女性は50代から骨盤底筋が衰えて尿トラブル&ぽっこりお腹に…
「女性は閉経後、骨盤底筋が衰えがちになり、尿もれや頻尿などの症状が出やすくなります。出産時に受けたダメージが加齢によって表面化してくることもありますし、毎日の生活における悪い姿勢も、骨盤底筋に負担をかけ、衰えさせる原因になります」
そう解説するのは女性医療クリニックLUNAネクストステージ院長で日本泌尿器科学会専門医の中村綾子(なかむら・りょうこ)さん。
50代以降になると、尿漏れや頻尿に悩まされる女性は3人に1人と、珍しいことではありません。また加齢による骨盤底筋の衰えは、骨盤の痛みや下腹のぽっこりなどを招く原因にもなるといいます。
女性は50代から尿もれに悩む人が急増! 出典:schulman.c.,et al.:Eur.Urol.32:315.1997
そもそも私たちの筋力は、何もしないでいると20歳前後をピークに徐々に衰えていきます。しかし、正しく使い、トレーニングすれば、筋肉はいつからでも鍛えることができます。それは骨盤底筋にも当然、当てはまることです。
「70代、80代になっても、骨盤底筋はトレーニングすることで強くできます。私のクリニックでは、骨盤底筋トレーニングを2〜3か月続けるうちに、腹圧性尿失禁や過活動膀胱などの尿トラブルに悩まされている患者さんの約7割に改善が見られています」と中村さん。
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あなたはどう?3つの尿トラブルの症状
骨盤底筋がゆるむと、重い内臓を支えきれず、下腹がぽっこりに。さらに排泄のコントロールができなくなり、頻繁に尿意をもよおしたり、ちょっとしたことで尿がもれたりすることもあります。
次のような尿トラブルは、骨盤底筋をトレーニングして強くすることで、改善することができるといいます。当てはまる症状があるか、確認してみましょう。
症状1:ふとしたときに尿がもれる……
→「腹圧性尿失禁(ふくあつせいにょうしっきん)」
せきやくしゃみをしたとき、重い荷物を持ちあげたときなど、お腹に力(腹圧)がかかることで尿が漏れてしまう症状。40代以上の女性に起こりやすく、最大の要因は骨盤底筋の衰えです。骨盤底筋が衰えると、尿道をうまく締めることができなくなり、尿がもれてしまいます。
症状2:トイレに間に合わない……
→「切迫性尿失禁(せっぱくせいにょうしっきん)」
トイレに行く途中や、下着をおろす前にもれてしまうなど、強い尿意が起こり、間に合わずにもれてしまう症状が切迫性尿失禁です。背景にあるのが、膀胱にある神経が過敏に反応する「過活動膀胱」です。原因は神経のトラブルや加齢、動脈硬化なども考えられますが、特に女性の場合、骨盤底筋のゆるみが原因とされることが多いです。
症状3:1日に何度もトイレに行く……
→「頻尿(ひんにょう)」
頻尿の定義は、トイレに行く回数が昼間に8回以上、夜間に1回以上とされています。ただし回数は目安で、本人が困っていなければ頻尿とは言いません。原因は、水分のとり過ぎや、心因性頻尿、糖尿病や膀胱炎などの病気が要因でなければ、過活動膀胱によって起こるケースが多いです。またトイレのことが気になって何回も行ってしまう心因性の頻尿もあります。
思い当たる症状はありましたか?次回は、「立つ」「座る」でできる、骨盤底筋のトレーニング方法を教えてもらいます。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部) イラスト=今井夏子
※この記事は雑誌「ハルメク」2020年11月号を再編集し、掲載しています。