アメリカのIT企業による離職防止がきっかけとなって発祥した1on1。いまでは上司と部下の日常的なコミュニケーションの機会として、数多くの企業に導入されましたが、その定着度は、業種によってばらつきがみられるようです。本記事では、小川隆弘、氏による著書『成果が出る1on1 部下が自律する5つのルール』(ごきげんビジネス出版 ブランディング)から一部を抜粋・再編集して、1on1が定着しやすい企業風土について解説します。
1on1を粛々と継続している企業
1on1を粛々と継続している企業が日本にも多くあります。IT系企業や新しいサービスを展開している新興企業、経営層や社員が若い企業などに多い傾向があります。それらの企業では1on1が社内の文化として定着していて、「必要か不要か」の議論にはなっていないようです。当たり前のごとく、ふつうにコミュニケーションの手段のひとつとなっています。
このような企業では転職者が多く、社員の背景も多様です。せっかく採用したのに、すぐ辞めてしまう可能性もあります。離職を未然に防ぐ必要から、社員の状況を上司が把握しておく必要があります。1on1の発祥がアメリカのIT企業による離職防止がきっかけだったことを考えても当然のことですね。
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1on1が定着している企業・定着しにくい企業
1on1が定着している企業の傾向として、以下が挙げられます。
・社員の構成年齢が若い。
・転職者が多く、多種多様な人が集まっている。
・離職リスクを低減したい。
・コロナ禍の影響で、コミュニケーションを直接取る機会が減った。
こういった企業では、いわゆる空気を読む必要性が低く、自分の気持ちを比較的率直に表現できるのでしょう。一方、従来の日本の有力企業では、一流大学の体育会系出身者が比較的活躍されているようです。空気を読む感覚に優れた人たちや、配慮や気配りができる人たちが幹部に多い傾向があります。できないと評価され難い企業風土のようです。
世代の変遷とともに今後徐々に変わっていくと思われますが、1on1といった切り口で見ると、定着するスピードは遅い傾向があります。「1on1が定着しない」とお困りの企業も、まずは継続しましょう。すると、不満・課題がいろいろと明らかになっていきます。関係している人にはつらい話も出てきますが、それも含めて1on1と捉え、ひとつずつ改善しながら粛々と継続し、克服していきましょう。