音信川の川辺を散策し、温泉街全体を楽しむ「界 長門」
本日のお宿「界 長門」は、音信川の川沿いにあります。遊歩道を歩くと、ところどころには川テラスや飛び石、足湯などがあり、散歩には絶好の場所です。
長門湯本温泉は、江戸時代に歴代の藩主が湯治に訪れていたといわれます。そこから着想を得て、「界 長門」は藩主が参勤交代時に本陣(休む場所)として使われた「御茶屋屋敷」をイメージ。
川沿いにある宿泊客用の出入り口「あけぼの門」のすぐ脇には、誰でも利用できる「あけぼのカフェ」があり、どら焼きやドリンクを楽しめます。
購入したものを川沿いに設置されたテーブルや川床テラスに運んで、のんびり寛ぐこともOK。
この日は期間限定イベントの野点体験を楽しみました。茶道初心者でも説明してもらえるので安心です。茶碗はいくつかある萩焼深川窯の器から、好きなものを選べます。
どら焼きは定番であずき、夏みかん、ゆずきちなどがあり、今回は季節限定の栗入りをチョイス。
「界 長門」の客室に入ると、山口の伝統工芸があちこちに散りばめられていました。
ご当地部屋「長門五彩の間」は、徳地和紙を贅沢にあしらったカラフルな寝室が印象的。萩焼、萩ガラス、大内塗などの工芸品が室内を彩り、窓から見える四季折々の長門の自然の風景をプラスして、五彩を表現しています。
温泉はアルカリ性単純温泉で、pH9.9とアルカリ成分が強いため、肌の汚れを落とす効果があり、化粧水のようなとろりとした泉質が特徴的です。
内湯は源泉掛け流しの「ぬる湯」と、温度を高めた「あつ湯」の2槽があり、さらに露天風呂を備えています。
湯上り処には水分とビタミンCを補給できる山口名産の夏みかんジュースと小野茶、そして地元の日本酒も用意されていました。
長門湯本温泉は、そぞろ歩きが楽しいので、2020年にリニューアルオープンした外湯の「恩湯」へも行ってみましょう。
木材をふんだんに使い、シンプルで気持ちのいい建物のデザインは、香川の仏生山温泉などを手がけた建築家の岡昇平氏によるものです。
ここのすごいところは、温泉の湧き出るさまを目の前で感じられる本物の源泉掛け流し。浴槽の奥に自然のままの岩盤があり、こんこんと湯が湧き出る様子を実際に見ることができます。
浴槽の底にも源泉があり、足元から噴出する湧きたての新鮮な湯にそのまま浸れる、他ではなかなか体験できない大変珍しい温泉です。
長門湯本温泉は、約600年前に大寧寺の定庵禅師が住吉大明神からのお告げによって発見した、“神授の湯”と伝えられています。
岩盤の上に大切に祀られている温泉神像は、歴代の恩湯建築の時を超えた、住民の方々の信仰対象だったそう。
この街に住む人々は昔から日常的に「恩湯」を使っており、街にとても愛されている温泉であることを感じます。
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山口を代表する味覚、ふぐを存分に堪能するディナー
お楽しみの夕食時間。最初に出てきたのは「先八寸」とされるさまざまな前菜の盛り合わせ。左の囲いは、神社の茅の輪をイメージしているそうです。器は萩焼。
イカスミで和えたイカと、大葉で和えたイカの二色和えに生ウニをのせて。イカスミにはナッツを混ぜてあり、まろやかなコクのある味わい。大葉の方はさっぱりとしていて、二つのコントラストが味覚を楽しませてくれます。
イカやウニは山口県の名産。夏から秋にかけてケンサキイカが回遊してきます。萩、長門など山口北部の北浦エリアはウニの餌である海藻が豊富で良質なウニがとれるそうです。
山口はお酒がおいしいことでも知られています。冬は「ふくのひれ酒」などもあり!せっかくなので、おすすめご当地酒の飲み比べを頼んでみました。
「Ohmine 3粒 火入れ山田錦」、「原田 西都の雫」、「貴 濃醇辛口純米80」の3種セットです。
フルーティーで爽やかなOhmineと、しっかりお米の風味を感じる貴、山口産のオリジナル酒米「西都の雫」を使用した原田がちょうど中間くらいのバランスで、それぞれタイプの違うお酒を楽しめました。
そして外せないのは山口県を代表するグルメ、ふぐ料理。この地域ではふぐのことを「ふく」と呼び、「福」ともかけた縁起物として昔から親しまれてきました。
下関には、日本で唯一のふぐ専門卸売市場があります。ふぐ取扱量全国1位であり、日本各地で水揚げされたふぐはみんなこの市場へ集まるそうです。
「ふく薄造り」はトラフグを3種の味で楽しみます。こだわりの製法でつくられた「釜炊き塩」、定番の「ちり酢」、そして変わりだねの「つぶ雲丹たれ」。
まずは釜炊き塩でシンプルにふぐそのものの風味を味わい、次はちり酢でさっぱりと。最後の「つぶ雲丹たれ」は、オリーブオイルとつぶ雲丹、ふぐの魚醤を合わせたもので、やや濃厚なコクのあるカルパッチョ風の味わいで新しいおいしさでした。
メインはてっちりを界 長門風にアレンジした「ふくと牛の源平鍋」です。源平鍋とは、ふぐで有名な下関が源平合戦の舞台、壇ノ浦であることから、ふぐと牛肉を源氏と平家に見立てて名付けたそうです。
山口県では特産のみかんを鍋に入れる風習があり、その要素も盛り込まれています。
柑橘の爽やかな甘酸っぱさがふぐと合い、さっぱりといただけます。火鍋風に鍋を仕切り、反対側で牛肉をしゃぶしゃぶしていただきます。最後は雑炊で、ふぐでとった出汁スープが滋味にあふれ絶品です。
写真には出ていないですが、ここでちょっと珍しいお酒「シセラ」を合わせました。
周防大島のワイン農家「ドメーヌ・ピノ・リーブル」が昔からこの地で栽培されている温州みかんを使い、ワインと同じ醸造法でつくった果実酒です。柑橘のフレッシュで優しく繊細な酸味が心地よく、食事にも合わせやすいお酒でした。