいい香りが漂ってきたらなおよし。聴きながら帰った一枚が「やっぱり素敵だわ〜」となってレコードをポチる時間もいい(見つからなくて「いつかレコ屋で見つけとき3000円以内なら買うリスト」に加えることになったとしても、先々の楽しみが増えるからそれもOK)。届いたレコードに針を落として、この前買った豆でコーヒーを淹れて……はい、もう満点です。良すぎる。そんな気持ちで作った一冊です。
(本誌編集部/松崎彬人)
&Premium No. 133 Cafés & Music / カフェと音楽。
心地よい空間に身を置き、淹れたてのコーヒー片手に流れる音楽に耳を傾ける。ひそやかで静謐な音色、心を揺さぶる歌声や演奏、懐かしいナンバーとの再会もあれば、新しいメロディとの邂逅もある。カルチャーのあるカフェや喫茶店は、音楽との思いがけない出合いを手渡してくれるかけがえのない存在。今号では、良質な音を届け続ける名店オーナーの選曲遍歴や全国の話題店のアルバムリスト、カフェを愛する人々が出合った大切な一曲など、351枚を収録。家でくつろぐひとときに似合う音楽を探し出す楽しみも、この一冊から見つけてもらえたらと思います。Better Lifeには、おいしいコーヒーと、いい音楽が必要ですね。
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